イラスト+幸せの運び屋
イブですが…
Happy merry christmas!
ウメジソ様からイラスト頂きました! ありがとうございますっ
d(ŐдŐ๑)☆スペシャルサンクス☆(๑ŐдŐ)b
今年もこの季節がやってまいりましたよ~っ
冬です。雪です。クリスマスですよっ!
と言ってもこの世界にクリスマスはありません。あるのは降雪祭という雪の神様を祭り、雪によって多くの災害が訪れたりしないよう祈るお祭りぐらいです。
ですがっ、冬と雪と言えばクリスマスっ。それに、雪が降ったらワクワクして何かしたいと思うのが人間ではないですか!
残念ながら現在は人ではありませんが…。
ゲフンゲフンッ
とにかく、今年こそはこれをやりたいと思って用意した物があるのですっ!
「じゃじゃ~んっ!」
取り出しましたのは赤いとんがり帽に白いポンポンと白いファーの縁取りの付いた…
そう! おなじみのサンタ帽子ですよっ。
「サンタ帽子? 何か特別な防御力とかあるんですか?」
人間用のサンタ帽子を渡すと、それをしげしげと眺めるのは金髪碧眼の黒竜隊最年少副隊長の…えぇと、今は18歳になったのでしたか…ケイン君ですっ。
「サンタ帽子に特別な力はありませんが、これを被ると幸せを運ぶ運び屋さんになるのですっ」
ということで私は古竜サイズのサンタ帽子をいそいそと被ります。
「運び屋…」
その言葉にケインの脳裏に浮かぶのは、違法麻薬だったり、人身売買だったり、とにかく騎士が関わってきたありとあらゆる悪である。
幸せの運び屋と言われてもピンとこないのは職業のせいか、それとも最近心がダメージを負っているせいか…。
擦れた自分に思わず遠い目をするケインである。
なんだか遠くを見つめてぼんやりしているケイン君の顔を私が覗き込むと、ケイン君ははっとして我に返りました。
お疲れでしょうか。最近シャンデリアの上で寝てしまう事件なんかもありましたし、黒竜隊は闇で活躍する部隊ですから、とても忙しいのかもしれませんね。
「あの、お疲れなら他の方に代わっていただいても大丈夫ですよ?」
「いえっ、俺にやらせてください! こんな素敵なイベントに参加しないなんてありえませんからっ」
ぎゅっと手を握られ、やる気に燃えた瞳で見つめられて熱弁を振るわれてしまうと、これを計画した私としてはなんだか照れてしまいますね。
キュキュキュ~ッと鳴いて悶えながらも、よろしくお願いしますと頭を下げ、さっそく私達は白い袋を肩に担ぎました。
実を言うと、サンタの衣装も考えていたのですが、今回幸せという名のプレゼント配りを計画したのはほんの数日前だったので、間に合いませんでした。
ですので今年はサンタ帽子のみで頑張りますよ。
____________
プレゼントの主な配布先は子供…と言いたいところですが、子供の知り合いはほんの数人ですので、そちらはすでに家族の方に頼んでおきました。
私の知る子供と言えばギルドの受付キール君の妹メイちゃん、王女様のアマリーア、それに義弟のラス君です。
ラス君と言えば…
「…これをラスの枕元に…? 目覚まし用の魔獣か?」
そこそこ大きめの箱(中身は実物大古竜のぬいぐるみ)をクロちゃんに渡すと、そう言って首を傾げられました。
どういう意味かと尋ねれば、魔獣の中にはこういったプレゼント箱に犬の足と尻尾が付いた魔獣がいて、人間に齧りつくモノがいるのだそうです。
それこそ大きいものだと人間を丸呑みしてしまうそうですが、小さいものは目覚まし代わりに重宝されることもあるそうで…
て、そんな物騒なもの送りません!
クロちゃんは私をなんだと思っているのですかっ。そんな物騒なもの、捕獲に行った時点で私が喰われますよ!
キュッキュアッと抗議していると、クロちゃんの頭の上で昼寝からパチリと目を覚ましたピンクの古竜リーリアママが呟きました。
「子供のイベントなのねぇ~」
眠っていたのに聞いていたのですね…器用です。
一応訂正を入れて恋人達のイベントでもあると教えれば、リーリアは目をキラキラさせてクロちゃんに何か訴えておりました。
うん、ラブラブですね。きっと素敵なクリスマスを過ごすでしょう。
「お前は?」
クロちゃんが言葉少なに何か尋ねてきます。
「? なんでしょう?」
首を傾げれば、リーリアがうふふっと笑って通訳してくれました。
「私達の子供ですもの~。何か欲しければ枕元に置いてあげるって言ってるわ~」
クロちゃんがパパしております!
思わずクロちゃんを見れば、無表情に見えてちらりと視線を外すあたり照れているようですよ!
貴重ですね!
「ではぜひこの習慣を魔族にも広めてくださいっ。子供達に幸せをですよっ。メリークリスマスっ」
「あら、そういうご挨拶なの? じゃあメリークリスマスゥ」
なんてことがありました。
魔族にも広まるといいですね。クリスマス。
さてさて、思い出してぼうっとしている暇はありませんっ。
「まいりましょうケイン君っ」
夜も更けてまいりましたので私達は城の騎士宿舎を駆け巡りますっ。
この国の家々には煙突があるので、伝統にのっとって煙突からの侵入も可ですが、寒いこの時期暖炉は火が灯っているので無理でした。なので現代風にマスターキーを使い、眠る騎士を起こさないようプレゼントを枕元に配ります。
ちなみにプレゼントは手作りクッキーです。
人数多いですからね。
「これはものすごく鍛えられますね…」
よくわかりませんが、ケイン君はとても緊張しつつプレゼントを配っております。なぜでしょうかね?
2時間後
ついにほとんど配り終わり、ケイン君と私は最後の難関へ挑むことに…
ごくりと唾を飲み込み、そろそろぉ~っと部屋へ侵入します。
最後の敵はもちろん騎士団総隊長ウィルシスですっ。
ケイン君は最大限気配を消し、私はその肩に捕まって息を殺します。
ここにきて幸せの配達人が、野獣を起こさずミッションをこなす挑戦者へと変わりましたよ!
そぉぉぉっと眠るウィルシスの枕元にクッキーを置き、二人でガッツポーズをとった後、今度はそろそろと部屋からの脱出を試みます。
しかし! そううまくいかないのがこの部屋に住む野獣ですっ
がしっ
「ピギャッ」
尻尾を掴まれたかと思えば、そのまま私の体は宙に浮き、ウィルシスの胸の中にボスリと納まりました。
「今日のお仕事は終わりだよね?」
お、起きてますよ~! 野獣が起きてますよ~!
「キュアッ、キュルッ、キュピャッ」
抗議の声を上げて暴れますがその腕はほどけませんっ。
ウィルシスはにこりと微笑んで私をシーツで雁字搦めにすると、おもむろに立ち上がって戦々恐々とするケイン君の前に立ち、にこりと微笑んで告げました。
「約束は約束だよね?」
「うぅっ…」
何を約束したのでしょう!? ケイン君は項垂れ、二人はそのまま連れ立って外へ…
私がシーツと格闘する数十分後、ウィルシスが晴れ晴れとした表情で部屋に戻り、いまだシーツと格闘する私を見てにっこりとほほ笑みました。
危険です! 明らかに警報が鳴り響いておりますよ!
ケイン君はどこに!?
「クリスマスは恋人の日だってね」
いやああああっ! 誰ですか、この野獣に余計なことを教えたのはっっ
「メリークリスマス、リーシェリア」
その後私がどうなったか…それは月のみが知っているのです…。
そして、翌朝…
「昨日は雪じゃなくてケインが降ったって警備兵の話は本当だったんだなぁ」
青竜隊ゼノが見下ろすのは、ぼろ雑巾と化し、雪に埋もれるケインだ。
警備兵の話では昨夜は綺麗な三日月の夜で、雪の代わりにケインが空から降ってきたという。
幸い地面は前日までの雪でかなり積もっていたのでケインは無事のようだが、竜の血が強いせいなのか半分くらい冬眠しているようだ。
「誰か助けてやれ」
青竜隊隊長アルノルドの言葉に、半分冬眠しているケインの心にじぃんとぬくもりが広がる。
だが
「アルノルド、それは放っておいて大丈夫だ。賭けに負けた負け犬だからな」
黒竜隊隊長ヴァンの一言で、その後、ケインは自力で這い上がるまで放っておかれたらしい…。
merry christmas!
<幸せの運び屋before>
ウィルシス「リアと一晩中プレゼントを配るって?」
ケイン「は、はい…(誰だばらしたのはー!?)」
ヴァン「丁度いい。特別訓練だな」
ケイン「は!?」
ウィルシス「騎士達に気付かれずにプレゼントを配り終えられたらリアとデート。失敗したら僕とヴァンから特別稽古ね」
ケインはリーリアとのデートに目がくらんだっ!
ケイン「必ずやり遂げるとお約束しますっ」
そして本編に戻る…
<幸せの運び屋after>
ケイン「たいちょ…俺にも幸せを…」
ヴァン「自力で掴め」
ケイン「ひ…ひどい…」
自業自得で踏んだり蹴ったりなケイン君なのでした…。




