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うやむやに成立です!

「むっかつさいでちゅか?」


 短い燃えるような赤い色の髪に蒼い瞳をした美形。この国セルニアの聖竜グレンの部屋にて、私こと白いバレーボール大の竜、古竜種リーリアと、グレン、それに国王様が、ミニ会議という名のお茶会を刊行中のことでした。


 ずごごごご~っと音を立ててジュースを、ストローに良く似た中が空洞の植物の茎で飲み干したところで、国王様がうむうむと頷く。


 私が言った言葉は正確には復活祭です。ストローをかみかみしながら聞いたので赤ちゃん言葉のようになってしまいました。

 

 ちなみに復活祭とは。

 なんでも、例の滅びと再生の日を記念し、起きたことを忘れないように毎年祭を行うと共に、その時人知れず散って行った人々を弔おうという目的があるそうです。

 

「そこでだ、リーリアに親しい古竜や当時の関係者を呼んで盛大なパーティーを開こうと思っておる」


 国王様好きですね、パーティー。


「でも、どちらかといえば古竜は混乱を起こした側ですよ? よいのですか?」


 おっきな竜の元はちっさな古竜達です。滅びと再生を起こした張本人たちがパーティーに参加しても良いものでしょうかね?


 首を傾げ傾げ尋ねると、そこは「かまわん」の一言で終わりました。

 どうやら楽しければよいようです。


 そんなわけで!





「復活祭当日ですよ!」


 何の憂いもないパーティーは今回初めてですね。

 今回は自分のお披露目でもないので気楽です。

 

 城に続々と集まってくる人々を窓から見下ろし、ご機嫌に尻尾だって振っちゃいますよ。

 ふりふりふりふり…

 

 本日招待された古竜は、魔穴の中に長く閉じ込められていた者達になりました。彼等にしてみれば核を食べていただけなのですが、それでも多くの被害を止めてくれていたということで感謝の気持ちを込めてのご招待だそうですよ。

 

 古竜と言えば、ピンクの古竜リアーナママにはよく会いますが、緑のインテリ古竜アイノスには久しぶりに会うような気がしますね。あと、古竜改の皆さんにも。


「リーリア、そろそろ会場に行くか?」


 振り返れば、グレンが手を伸ばし、私を抱き上げてくれました。


「楽しみですね!」


 キュッキュッと喉を鳴らしてグレンにしがみ付き甘えると、そのまま撫でられつつ会場へと向かいました。



_____________


パーティー会場は一言でいうと…


 (まぶし)すぎます!

 なんですかこの美形集団の集まりは! 


 はっ…二言だった。


 会場内で談笑する人々、その中には、赤、青、黄色、ピンクに紫、黒に白黒と言った髪色の美形軍団がおります。

 その中にはどうやらメガネ美形、緑髪のアイノスがいますので、良く言えば目にも鮮やか、悪く言えば無節操な髪色の人々は古竜ということになるのでしょう。


 美形だらけだったのですね…古竜軍団。

 そして、美形って集まりすぎると目が麻痺するのですね。皆土偶に見えてまいりました。

 美形土偶集団です。


「アイノスさーん」


 手をふりふり、グレンと共に近づいていくと、アイノスとその周りにいる美女軍団が綺麗なお辞儀をします。まるで貴族の紳士淑女みたいじゃありませんか。どこで習ったのですか?


「お招きありがとうございます。それから、リーリアおめでとう」


 突然アイノスはじめ、皆様方に祝われました。

 私、なにか祝われるようなことありましたかね? 誕生日…は正確な日を知っているのはクロちゃんだけですが、季節的にはまだ先のはずですし、出世には無縁ですよね? 身分は居候ですし。

 

 はて?


 腕を組み、首を傾げて考え、「あぁ!」と閃きましたよ!


 外国と同じでイースターおめでとうっみたいな感じですね。

 きっと今日は何かおめでとうの日なのです。

 そうとわかればお返ししないとですね。


「アイノスさん、皆さん、おめでとうです」


 うんうん、これでいいはずです。いいはず?

 なぜか首を傾げられました。


 ナゼ?





 その後もたくさんの人におめでとうを言われ続け、首を傾げ続けるをエンドレスで繰り返しながら、私はシャンパンを飲み干します。

 これは先ほど目線の高さを歩いていたボーイさんのトレーからいただきました。これがまた高級品のようでとってもおいちーのです。


 お酒は駄目だと言われておりますからね、ジュースを選んでおりますよ。

 これはシュワシュワジュースです。


「リーリア」


 シャンパン片手にむふむふ笑っておりましたら、なんとっ! こんな席には表れることのないクロちゃんがおりましたっ。


 …なぜか二人。


「クロちゃん、いつの間に双子になったのですか?」


 おんやぁ?と目をごしごししても二人に見えます。分身の術ですかね。


「何を言っている。それよりお前の婚約だが、私は反対…待て、何を飲んでるバカ娘?」


「バカ娘とはなんですかーっ ちゃんと、皆さんの、忠告通りに、ジュースですっ!」


 シャンパングラスをずずいっと前に出してグレンの腕の中で胸を張れば、グレンにそのグラスをかっさらわれました。

 あっ! まだ飲み終わってませんよっ もったいないですよっ。


「返して~」


 グラスの臭いを嗅いだグレンが大きくため息を吐きます。


「シャンパンだ」


 もちろんですボーイさんもシャンパンジュースと言っておりましたからね。

 私はうんうんと頷きます。


 日本にはシャンメリーというお子ちゃま向けシャンパンがありましてね、シュワシュワのジュースで、なんだか微妙な味がするんですが、こちらは高級っぽいです。アルコールを感じますよ。シャンパンフリーってやつですかねぇ?


「もちょっと飲みますっ」


 とりゃっと手を伸ばしますが、グラスはひょいひょい目の前から逃げます。

 グラスのくせに猪口才(ちょこざい)なっ!


「キュアッ(ふぬっ)、キュルアッ(とりゃあっ)」


 飲もうとする私と、飲ませまいとするグレンの攻防が始まりましたっ。

 …が、それはすぐに終わりました。ちょっと物足りないですが。


 目の前にスッと差し出されたのはシャンパンのたくさん入ったグラスです。

 

「リーリアちゃん婚約おめでとう~っ」


 すちゃっと素早くグラスをとって後頭部辺りからの「うわっ」というグレンの声を無視し、ごっきゅごっきゅと飲み干します。


「キュルルルッルル~」


 ご機嫌に喉を鳴らせば、グラスをくれたピンクの髪の美…少女かな? リアーナママがにっこにっこ微笑んでおります。

 そんな彼女の手にもシャンパンジュース。


「! 誰だっ、古竜に酒を配ったのは!」


 クロちゃんがリアーナママの手からグラスを奪うと、目が座ったリアーナが古竜化し、クロちゃんの鳩尾にタックルしました!


 どすぅっっ


 なんだかすごい音しましたね。

 そしてシャンパンジュースのグラスはリアーナの手に戻り、一気に飲み干されます。


「げほっごほっ…お前達…」


「いやんっ、二人の愛を邪魔するものはこのリアーナさんが許さなくてよ」


 なんの話かは分かりませんが、リアーナも絶好調です。

 しゃきーんっとリアーナがポーズをとり、ポーズをとるというそれに反応したのか、そこへどどどどどっと音を立てて集まる黒い古竜4匹。


「我等はっ」


「騎士団! 古竜に酒を飲ますな!」


 古竜改の皆さんの名乗りを断ち切るようにグレンが叫ぶと、ざわりと会場内がざわめき、騎士達が動き出します。

 名乗りを邪魔されたヒーロー古竜改達はがっくりと床に項垂れましたよ。

 パーティーなのに無粋ですねぇ。


「改ちゃん達、来たわっ、あれは悪の組織よ!」


 リアーナが駆け寄る騎士を目にして指を指せば、古竜改達が素早く起き上がって構えます。


「「「「任せとけっ」」」」


 おぉ! にじにじとにじり寄る騎士対古竜改の皆さんの戦いですっ。

 

 周りを見れば、周りでも騎士対酔拳発動の古竜達の戦いが起きておりますっ。

 壮観壮観。B級映画のようです。


「スペキュタキュラスッ。スペクタキュラスらったっけ? まぁいいや、スペスペッ」

 

 私も拍手した後、参戦するためにひょ~いっと飛び降り…降り?


 足がひらひらします。これは床に足がついておりませんね。

 飛んで…るわけでもないようです。翼は動いておりません。


「なんら?」


 チラリと体を締め付ける者を見上げると、そこには銀の髪に真紅の瞳をした美形、ウィルシスがにっこりとほほ笑みを浮かべて私をキャッチしておりました。


「離せ~っ、参戦するのら~っ。悪と戦いましゅ~」


「ここからが本番」


 なんのことやら、ちうっとほっぺにキスされました。

 キス勝負ですねっ。負けませんよ~っ

 

 がぶちゅっ


 おっきなお口でウィルシスの顔に噛みつきキスを食らわせます。

 

「ふははははははっ。参ったか~っ」


 ウィルシスはなぜか背筋が冷たくなるような笑みを浮かべると、いつの間にか現れていた国王に向けて頷き、国王がにやりと微笑むと、混乱に乗じて宣言します。


「本日、ここに、騎士団総隊長ウィルシス・スタンフォードと、古竜リーリアの婚約を宣言する!意義のある者は名乗り出よ!」


「意義あっ」


「それは駄目だって言ったじゃない~っ」


 どすぅっ


 再び視界の端で攻撃を受けたクロちゃんが蹲り、何か知りませんが成立したようです。


 あちこちでおめでたいと声が上がりますが、何のことでしょうかね?

 私はウィルシスを見上げると、首を傾げ、そのまま傾げ続けてコテリと眠りの闇に吸い込まれたのだった。




 翌日――詳細を聞いた私の悲鳴が城に響いたのは言うまでもない。

パーティー数日前―――


リアーナ「なるほどぉ~。そういうことなら協力しちゃうわ。可愛い私のリーリアちゃんの愛の生活の為ですもの」


にっこりほほ笑むリアーナににこりと黒い笑みを浮かべるウィルシス。


これで義母の協力は得られた。魔王の反対は抑えてもらえるとして、あとは、騎士団内にいるリーリア派(リーリアの隠れファン)を黙らせる方法…


パーティー当日


ウィルシス「今日は特別な日だから、これを皆に配るように。特に古竜の皆にはたしなんでもらいたい『ジュース』だからね」


ボーイに渡したのは度数が強いがそうとはあまりわからないようなシャンパン。

これで古竜が騒げば騎士団は反対意見など出す暇はなくなる。


ウィルシス「準備万端。さぁ、覚悟はいいかなお姫様」


腹黒ウィルシス発動!

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