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運動の秋 3

 さぁ、いよいよ私も参戦の玉転がしです。


 玉は赤と白。人間の子供が転がせるサイズで、二人一組で転がし、ポールを一周回って戻ったら次の組と交代という簡単なルール。

 私のペアはリアーナですっ。

 こう見えてピンクの古竜リアーナママの得意技は弾丸タックルですからね。今日は玉にタックルしていただき、距離を稼ごうと思います。


「位置について、用意…」


 玉は少し前方に置き、私とリアーナはそれよりも後方に立って開始の合図を待ちます。


「始め!」


 どんっと地面を蹴ったリアーナのタックルは見事玉に命中。転がる球を追いかけ、追いついたら軌道修正しつつ再びタックルしてもらう仕組みです。これなら簡単でしょう。


・・・・・


 誰ですか、簡単だなんていったの。


「急いで急いでっ」


「急いでます~っ」


 すでに玉に追いついたリアーナの元へ全力疾走ですっ。

 

 ぽてっぽてっぽてっ


 ふ…自分の足が並み以下というのを忘れてましたよ。

 

 玉に追いつけません! 軌道修正したくとも…玉っ、転がりすぎですよ!


「ムッキュウウウウウウウウウ~!」


 気合を入れて翼を動かし、パタパタと飛んで何とか玉に取りつきました。これでようやく軌道修正できますね。


「いくわよぉ~!」


「うえ?」


 玉にへばりついたところだった私は、リアーナの声に驚いて振り返ったところで目を見開きました。

 玉に向かってリアーナの弾丸タックルがまっすぐ飛んでくるではないですか!

 

 玉にへばりついたままの私、そして弾丸アタック、結果、玉は転がり…


 いつかの高速回転再び!


「キュワワワワワワワワワワァァァァァァァァ!」


 玉と共に私も回り、世界が回転します! ついでに時折目の前に迫ってくる地面にぎゃああ~っと悲鳴を心の中であげ続け…


「圧倒的! リーリア、リアーナ組一位で帰還だ!」


 次の人が待つゴールに着いた時、受け止められた玉から吹っ飛んで帰還した私の白い体は砂埃で茶色く濁り、誰にもキャッチされることなく地面にべちゃりと落ちた。

 

「ひどい…」


 ぽつりと呟いた私は、必死にリバースと戦い、勝利しました…。



 その後も竜族チームには同じように玉転がしならぬ玉転がされが続出し、ゴール地点は茶色く染まった古竜達でいっぱいになったものの、なんと竜族組が首位をとり、竜族4点、騎士団3点、王族2点、ギルドが意外なことにあっちこっちへ玉を脱線させてしまいビリで1点となりました。


 ここまでで総合なんと竜族が他チームより1点リードの8点。残りの全チーム7点と接戦です!



 ここで英気を養うためお昼ごはんタイムですよ。


『ご要望のピクニックランチお持ちいたしました~』


 草原地帯に思い思いの場所をとって座ったところで、本日のランチが配られます。

 ランチを作ってくれたのは魔族界の料理人です! それも皆精神体。半ゴーストと呼ばれる彼等は土の中からにょきっと頭だけ飛び出し、どこからか取り出したランチを配っていきます。

 

「ひゃああああああ~!」


「でたぁぁぁぁ!」


 …さわやかな 風の通りし 昼日中 響く叫びは お化け見たから~


 適当な短歌を詠みつつ用意されたお茶をずびっ飲みます。

 

 皆、魔王城の恐怖の末端を味わうがいいですよ。


「リーリア、これはどういうことだ?」


 魔族がランチを支給したことでクロちゃんが驚いています。それもそうでしょう、私はずっとセルニア王国にいましたし、運動会はつい最近王様と計画した秘密の計画でしたからね、本来なら降ってわいたこの話に魔族が参加できるはずがないんですよ。本来なら。

 ですが、私はこう思ったのです。どうせなら魔族を知ってもらおうではないですか! 

 

 私だけが怖い思いをするのは理不尽です! カム・オン仲間!


「…ということです」


「何も説明してないな」


「クロちゃん鈍いですよっ。そこは察してくださいというやつですよっ」


「ニブ…鈍い奴に鈍いとは…」


 はいはい、クロちゃんが横で落ち込んでいる間にご飯をお腹に詰め込みます。

 午後は団体戦ですからね。気合が入ります。

 

「ひぃぃぃっぃぃっぃぃ」


 変な悲鳴を上げながら茶色の髪に茶色い瞳の赤竜隊の副隊長ルノさん20歳(はたち)、お嫁募集中が透き通る幽霊に追いかけられながら目の前を通り過ぎていきました。

 ほとんどあったことのない存在感の薄い方ですが、お化け嫌いだったのですね。ちょっと親近感湧きました。

 

 まぁ、お化けが調子に乗ってからかっているのは彼ぐらいなので助けは不要ですかね。

 ウィルシスいわく、騎士団はたたき上げてこそ強くなる、ということですし。



___________________________



 さぁ、午後は団体戦も団体戦。全員参加の玉入れです!


 玉入れの籠を持ってくださるのは文官のボランティアです。


 一人二つずつ手に玉を持ち、身構えます。


「よい…はじめー!」 


 ラス君の舌足らずな声で始まりました。

 その瞬間、空へ舞いあがる玉、玉、玉。

 4つのチームの玉は色分けされ、赤・騎士団、青・竜族、黄色・王族、緑・ギルドで他のチームの方へ飛んでもわかるようにしています。


「余裕~!」


 始まって数秒後。古竜軍団が蠱竜となって玉を籠へと運びます。

 こ、これはありでしょうか?

 

「卑怯だぞ竜共~!」


 あぁっ、やはりこれは反則ですね。ギルドから緑の玉が飛んできて蠱竜が落下しました。


「何すんじゃいギルドの小僧共~!」


 蠱竜が古竜姿に戻って反撃。意外と喧嘩っ早い古竜だったようです。しかし、その玉はスッと避けられ、なんとっ、アマリーアに当たってしまいましたっ。


「誰ですのっ、私に球を当てたのはっ!」


 アマリーアがぶんっと手元に飛んできた球を投げとばした先には騎士団…。

 なんて王道パターン!


 全員参加の玉入れならぬ玉当て合戦が始まってしまいました!

 しかもいまだかつてない白熱ぶり。


 うおぉぉ~っと野太い声が空に響き…


「しゅ~りょ~!」


 ラス君が言われた通りの時間で終わった時、籠の周りには燃え尽きた男達が倒れ、審判はそれを数えておりました。

 …あれ? そんな競技でしたかコレ?


 結果は私の訂正が入ってきちんと籠の中の玉が数えられましたよ。

 オールゼロで同点です。


 ありですか!? ありなのですか!?





 そして迎える最終戦


 最終戦は障害物リレー!


 ついに迎えたこれは、身長を超す5枚の壁を乗り越え、ぶら下がったパンを手を使わずに口で外し、難問を解いた後…なぜか針に糸を通し、最終はリーダーによる借り物競争となります!

 

 チームのリレー戦ですので、竜族からは古竜改のお一人マンダリンさん、私、竜族の長老イルさん、竜王セルヴァレート、そしてリーダーはクロちゃんです!

 王族からはセルニアの守護竜グレン、アマーリア、なぜか王太子様、王様、リーダーはウィルシスです。

 騎士団からは黒竜隊隊長ヴァン、黒竜隊副隊長ケイン、緑竜隊隊長マリア、青竜隊隊長アルノルド、リーダーが赤竜隊隊長レイファスです。

 ギルドは見知らぬお方が3人続き、受付アルバイトキール、リーダーレイナです。


「はじめ!」 


 開始の合図と共に白熱する応援。さすがは最終戦。

 ここで決まると言っても過言ではない接戦ですから気が抜けません!

 

「うおぉぉぉぉ~、おりゃああああ!」


 ずが~ん どか~ん


 古竜改のマンダリンさん…名前を初めて知りましたが、スタートと同時に雄叫びを上げ、乗り越えるべき壁を破壊して進んでおります。

 

 …破壊!?  


 思わず二度見してしまいましたが、文字通り破壊です。乗り越えてません。ですがこれは問題大ありのようで、問題ないようです。

 誰も止めません。というか怖くて止めに行く勇気はないようですね。よって続行。

 ルールという名の秩序はどこへ行ったのでしょう…?


 続いては私のパン食い競争です。


「キュキュキュキュキュ~!」


 ふっ、そこは考えてましたよ。飛べない、走れない最弱竜でも、できることがあるのです! 

 きらーんと目を輝かせ、ケインの背中向けて猛ダッシュ。その背中に取りつき、驚く彼の背中をシャカシャカ肩まで登り切ると、そのまま横のパンに向けてダイブしました。


「あ~んっ」


 もふっと口いっぱいに広がるパンがおいし~い。と、のんびりしてられません。次にバトンです。


 次はイルさん。お爺ちゃんですがさすが竜族です。足は速かった。


「問題です。フェネドラの悲劇、これは一体何年でしょう」


 長生きイルさんなら余裕な問題です!


「ふむふむ。そうじゃなぁ、かれこれざっと…154年前かの?」


 何年て…ナゼ何年前かを答えるのですか、イルさん…

 

 驚きの竜族タイムロスです。ですが、身振り手振りで皆が何年かを伝え、イルさんが答えたリレーの次は…


「おぉ~っと、ついに全チームが揃った!」


 お祭り好きな方の実況が響きます。

 

 そこは王妃様提案の糸通し!…やはり地味です。何やってるのか見えません。この世界にテレビはありませんので、手元で何が起きてるかズームにはならないのですよ。

 じっと待つこと数分、ようやくギルド、騎士団と続き、王族と竜族が同時に終えて走り出しました。


 ついに来た…


 リーダー対決です!


 

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