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番外編 ジーナの王都観光1 ~学園のオープンキャンパスに参加するついでに王都観光にきたジーナさん~

ご無沙汰しています。久しぶりに1話分書いたので追加します。

番外編 ジーナの王都観光1

~学園のオープンキャンパスに参加するついでに王都観光にきたジーナさん~


 そうこうしているうちに私は14才となり、後1年で王立の学園へと入学する年齢となる。王立学園は貴族の義務だそうだ。

 二人の兄も通っており、三つ年上の長兄アルノは私と入れ替わりで領地に帰ってくるので、魔物討伐の戦力として私が抜けてもそれほど影響はないらしい。ちなみに次兄のボルスは私の二つ上なので私が入学したときには最高学年になる予定だ。

 二人とも学業は中の下、武術は上の上、魔法は中の中らしい。お父様の血をより濃くひきついだ兄たちだが、アルティメットミラーゴーレムの件以来、そこそこ魔法も練習しているらしく、苦手というわけではないらしい。


 一方私は、相も変わらず貴族の令嬢教育そっちのけで楽しく野山を駆けずり回っては魔物を間引いていた。そんな私だったが、物心ついてから一度も、この国の王都に行ったことがないのはどうなのだという話が家族から持ち上がった。

 長兄アルノと次兄ボルスが現在学園の2・3年生であり、次年度入学者のためのオープンスクールが三週間後に開かれるという内容が定期連絡の手紙に添えられていたこともあり、お父様の王城訪問に合わせて私も王都に行くことになった。


 我が魔獣辺境伯家はほとんど王都にいないため、王都の屋敷はお父様が王城で仕事をしなければならない年に2回だけ開かれる。

 そのため、屋敷の使用人もその都度王都から募集するだけでは十分に集まらず、領地から半数以上の使用人を連れて行くのが常である。

 最も、普通の貴族と違い、王都と領地との移動に護衛をわんさか連れて行くことはないため、移動人数自体は他の伯爵家より少ないくらいだそうだ。

 なんと言っても父様はもちろん、屋敷の使用人もメイドや庭師に至るまで、戦闘能力が非常に高いので、護衛を大量に連れて行く必要が無いのである。


 事情を知らない盗賊は、護衛兵が少ない我が家の移動集団を見てチャンスとばかりに襲いかかってくるそうなのだが、手練れの盗賊は我が家のことを知っているため、逆に手薄な移動集団を見ると警戒を強めるという。

 残念だ。手練れの盗賊というものの戦闘力を知っておきたかった……


 お父様の半年に一度の王城勤務(主に魔物の討伐報告)が一週間後に始まると言うことで、学園の体験入学オープンスクールの二週間も前に王都へ着くような日程で領地を出発した。


 移動の途中では、私たちをカモと勘違いした盗賊に五回ほど襲撃されたが、誰が討伐するかでくじ引きになり、私は五回とも見学だった。くじ運が悪すぎる……


 運動不足で王都に到着し、欲求不満を解消するべく積極的に観光や買い物にいそしんだ。

 さすが王都。でかい。


 ドレスデン領の領都ドレスドバーグと比較しても4倍はでかいのではなかろうか。ドレスデン領の領都が小さいわけではない。ドレスドバーグの人口はおよそ30万人。王国の中でも5番目の大きさだと言われている。それに対して王都は100万人を超える国内最大の都市だ。

 観光名所もお買い物スポットも多いのだが、毎日回っていると五日で飽きた。だって、王都の武器屋には装飾に重点を置いたものが多く、性能ではドレスデン領の武器屋が勝るのだ。

 見た目だけよくてもロックアルマジロンすら両断できないような剣に用はない。


 物珍しさも落ち着いてくると運動不足が気になり始める。勇者や英雄を目指す私にとって、王都は平和すぎる。ドラゴンとはいわないが討伐しても問題ない盗賊の一組や二組は出てきて欲しいところだ。残念ながら警備の厳しい王都に盗賊団は早々出てくるものではない。

 私は暇を持て余し、王都の外を散歩することにした。令嬢が一人で王都の外に行くことは問題ないか家族に相談したが、両親も兄もやり過ぎなければ問題ないというよく分からないことを言っていた。いったい何をやり過ぎるというのだろう。

 郊外散策一日目、王都に来てからは六日目に当たるが、王都の貴族地区の城壁を出て、商業地区、一般住宅地区を抜け、家屋もまばらになり、畑が多い地区を抜けると、久しぶりに広々とした平原に出会うことが出来た。軽くジョギングしたのでここまで一時間もかかっていない。

 軽く狩りでもしようかと、亜空間収納から愛用の剣を取り出し、街道をそれて草原へ踏み入る。見た範囲に獲物はいないので、探知魔法を発動し魔力の塊を探すが、さすがに王都近郊、めぼしい魔力は見つからない。仕方が無いので適当に走り回っては探知魔法を使う。

 そうこうしていると、行く手を大きな川が遮った。しかも水中から魔力を感じる。何かいる。たいした魔力ではないが確実に人ならざるものが潜んでいる。

 とりあえず討伐しても問題ない魔物かどうか確認しなければと思うが、川の水が邪魔だ。水を干上がらせて目標の魔力反応を確認したいが、灼熱魔法で水を全て蒸発させるなどの派手な方法を取ると、後で大雨が降ったりして被害が出かねない。前世の知識で何か使えそうなものはないか考えるが、ダムを造ってせき止めるには、あまりにも地形が平坦だ。 何とかならないかをうんうん唸りながら考え、思いついた。目標の上流と下流にため池を作り、一時的に川の水を干上がらせれば問題ないだろう。なのでこれを実践する。

 この辺りに人の気配はないので思いっきりやっても人的被害はない。直径1キロほどのため池を上流と下流に一つずつ、爆裂魔法で製作する。下流のため池は水の逆流を防ぐ目的なのでそれほど大きくなくてもいいのだが、とりあえず上流と同じサイズのクレーターを作成した。

 水がため池に落ち、目標の魔力付近の川底があらわになる。私は慎重に近づく。すると川底の大岩に空いた穴の中にそれを発見した。水色の楕円形をしたきれいな石である。わずかに発光しているその石はよく見ると胎動しているように見える。

 これは、もしかして何かの卵ではと思っていると、石にひびが入り、中から水色のトカゲが現れた。

 魔物の発生には大きく分けて二種類の方法がある。一つは魔力だまりから発生する自然発生的な魔物で、こちらは人の悪意などをその発生源とすることから攻撃的で見つけたら即討伐あるのみだ。もう一つは普通の動物のように親から生まれてくるパターンだ。魔獣の類いや妖精などはこちらの発生方法で繁殖するものがかなりいる。そして、後者の発生方法の場合、攻撃性がなく、現在家畜として育てられている魔獣の元はこの発生法で顕現した魔獣を飼い慣らしたものだと言われている。つまり、飼えるのだ。

 今、目の前にいるトカゲは淡く水色に発光し、とてもきれいで愛らしい。目玉がクリンとしていて庇護欲をそそる。私と目が合うと「ピュィ」と鳴いた。

 「一緒に来る?」

 声を掛けて手のひらを向けると、おそるおそる私の手に這い上ってきた。どうやら私を庇護者と認めたようだ。私はトカゲを胸ポケットに入れると、今日の冒険に満足して帰路についた。

 

 帰宅して家族にトカゲを見せると、誰も見たことがない魔物だと言うことだったが、私になついているようなのでピーちゃんと名づけて飼うことにした。餌は私たちと同じ食料と魔力でよいということなので、寝る前に私の魔力をたっぷり与えて寝ることにした。

 翌朝起きると、私のベッドに私より大きくなったピーちゃんが隣で寝ていた。驚いていると、つぶらな瞳で私の包を見たピーちゃんは首をかしげて「ピュィ」となき、全身が青く光ったかと思うと昨日と同じトカゲサイズに戻った。

 よかった。

 どうやら大きさを自由に変えることが出来るタイプの魔物だったようだ。


 朝食会場でそのことを伝えると、父が「大きさを自由に変えられるとは、もしかしたらかなり強力な魔物に育つかもしれんな」と、ぽつりと言ったが、これが現実となったのはずいぶん後のことだった。

王都観光編はあと1話ありますが、投稿日は未定です、すいません。

なお、ピーちゃんは今回の番外編ではあまり活躍しませんのでご了承ください。

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