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番外編 ジーナの勇者への遠い道2  ~アルティメットミラーゴーレム再び~

番外編 ジーナの勇者への遠い道2

 ~アルティメットミラーゴーレム再び~


 身体強化で全力移動したので、伯爵邸からはかなり離れている。

 ここなら少々大きな音が出ても気づかれないだろう。

 私はアルティメットミラーゴーレムをイメージして召喚魔法を行使する。


 結果は……

 成功だ。

 魔方陣からアルティメットミラーゴーレムが浮上してくる。


「よし!」

 私は油断なく剣を構え、空間魔法を纏わせる。

 そのとき、想定外のことが起こった。


 一体のアルティメットミラーゴーレムが完全に召喚されたにもかかわらず、魔方陣は輝きを失わない。

 そして魔方陣から更に二つのアルティメットミラーゴーレムの頭が現れる。


 しまった……

 気合いが入りすぎて魔力を込めすぎた。


 期せずして、私は三体のアルティメットミラーゴーレムを召喚してしまった。






 召喚されたアルティメットミラーゴーレムたちは、当初の予想通り私の制御下にはなかった。

 それはそうだ。ただでさえ辛勝だったアルティメットミラーゴーレムが三体だ。

 私の十分の一以下の実力と言うことはないだろう。


 アルティメットミラーゴーレムたちはゴーレムとは思えない機敏な動作で私に襲いかかる。


「ちっ!

 舐めるな!

 私だってあれから強くなっているんだ」

 私は気合いを入れて、一番近いゴーレムの殴りかかってきた右腕に、空間魔法纏の魔法剣を叩き込む。


 結果は……


 スッと何の手応えもなく剣が振り抜かれる。


 そして剣が通った軌跡に空間のゆがみが生じる。


 アルティメットミラーゴーレムの右腕がゴトリと落ちた。


 成功だ!

 空間纏の魔法剣はアルティメットミラーゴーレムに通用する。


 喜んだのもつかの間、アルティメットミラーゴーレムは残った左腕を私にたたきつけてきた。

 私は左に体を捌いてゴーレムの拳をかわし、肩から斜めに切り下ろす。


 ゴーレムは真っ二つになって沈黙する。

 まずは一体……


 振り終えた剣を次の動作に結びつけるべく、残り二体のアルティメットミラーゴーレムに意識を向ける。


 すると残った二体は、仲間が瞬殺されたことを把握したのか、高速で私の周りを旋回しながら連携を取り始めた。


 やる……

 こいつら学習の力も高い。


 私を中心にしてグルグル回りながら、私の隙を窺っているようだ。

 ここは……

 敢えて隙を見せよう……


 私は二体のゴーレムを視界に捉えるため、ゴーレムの動きに合わせて回転していたのだが、わざと足下の小枝を踏んで一瞬動きを止めてみせる。


 二体のゴーレムはこの私の動きを見て、素早く二体同時に前後から殴りかかってきた。

 つまり、一体は私の後ろを取って来たのだ。


 しかし、私は絶えず探知魔法を展開しておりこの動きを捉えている。

「ふっ、かかったな……」

 私は身体強化を足に集中し、ゴーレムより高く飛び、宙返りしながら、後ろから殴りかかってきたアルティメットミラーゴーレムの首をはねた。


 残り一体。


 私の前方から殴りかかってきた個体だけだ。


 やれる……

 と確信した私だったが、なんと残りのアルティメットミラーゴーレムは私を通り過ぎるとそのまま林の奥へと走り始めた。


 どうやらかなわないとみて逃走をはかったようだ。


 不味い……

 このまま逃げられたらアルティメットミラーゴーレムがよそで悪さをするかも知れない。いや、きっとする。


 こんな魔物の森ですらないところにアルティメットミラーゴーレムが出て暴れれば、大混乱になるのは明白だ。

 しかも、私が召喚魔法を覚えたその日に……


 これは間違いなくお母様にはバレる。

 どれだけ怒られるか分からない……


 本当に不味い!


「させるかー」

 私は気合いを込めて叫ぶと、身体強化を全力で足に回し、アルティメットミラーゴーレムを追走する。


 敵も素早いが、私の方が速い。

 彼我の距離はドンドン縮む。


「やれる。

 私なら必ずやれる」

 自分を鼓舞しながらアルティメットミラーゴーレムを追う。


 そして私は光になった。と思えるほどの速度を出して、アルティメットミラーゴーレムの後ろから全力のドロップキックを放った。

 もちろん身体強化は全て足に回している。


 ドガンとものすごい音がして、私はアルティメットミラーゴーレムを突き抜けた。

 アルティメットミラーゴーレムの背中から胸にかけて大きな穴が空いた。


 アルティメットミラーゴーレムは沈黙した。


 なんと言うことでしょう。

 私は空間纏の魔法剣がアルティメットミラーゴーレムに通用するか試そうとして、身体強化だけでもアルティメットミラーゴーレムが倒せることを証明してしまったのだ。


 しばし結果に呆然とした私だったが、とりあえずこれでアルティメットミラーゴーレムを召喚したことがお母様にバレることはないと安心した。

 それと同時に、自分が確実に勇者か救世主に近づいていることを確信したのである。




 ちなみに、三体のアルティメットミラーゴーレムの核を回収して伯爵邸に帰った私は、アルティメットミラーゴーレムの核が放つ魔力に気がついたお母様に捕まり、洗いざらい白状させられたあげく、たっぷりと説教されて、一週間屋敷から出ることを禁止されたのである。







ここまで読んで頂いてありがとうございます。

手加減できないジーナさんがどうやって育まれたのかをうかがい知れるエピソードを目指して書いてみました。

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