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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
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#056 『霧の中の結界』



 俺たち3匹の魔獣は隣国アラビカの古城を目指して進んだ――


 その途中でのこと。



「ちょっと霧が出てきたな」


「ウム。湿地もあるし、まぁこの辺では良くあることだの」


 周囲は問題ないが、遠くに見えていた城が霧で見えなくなっていた。



 さらに暫く進むと、道中で周辺と違って木々の全く生えていない、野球が出来るくらい大きな円形の広場に差し掛かった。


 生えている草も背丈が低く、例えるならしばらく放ったらかした芝生のような感じである。


 どれも自分の視線より低く同程度くらいの高さまでしか育っていない。



(なんだこれ? ミステリーサークル?)


 不自然で奇妙な場所であることは明白なためバウムに何か知らないか聞いてみる。



「バウム、ここ何だと思う?」


「ウム。たぶん何かの魔法の痕跡だろうな」


「痕跡?」


「先の戦争の時か――草の高さからみて、比較的最近ここで誰かが広範囲に及ぶ魔法を使ったのだろう。ウム」


「……なるほど、わからん」


 どうやらUFOの発着跡では無いようだが、気味が悪い。



「ウム。まぁ今は体に何の影響もない。危険はないだろう」


「ピエ!」


 とりあえず、危なくはないという事で安心した。


 それに、エクレアにとっては丁度口元に食べごろの草が生えている格好の餌場スポットのようだ。


 よろこんで例のごとく、もしゃりだした。



「もぐもぐ……もぐもぐ……」


 泣いて暴れているより、この状態のほうが幾分見ていて癒やされる。



(本来は危ない魔獣兵器だという事をさっきの洪水で思い知らされたからな……)


「少しだけ休憩するか。バウム」


 結構歩いたし、外敵の気配や匂いもない。俺はは少しここで休む事を提案した。



「ウム。少しだぞ」


「ところでエクレア。このまま進むとお前の故郷からは随分と離れてしまうが構わないんだな?」


 今更ながら、一応確認しておく。



「ピエ! ピエピエ」


「うん。わからん」


 エクレアは言葉も理解しており、何かリアクションはあるが、話している内容は全然分からない。


 だいたいの感じだが、拒否しているわけではないようなので、多分承諾しているのだと思う。



「ウム。わん公、わかったぞ」


「なにが!?」


「ウム、ここは結界だ。結界があった――が正しいか。多分効果が弱まっている」


 結界っていうと、どういうやつだ? 俺の知っている結界はバリア的な何かを防ぐやつを想像するが……



「結界だと、何かまずいのか」


「ウム。どうやら強力な結界ではないが、この場所の外の情報が見えない」


「なんだって!?」


「ウム。結界で外界の情報がシャットアウトされておる。早くここを出ねば」


「まじかよ。ちくしょう」


 そういえば、遠くの匂いを感じない。


 元々嗅覚は空気を漂う微粒子の匂いを嗅ぎ取るので、無風だとその範囲はせまい。


 強くは意識していなかったが、風のせいだと思っていた。


 城の件もてっきり霧のせいで遠くが見えなくなったのだと思っていたが、どうやら違う。


 この広場の外は急にもやがかかっており見えないのだ。



 動揺しつつも行動に移そうとしたが、目印にしていた城が見えない。


 進むのをやめて暫く休憩したせいで、俺たちは向かうべき方角を見失っていた。


 そうこうしている内に、その「もや」の中から大量に飛散した石灰のように淀んだ空気を身にまとって、ゆっくりと歩いてくる人影が見えた。


「おいおいおい。やっと追いついたぞ」

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