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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
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#052 『精神力』



 こうして一時的とはいえ俺たちの危機は去った。


 精神的にもかなりきつかった。


 たった今、死闘の末に人ひとりを土中に埋めてきたのだから。


 これで追われる理由が『国家反逆罪』だけじゃなくて『殺人未遂』まで追加されてしまった。



(相手が不死身だからセーフとはならんだろうなぁ……)



 ここで悔やみ続けても仕方ないので、気を取り直して次の目的を考える。



「よし、他に人間の匂いもしないし大丈夫だな。何か視えるかバウム」


「魔力切れだの。しばらくは遠隔視も予知もできん。ウム」


「バウムの能力は凄いけど、すぐ魔力切れるよな」


「ウム。仕方ないの。魔獣の力は努力ですぐどうにかなる物ではない」



 以前からそんな気はしていたが、どうやらバウムの真空波も何でも視える力もどうやら燃費がかなり悪いようだ。


 一方エクレアは元気そうだった。


 超音波を発するのは燃費が良いのだろうか?


 ゲームに例えるなら消費MPが違うといった所か。


 俺も今は魔力と呼ばれているエネルギーを感じないし、光線は撃てない気がする。


 体力と同様に光を浴びていれば回復するので、ゆっくり日向ぼっこをしたい所だ。


 しかし、もし今追撃されればひとたまりもない。


 すぐに移動する必要があった。



「動けるかバウム」


「ピエーン」


「ウム。ちとキツイかの」



 バウムはビトーにぶつけられた岩のダメージが残っていた。



「あれだ、すぐに傷を治す魔法とか無いのか」


「ウム、無い。正確には私達にはその手の能力が備わっていないが正しい」



 まだ出血すら止まっていないが、俺たちには傷を治すような能力も応急処置をするような手段も持ち合わせていなかった。


 よく考えたら、俺たち3匹なんてバランスの悪いパーティだ。


 魔法が存在する世界なら体力を回復できる魔法だとか、ぱぱっと傷を治せるアイテムだとか、そういう都合の良い物があっても良いだろうに。


 ここは余計なところで現実的な世界だった。



「とにかく移動しよう。背中に乗れバウム」


「ウム」



 俺もかなり疲労しているが、折角作戦まで立てて、爪が剥がれるかと思いながら穴まで掘って拾った命、無駄にしたくはない。



「国境はどっちだバウム」


「ウム。多分あっち」


「多分かよ。適当だなおい」


「今は遠くまで見えないんだからしょうがないの。ウム」



 街から離れれば離れるほど、道らしい道は無くなってくる。


 現代社会と違って魔導機器トランスギアのような高度な道具が存在する反面、それらは末端の街までは普及しておらず、まだここへ来て間もないが地域によって文明の進歩の差が激しいような印象を受ける。


 街単位で経済が完結しているのならば、物流が重要視されないので普段行く必要のない場所への道は当然整備されないという事だろう。



「ピエ!」


 エクレアは歩いて国境を目指す俺たちに付いてきつつも、食べれそうな草を見つけてはせっせと口に運んで「もしゃもしゃ」している。


 この状況でも最優先事項が食事とは……。


 案外、精神的に一番タフなのはアイツかもしれない。

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