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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
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#048 『消耗戦』


(あんなのやっぱり勝てないんじゃ?)


 俺はバウムから相手の情報入手と作戦を立てた上でなお、不安を感じていた。


 敵の名はビトー・ノイラート。階級は大尉。元々屈強な軍人であったが、戦争で瀕死の重傷を負った際、魔導アーカイブとかいう別の人体実験で超人的能力を手に入れたそうだ。


 バウムの直接の部下ではないが、その時の実験にも関わっておりなにかと因縁があるようだった。



「アルバート博士。もう一度聞くが、こんなに丁寧にお願いしているのに協力してもらえないのか」


「お願いというのは頭を下げてするものだ。馬鹿にはそんな事もわからんようだの。ウム」


「おいおいおい。まったく、相変わらず頭が固いな博士は」



 そうやって会話をしながらも、バウムはエクレアを地上にゆっくり降ろし、俺の近くにきて耳打ちする。



「わん公、あやつは早くて強いが馬鹿だ。搦め手には弱い。作戦通り落ち着いてよく考えて行動するのだ」


「……わかった」


「ウム。うさぎも聞こえたな? 冷静になれ」


「ピエン」



 バウムは命のやり取りに対してもちょっと落ち着きすぎている気もするが、今は彼の言葉を素直に聞き入れ、取り乱さず段取り通り動く事を心に決めた。



「おいおいおい、さっきから何をヒソヒソ話してるんだ。めんどくせぇな……行くぞ!」


「ウム、散れ!」



 散開した俺たちを見て、今度はビトーが俺の方を追ってくる。全力で逃げる俺。



「犬コロめ! さっきはよくも噛み付いてくれたなおい」


(誰も好きこのんで噛み付いたりしねーつーの)



 筋肉ダルマが駆け回り俺たちはそこからワラワラと逃げるという、まるで鬼ごっこの如く遊んでいるかのような状態になった。


 俺が捕まりそうになると、バウムが空から邪魔して注意を反らし、エクレアはひたすら泣きながら周囲をちょろちょろと走っていた。


 俺はたまに光って目眩ましをしようとしたが、光る前兆が気付けるのか、ビトーは目を瞑るという原始的な戦法であっさり看破されていた。


 それからしばらくして――



「ハァハァ……おいおい、逃げてばっかいねーでかかってこいよ……ハァハァハァ」


「ウム、だいぶ疲れてきたようだの」


(俺もかなり疲れてるけどな……準備にどれだけ体力使ったか……)



 ビトーは人間にしては異常に素早く、単純なスピード勝負では捕まっていた可能性もある。


 これに対しエクレアが超音波でバウムの近づく音や気配が分からないようにして巧妙に撹乱していた功績が大きい。


 俺は光りながら逃げていただけだが、ビトーは周りのちゃちゃが入ることで余計な注意や体力を使い消耗してゆく。


 そう、この戦いは3対1。数の有利を活かして消耗戦に持ち込んだのである。


 疲れれば隙も油断も大きくなる。


 そこを狙おうというのだ。


 そこからも俺たちは逃げに徹し、さらに戦いは長期に及んだ。



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