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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
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#044 『石碑』


 話をしながらではあったが、国境を目指してもうかなりの距離を歩いた。


 このままではまた日が暮れてしまうが、あれから何もトラブルは無かった。



 「ピエー」



 実は俺たちの中で一番移動が早いのはこの泣き虫のうさぎエクレアだ。


 元々歩いてもすばしっこく動いているのだが、超音波で高速飛行できる音速うさぎなのだ。


 俺が必死に早足で歩いているのに、余裕で途中の草を食べたりして、少し離れると飛んで追いついて付かず離れず同行している。


 バウムは始めはゆっくり飛んでいたが、今は俺の背中に乗っている。



「バウム……重いんだけど」


「ウム。仕方あるまい。お主の移動にあわせてゆっくり飛ぶのは逆に疲れるのだ」



 国境越えにおいて俺の遅さと持久力のなさが足を引っ張っていた。


 俺は魔獣の能力として光を操作できるが、自分自身の移動には全く役に立たなかった。



「ピエピエ!」



 エクレアが先で何かを見つけたようで訴えている。


 嗅覚に集中したが、特に何か匂うということも無い。



「どうした。エクレア」



 道中は小高い丘に差し掛かり、見えてきた物に俺は目を疑った。



「……これは。見たことがある」



 丘の上には大きな石で出来たモニュメントがそびえ立っていた。



「ウム。古代の石碑だの」



 近くに寄って苔が張り付いて分かりづらかったが、彫ってある文字を見て俺は確信を得た。



「間違いない。これはジョージア・ガイドストーンだ」


「お主コレが何か知っておるのか?」



 直接この目で見たことはないが、何度かメディアで取り上げられた有名な石碑だ。


 動画で見た覚えがあるし、何より目の前の石碑に掘られている文字は英語だった。



「なんでこんな物がここにあるんだ!?」


「知らんが、こんな物がどうかした。ウム」


「バウム。ここは地球じゃないんだよな」


「ウム。ここは惑星ルビアレスだ。今も昔もな」



 これはいったいどういう事だ。


 俺は異世界に来たと思ったが、地球にあったものがここにある。


 そっくりな偽物かもしれないが、偶然とは思えない。


 ジョージア・ガイドストーンとは中央に一枚の石版、それを囲う4枚の石板があり、その上にキャップストーンと呼ばれる石が乗っている人工的なモニュメントだ。


 そこには人間の生きていく上での指標みたいな物が掘られている。


 しかし、それはかなり苔が付いているし石も所々風化していた。


 向こうの石には伸びた弦が巻き付いている。


 バウムの言う古代の石碑と表現するとおり、現物よりもかなり時間が経っている。


 バウムもこれについて詳しくは知らないようだ。


 俺も知らないけど。とにかく見たことがあるのだ。



「まじでここは一体どこなんだ……」


「ウム。何か理由がありそうだの」



 そんな新たな謎を残しつつ、あれこれ考えている内に日が暮れていった。


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