#037 『梟はかく語りき 後編』
頭上の梟は雄弁に語ってはいるが、その内容は実に筆舌に尽くしがたい悲惨な話だった。
バウムの仕事は軍事開発研究者だった。
軍事研究から最終的に生活を豊かにする道具が出来るという構図は地球でも同じである。
そのためにバウムは貢献したと言えるだろう。
しかし、その犠牲は沢山の人間の命。
因果応報と言うべきかその報いは悪い結果となって現れる。
最終的に己は人間をやめ、梟型の魔獣となったのだ。
自分の思い通りに事が運ばないというのはよく経験していたけれど、こんなに仕事が大きな失敗となって身を滅ぼすなんて事があるだろうか。
それでも強くあり続けるバウムの信念が垣間見れた。
それにバウムは先程の戦いで見た戦闘面においても強烈な強さだった。
「バウムは強いな……色んな意味で。なんか魔法みたいなの使ってたし」
「ウム。魔獣には元々強力な力がある。強くなるにはそれを知る事だ」
「知らない力……」
そういえば、確かに能力で何かできそうと思って試したら出来た。
元々ちょうちんが付いてて鈍く光ってるから、念じたら強く輝いた。
窮地で幽霊を引き離したかったから、そうイメージしたら光だけ切り離して飛ばせた。
そして、さっきは光を集めて枯れ葉を燃やすことに成功したのだ。
本能のようなものだろうか。
野生動物は己を鍛えたりはしない、サメも虎も生きる中で必要に迫られてその牙や爪の使い方を知るのだろう。
そんな事をうっすらと思いながら、俺はこれから先の事を考えていた。
「俺たちはこれからどうなるんだ? 元に戻れるのか」
「……わからん。だがわん公、希望はある。あの絶望の縁から転機をくれたお主の光に賭けよう」
「あの時、どうなったんだっけ? 混乱しててよく覚えてない」
「ウム、お主が【深海の帝王】と融合した時、かつてない力で施設一帯を破壊した」
俺はどうやら魔獣になった時、相当暴れたらしい――
「破壊……全然覚えてないや」
「ウム、お主が檻も部屋も壊して、動けるようになった私と施設から逃げたのだ」
「じゃあなんで飛行船に?」
「研究所ごと崩壊してしまい、おそらく軍上層部は証拠隠滅と魔獣を逃さないように施設ごと爆破しようとした」
「無茶苦茶じゃん」
今知ったが、俺が暴れたせいでとんでもない事になっていた。
「ウム。だがお陰で混乱に乗じて逃げ続け、爆発前に脱出しようと離陸直前の飛行船【リーズンフォーゲル】に飛び乗ったのだ」
「……どうりで軍人に追われてたわけだ」
「ウム。そういえば、その時にウサギも飛び込んできたの」
「うん、やっと話が繋がったわ。ちょっと思い出した」
当時、記憶が混乱していたが、落ち着いてみて少しだけそんな事があったと思い出した。
今の今まで何で逃げているのかすら忘れていたのだ。
「ウム。折角拾った希望だ。生きて問題と向き合い、答えを導き出す」
俺はこんな状態になっても諦めないバウムの凄まじい精神力と強い意志に勇気をもらった。
「……国とか戦争には興味はないけど、俺もこんな状態のままワケも分からず死にたくない。あいつらに見つからない安全な場所まで逃げよう」
「当面の目標は決まったようだの。ウム」
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