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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
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#035 『梟はかく語りき 前編』



「まずいな……焚き火は目立つか」


「ウム。大丈夫だろう。深夜の私相手に人間の身で仕掛けては来るまい」


「ああ、そういえばバウムは目が良いんだったな」



 焚き火で少し周囲は暖かくなり、一息つける状態となった。


 その時エクレアが鳴き声も出さずにパタンと横に倒れこむ。



「エクレア!」


「ウム、大丈夫だ。眠っただけだの。……よっぽど疲れてたのだろう」



 それはそうか、あんな目にあえば疲れもする。


 なにしろ、この2日間でサメと幽霊と化け猫に襲われたのだ。


 平和な地球で住んでいたらこんな事一生体験しないだろう。


 しかも、元は女の子とあってはあれは相当しんどかっただろうと思う。



「バウム。俺も疲れたよ」


「ウム。見張りはやろう。今のうちに寝ておけ」


「ありがとう。お言葉に甘えて俺も寝させてもらうよ」



 かくいう俺もゆっくり寝れるのは久しぶりな気がする。


 俺はまるで連日残業からの納期前デスマーチ明けのように泥のように眠った。










 ★ ★ ★ ★ ★











 気がつくとまだ空は暗い夜のままだった。


 焚き火の枝が弾ける音で目が醒め、辺りをぼんやりと見ていると――



「眠れないのか」


「……いや寝たけど、起きたって所かな」


「ウム。まだ朝までは長いぞ」



 どうやら、たいして時間が経っていない。


 昨日もそうだったが、疲労はするけど睡眠はさほど取らなくても問題ない。


 水中で呼吸できるし、光で回復するし、魔獣のになった事で体に様々な変化が起こっていた。



「バウムは寝なくていいのか。暇だろ」


「ウム。問題ない……少し考え事をしていた」


「そうか」



 すぐ近くにある木の枝の上で物思いにふけるバウムを見て、つい聞きたくなった。



「バウムは何かを研究する博士だったのか?」


「……私の人生は昔から試行錯誤と研究ばかりだった。だが、結果はコレだ」


「何があったんだ?」



 あまり自分の事を語りたがらないバウムに聞いて良いものかどうか一瞬迷ったが、きっと自分にも関係がある。


 そう思って疑問をなげかけた。



「ウム……話しておくか。長くなるぞ?」


「いいよ。どうせ夜は長い」


「……私は元々魔導、魔法と言い換えてもいい。それに興味を持ちずっと研究してきた。そして最終的に辿り着いたのがその根源となる魔獣と魔女の存在だ」


「前に言ってたポラリスの魔女って奴か」


「ウム。そうだ。ポラリスの魔女と魔獣は恐らく関係性があり、その歴史も古く、もうずっと前から沢山の人間が調べてきた」


「そのポラリスの魔女にも会ったぞ。酷い目にあった」


「なんと! いや、どうせ遠からず関わることになったろう」




「ウム。それでだ。歴史を紐解けば、この国ロブスタは魔法の素質がない者を差別しない国家を新たにトラベラーが創ったことに始まる。だから国をあげて魔導を研究し、それを誰でも使える道具として普及させたのだ」


「それがトランスギアだっけ? あの銃とかも?」


「ウム。今ではそれがこの国の全部すべてだ。今や道具は大なり小なり、ほぼ魔力で動いており人の生活には必需品となっている」


(なるほど、俺の故郷で言う所の電気みたいなもんだな)


「だが、いくらかの問題と謎が残った。物理法則を曲げるような複雑な魔法は簡単には解明できず、トランスギアに応用ができなかった。ポラリスの魔女と高位の魔獣にはこれら解明できない魔法を簡単に行使する力があった」


「超常現象みたいなもんか」


「そもそも過去では魔法の使えない者にとって、魔法全てが超常現象で畏怖する存在だったのだ。それが少しずつ解明され、ロブスタの人々は魔導を機械で再現し、力を得て増長した」


「増長?」


「ウム、人間の欲が出たのだ。元々あった国アラビカと新設国家ロブスタとで戦争が勃発したのだ」

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