File69 国民をバカにしておく教育
いつも不思議に思うことがある。義務教育や高校教育では、どうして政治・経済・法律のことをほとんど教えないのであろうか。わずかに週3時間ほどある「公民」という科目の中で、これらの内容は駆け足で済まされてしまう。大学受験で公民を選択しない人は、ほとんど勉強すらしない。
その反面、日本史、世界史、地理には莫大な時間が注がれ、どうでもいいような年号や人名・事件名を丸暗記させられる。歴史や地理を勉強することが無駄だとは言わないが、それだけの時間を費やすほどのことか疑問に感じる。
教育とは、立派な社会人を育てるためのものではないのか。社会に出て生きていくために必須の知識である政治・経済・法律をきちんと教えずに社会に送り出してしまうため、二院制も知らずして選挙権を得る人もいれば、公定歩合も知らずして銀行に預金を預けたり、民法も知らずして契約を結んだりと、若い人は危なっかしいことのやりたい放題である。そんなことは、社会に出てから実地訓練で覚えればよい、あるいは弁護士とか評論家とか専門家に任せておけばよいとでも思っているのであろうか。
国民をバカにしておけば政治がやりやすくなるのは事実である。選挙制度について詳しく教えなければ、選挙は人気投票で済ませられるし、署名集めをして住民投票に訴えられる心配もない。経済について詳しく教えなければ、賃金が安くてフリーター生活を強いられても、消費税が上がっても、何も思わなくなってしまう。法律について詳しく教えなければ、訴訟を起こされる心配もないし、契約書はいくらでもめくら判で作成できてしまう。
別に大学の政治学部や法学部、経済学部で教えるような高度な専門知識までは不要である。ほんの基礎の基礎でもいいから、社会に出る前に教えてもらっていれば、もう少し違った人生を歩んでいたのではないかとも思いたくなる。
池上彰さんのテレビ番組がたいそうの人気である。国民はやはりこうした知識に飢えているのである。
(追記)
このテーマにつき多くの方からご関心が寄せられていますので、筆者の考え方を改めてまとめておきたいと思います。
国民をバカにしておいて得する人々は、いわゆる師士族と呼ばれる人たちです。師士族とは、医師、弁護士、税理士など、○○師、○○士というように後ろに「師・士」がつく国家資格保持者のことをいいます。
国民がバカであれば、難しいことはこうした専門家に頼らざるを得なくなり、こうした人たちの収入が増えるのです。このため、師士族は自分たちの特権を守るため、普通の人でもちょっと考えればできそうなことでも、自分たちで独占したがります。
例えば、記憶に新しいところでは、看護師や救急救命士でも医療行為の一部ができるようにしようという話が出てきた時に、素人がやるのは危ないという理由で医師会が猛反対したケースがありました。でも、今ではAEDを使った除細動や人工呼吸・心臓マッサージなどの救急救命処置は素人でもできるようになっています。
ところが、学校教育でこうした実習があまり真剣になされていないため、いざ本番という時にはうまくできないのが実態です。ちなみに筆者は医療バカなので多分119番するのが精一杯だと思います。
もちろん大きなケガや病気をした時は医師のお世話にならなければなりませんが、学校の保健体育の授業がもう少し充実していれば、例えば転んで捻挫したとか風邪をひいたくらいなら、自宅で十分療養できるはずです。日本人の医者好きは、国民をバカにしておく教育が原因だと思います。
話は変わって、「税金」もそうです。税金の確定申告は、本来なら自分で出来るものなのですが、難しいのと面倒臭さがあるため、ほとんどの人が税理士任せあるいは会社の人事部任せになっています。でも、医療費控除の申告をしたことのある人はご存じと思いますが、最近ではインターネットから簡単に申告書を作成し税金の還付を受けることもできるようになっています。
これなんかも高校のカリキュラムの中で、所得税の仕組みと申告書の書き方ぐらいの説明がほんの2-3時間でもあれば、皆自分で出来るようになるはずです。でも、現実にはそんなものは社会に出てから自分で勉強しろ、あるいは税理士に任せておけばいいとばかりに、学校教育では無視されてしまっています。
だから、社会人になって初めて給料をもらって、ようやく手取りがなぜこんなに少ないのかと頭にくる人がほとんどなのです。それどころか、ほとんどの人が申告すれば税金が戻ってくる場合があることを知らないのが実態です。
やはり国民をバカにしておく方が政府としても都合がいいのです。皆さん、高校を、あるいは大学を卒業したら、これで一人前の社会人なんて思っていると、あちらこちらで一杯損をしますよ。もっと賢くなりましょう。




