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45 家族会議・後半

「そこまで警戒するほどなのですか?」


 母上が聞いてくるが、俺を含めてミネッティ伯爵令嬢の奇行を知っているレナと父上は考え込んでいる。

 あの時の言動は貴族令嬢として常軌を逸してはいたが、あれから2年も経っているし、そもそも向こうは貴族学園の初等部に入学しているはずだ。

 普通に考えれば少しはまともになっているはずだが、あの時の言動を考えるとどうなっているか読めないというのが本音だ。


「わかりません。あれからミネッティ伯爵令嬢はもちろん、ミネッティ伯爵ともお会いしていませんからね」


「うむ、エルメライヒ公爵も特にミネッティ伯爵については危機感を抱いてはいなかったし、どうなっているのか読めんな」


「私もです。あの時の無礼は身も震えるほどでしたが、あれから私も成長していますし、あの方が成長していないとは思えません」


「うーん、わからないということね」


「ええ、一口に成長と言ってもどの方向に成長しているかはわかりません。貴族令嬢としてまともになっているのか、それともあの考えのまま異端として成長しているのか……」


「それで、公爵家の後ろ盾ね」


「まあ、保険のようなものです。陛下に緊急時面会権を求めたのもこれが理由ですからね」


 面倒事を避けるために他家の力が必要というのは情けない話だが、中央にいる貴族と地方にいる貴族では意識がまるで違う。

 こちらが有り得ないと考えたことでも、中央では良しとされていることもあり、ミネッティ伯爵令嬢とゲルハルディ伯爵令息の争いが中央と地方の対立になってしまう恐れもある。


「伯爵令嬢との対立を陛下に奏上するのか?」


「父上、貴族学園には第三王女もいるのですよ?」


「まさか、第三王女が加担すると?」


「可能性の話ですよ。上の四人の王子殿下、王女殿下は優秀で聡明だと話は聞いていますが、下の二人、第三王子殿下と第三王女殿下は噂すら流れていませんからね」


「まあ、第一王子殿下は王太子筆頭、第二王子殿下は宰相を目指して努力中、第一王女殿下と第二王女殿下は友好国との婚約を進めているからな」


 ちなみに、第一王子殿下は17歳、第二王子殿下は16歳、第一王女殿下は14歳、第二王女殿下は13歳だ。

 さらに言うなら、第三王子殿下は10歳で第三王女殿下は9歳。

 貴族学園は初等部が9年、高等部が3年で、貴族として生きていくためには高等部の卒業資格が必須。

 俺とレナは高等部だけに通うつもりなので、在学期間がかぶるのは第三王女殿下だけだ。


「貴方、陛下から何か聞いていませんの?」


「第三王子殿下は公爵にするか辺境伯に婿にやるかで悩んでいるとは聞いたが、第三王女殿下については聞いていないな」


「つまり、これからどうなるかわからない存在。まともな貴族と交流を持てばよいのですが……」


「ミネッティ伯爵令嬢のような貴族の常識をないがしろにしている者と交流を持てば、わからんということか」


 ま、ゲームでは第三王女も攻略対象というか、メインヒロインの1人で主人公とイチャコラしていたから警戒しているんだが、それは両親にもレナにも伝えられないしな。

 それに既にシナリオからは大幅にずれてきているから、どこまで信用できるかはわからないが、警戒しておくに越したことはないだろう。


「はあ、王都での出来事はこれで最後?」


「そうですね。そもそもエルメライヒ公爵との会談自体が予定外のことですし」


「うむ、流石に陛下との謁見の翌日にアポを求めてくるとは思わなかったな。会談が終わったらすぐに準備をして王都を出たから特に問題はない」


「問題ないわけないでしょう! ひとまず問題はマックスがダンジョンを攻略したせいで有象無象が寄ってくる可能性です」


「まあ、その辺は私が気を付ければ良い話ですから」


「マックス! きちんと聞きなさい! 貴方はそれでいいでしょう、でもレナが不安に思うことを軽んじるのは許しませんからね!」


 母上の言葉にハッとした、確かに俺自身はシナリオや設定を知っているから、これからどうなるか、自分がどう思われるかはわかっている。

 これまで田舎者、地方の山猿と思われていたゲルハルディ家だが、王都貴族はもちろん、中央貴族もちやほやして持ち上げてくるのは目に見えている。

 だが、レナにとっては全て知らないこと、不安に思ったり、俺がもっと爵位の高い人間になびくのではと思っても不思議ではない。


「申し訳ありませんでした、母上。レナとはきちんと話し合う時間を取ります。……というわけで、レナ。明日は暇かい?」


「……マックス様?」


「デートをしようか」


 ニッコリと笑ってデートの誘いをしたのだが、レナはうつむいてしまった。

 うーむ、これはオッケーってことでいいのか?

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