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16 婚約が認められた

「おお、そうだ。マックス、レナ、2人の婚約書類が返送されてきたぞ、陛下からは婚約の許可をいただいた」


「やっとですか。通常は郵送から1ヶ月以内の返送でしたよね?」


「ここが辺境地というのもあるが、王都の方で紛糾したのだろうな」


「やはり、王家派との婚約を断っての婚約だからですか?」


「まあそうだろうな。陛下はそこまでこだわってはいないだろうが、側近連中が話を聞かされていて、従わなかったことに何か言いだしたのだろう」


「はぁ。貴族同士の婚約は当主と当事者が認めていれば余程のことがなければ横やりは入れられないというのに、面倒なものですね」


「そう言うな。陛下に心酔しているだけで、そこまで悪い奴らではないのだよ」


「国王派とは言え心酔しすぎるのもどうかと思いますがね」


 国王派は国王に権力を集中すべきだという派閥だが、だからと言って国王の言うことなら何でも聞くということじゃない。

 国王が間違っていたら、辺境伯や派閥の重鎮が国王に圧力をかけるし、おかしな政策を続ければ国王交代に踏み切ることもある。

 権力構造として国王が唯一の頂点というだけで、国王になったから何でも命令していいというわけではないんだ。


「まあ、陛下のことも側近のことも無下にすることは出来ないからな。貴族学園に入学したらそれとなく他派閥の監視をしてくれ」


「そこはわかっています。ですが、貴族学園入学は高等部からでしょう?」


「初等部に通わなかった以上、そうなるな。まあ、辺境の領主ならそれが普通だし、領主・騎士科に通ってくれればいい。レナは淑女科だな」


「そうですね。お父様ともそうお話ししています」


「領主・騎士科ですか。剣術も身に着けておかなければならないということですね」


「騎士団には話を通してあるから、訓練に参加してもいいし、誰かに教えてもらってもいいぞ」


 父上がちらちらとこちらを見ながら言ってくるが、正直、父上に剣術を習う気はない。

 というのも、父上は剣術に置いては天才と呼ばれるにふさわしい能力の持ち主で、俺と変わらぬ年齢にはロングソードを振り回し、現在では両手剣を振り回している異才の持ち主だ。

 騎士団は基本的にロングソードにラウンドシールドという組み合わせで戦っているのに、父上だけは身の丈ほどもある両手剣を振り回しながら敵に突撃していると言えば、どれほどおかしいか理解してくれるだろうか。


「そうですね、体力づくりがある程度終わったら、騎士団に見学に行かせていただきますよ」


「うむ、そうしろ。領主に関する勉学の方はペトラに任せているが問題ないか?」


「領主に関してはマックスは問題なし、レナちゃんは淑女教育をこれからね」


「最低限のことだけです。実際に領地を見回っていませんし、協力してもらっている周辺領にも赴いていませんからね」


「その辺はもう少し成長して、自分の身を自分で守れるようになってからですね。護衛は付けますが、ある程度の戦闘をこなせるかどうかは重要ですから」


「実地の時には爺様に同行する形ですか?」


「ゲルハルディ領なら私が、周辺領地ならお義父様にお願いするのが良いでしょうね。馬で周ることになりますから、乗馬の練習もしておくように」


「はい、かしこまりました」


 うーん、体力づくりに剣術、乗馬に領主としての勉強もあるから、結構時間がかかるなぁ。

 まあ、襲撃まではあと3年あるはずだし、それまでには何とかなるか?

 とりあえずは来年中には剣術と乗馬をそれなりにこなして、2年後にはダンジョン攻略、3年後は周辺領をまわって襲撃に備えるとするか。

 

 いやぁ、言葉にすると面倒なのが丸わかりだが、これをこなしておかないと中ボス街道まっしぐらだからな。

 俺にとっても大切な家族だから守るのは当然だが、両親がいないとゲルハルディ領が不安定になるし、王都に行くのも難しくなる。

 ゲルハルディ領にこもっているだけだと、主人公の勇者化が防げないし、頭の悪そうなヒロインが暴走した際に抑止にもなれないからな。

 なんとしても、襲撃を防がないとな。

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