6月23日 天狗、ケイドロ大会を開催する。
3部に分けて、まずは一つ目。
多数の皆さまの参加に、三衣の能力が限界を迎えようとしております。
何だ、見学合わせて30人ってwww
楽しくて仕方ない。
2部、3部のアップには数時間の空きがあります。
まだ滑り込み参加間に合いますよ!(無謀)
6月23日 昼
うろな中央公園は、町の中心地にある大きな公園である。グラウンドやちょっとした丘、そして遊具もあるので、うろな町民の良い触れあいの場として人気のある場所だ。
休日には少年野球チームや草野球の試合などで使用され、うろな南小やうろな北小の児童達の遊び場にもなっている。
来月、7月6日(土)に行われるうろな町の夏祭りもここで行われる。
そんな中央公園のグラウンド部分には今、どこかの空き地に置かれているような土管や2m四方ほどのコンクリートブロック、安全第一と書かれたオレンジ色の工事現場フェンスが設置されていた。
その内の一つ、横倒しに置かれた土管の上に天狗仮面・平太郎はいつものジャージ姿で立っていた。彼の目の前には20名あまりのうろな町民が集まっている。
「諸君!我が名は天狗仮面!本日の催し物に集まってもらった事に
深く感謝する!『うろなケイドロマイスター』の称号目指して、
死力を尽くして欲しい!」
堂々と宣言された声が晴れ間の覗く曇り空に響く。『うろなケイドロ大会』。平太郎が町の人々と交流するために催した企画である。
思いつきだけの突貫企画であったが、うろな中学の教師であり、うろな町各機関の連携担当として活躍する清水渉の力を借りて各教育機関に参加者を募ることが出来た。
その清水本人はと言うと、グラウンド脇に置かれたテントの中でビデオカメラを回している。「梅原先生の活躍、1フレームたりとも逃しません!」と言っていたが、彼なら本当にやりかねない。
テントは4つあり、清水の他にも保護者や見学者が和気藹々といった様子で話をしていた。ちなみにテントはうろな南小とうろな北小から借り受けたものである。
「それでは、ルールを説明する」平太郎が言う。
①参加者は、各自名札をつける
②箱からクジを引き、『ケイサツ』チームと『ドロボウ』チームに分かれる
③制限時間内に、『ケイサツ』チームが『ドロボウ』チームを全員捕まえれば
『ケイサツ』チームの勝ち。時間まで1人でも逃げ切れば『ドロボウ』チームの勝ち
④『ドロボウ』を捕まえるには、相手の名前を呼んで捕まえること
⑤捕まえられた『ドロボウ』は、グラウンド端のテント『牢屋』に入れられる
⑥『牢屋』に入った『ドロボウ』は、別の『ドロボウ』にタッチされることで
『牢屋』から逃げ出すことが出来る。ただし、タッチする際に解放する
『ドロボウ』の名前を呼ばなければならない
以上のことを話し終えた。名前を呼ぶ以外は、一般的なルールである。「何か質問はあるだろうか」と平太郎が言うと、参加者の1人であるうろな南小6年の皆上竜希から声があがる。
「ケイサツとドロボウの見分けはどうするの?初めて会う人もいるから、
敵か味方かわからなくなるんじゃないの?」
「うむ。心配無用だ!うろな南小の小林果穂先生が
ケイサツチーム用に警備帽を用意してくれた。サイズも各種あるので問題ない。
警備帽を被っていればケイサツチームだ!」
「そのことにについて異議がある!」うろな中学教師、梅原司が声をあげる。
「なぜ私の服装だけ婦警姿なんだ!全員この格好だと言うから仕方なく着たと言うのに
他はみんな私服ではないか!しかもなぜ私だけ名札に平仮名で名前が書かれているんだ!」
「済まない、司殿。確かにその格好ではドロボウチームには入れないが、
清水殿のたっての希望なのだ。詫びに、私がドロボウチームに固定で入ろう」
そう言うと、平太郎は唐草マントを風呂敷包み状にして背中に背負い、ポケットから取り出した同じ唐草柄の手ぬぐいを天狗の仮面の上からほっかむりのように巻いた。
「そういう問題ではないし、そもそも詫びにすらなっていないじゃないか!
相変わらずのその態度…いいだろう!開始数秒で貴様を牢屋にぶち込んでやるからな!」
梅原を始めて見る参加者は、その怒気に恐れをなしていた。
「司ちゃん、抑えて抑えて!子供たちが怖がってるから!」小林が梅原を宥める。
「む……くそっ、清水め、後でひどいぞ」
「梅原先生は、コスプレがご趣味なのですか?前回はうちの高校の制服。
今回は婦警姿だなんて……」
うろな高校教師、田中倫子はやや呆れた顔をしながら梅原を見ている。以前、梅原が業務でうろな高校を訪れた際に、訳あって高校の制服を着ることになってしまったのだ。
その元凶と生った人物、うろな高校1年の四季恋歌と上条達也も今回の大会に参加している。
「うっ。違うんです!田中先生!それとこれには深い訳が……」
小、中、高それぞれの教師陣は、このケイドロ大会の児童生徒の引率役をかって出てくれていた。うろな北小の教師、小林拓人も来ているが、彼は記録係と言う名の見物である。
ちなみに、うろな南小とうろな北小の両小林先生は夫婦であり、教員仲間でも仲睦まじい夫婦として話題である。
慌てる梅原を尻目に、平太郎は他の参加者達に質問がないか問う。
そして、チーム分けが始まった。
○ ○ ○
ここで、ステージについて少し補足をしておかなければならない。グラウンドに置かれた土管やブロック、そしてフェンスは、障害物として平太郎が町役場の企画課に掛け合って用意したものだ。
遮蔽物のないグラウンドでは、走り続ける体力の無い者から捕まってしまう為、それへの配慮だった。
4つあるテントのうち、一つは『牢屋』としてグラウンド内の端の方、ちょっとした丘を背負うように設置されている。その『牢屋』の後ろに、少し距離を置いてテントが3つ並んでいる。そのうち1つは救護テント、あとの2つは見学者席として用意されている。
救護テントには、平太郎の同居人である猫塚千里と、特徴的な語尾をつける高校2年正の鍋島サツキが救急箱と共に座っていた。
「ごめんね、サツキちゃん。手伝ってもらっちゃって」
「千里姐さんの頼みは断れないにゃ。ここでタカトがリオっちに振り回されるのを
眺めてせいぜい楽しんでやるにゃ」
それに、とサツキは思う。「千里姐さんの頼みを断ったら何をされるか分からないにゃ。触らぬ仙狸に祟りなしだにゃー」
余談であるが、猫塚とサツキは妖怪である。ヤマネコの妖怪、仙狸こと猫塚千里。人狼族の末裔でありながら語尾に「にゃ」とつける鍋島サツキ。妖怪二人が救護テントにいる事を知っているのは、同じ妖怪である天狗仮面・平太郎と、タカトと呼ばれた妖狐、稲荷山考人の二人だけだ。
一方、隣の見学テントの一部では記録係の清水、小林をはじめ、参加者の保護者である堂島柊子と、藤崎祥太、そして川崎尚吾達が談笑していた。
「いつもお世話になっております。清水先生」と柊子。
「ああ、堂島さん。以前はどうも。天音さんはその後いかがですか?」
「ええ、なんとか。お気にかけていただいて有難う御座います」
「天音さんの事は僕も心配ですから」そういって話を終えた後、くるりと川崎に向き直る清水。
「そちらは確か、一度お会いしましたよね?川崎さん」
「ああ、電車の中で。確か、梅原先生にぞっこんなんだっけか?」
「はは、もっと広めていただいて結構ですよ。町公認の仲とでも思ってくだされば」
「清水先生は梅原先生の事になるとネジが飛ぶようですからね」小林が口をはさむ。
「小中高の合同企画がこんなに早く開催できるとは思ってもいませんでした。
うちの果穂とともに、さすが清水先生だと話してましたよ」
「僕は乗っかっただけですよ。それに、この企画に価値を見出して参加していただいた
町の皆さんや協力していただいた方々には本当に感謝しています」
「俺からも、お礼を言わせて下さい」藤崎が清水に頭を下げた。
「恥ずかしながら、娘とあまり交流が持てていなくて。娘の咲夢が友達と
参加すると言うので、普段の娘の姿を見れる良い機会だと」
「いいお父さんじゃないか。ところで藤崎さん、
さっきから気になってたんだが、もしかしてアンタ…」
「川崎さんも気づきました?阪急タイガースの藤崎選手、ですよね?」
「ご、ご存知でしたか。小林先生はよく野球をご覧に?」
「ええ、まあ」小林はにこりと笑いながら、それ以上は何も言わなかった。
するとテントのもう一つの団体の方から声がかけられる。テントには、保護者グループだけではなく、商店街の面々も地元のイベントならばと賑やかしに顔を出してくれていた。子供たちも町の住民も、知った顔が増えるというのはとても良いことだ。
「藤崎選手だって!?うお、本当じゃねえか!どうなんだい、最近の調子は!」
「うろな町に縁のある選手だもんねえ、うちの家内も試合に出た時はおおはしゃぎさあ」
肩を叩かれながら、商店街グループの方へと連れられていく藤崎。川崎が「何か悪いことしたかも知れん」と呟いていた。
さらに、テント横ではレジャーシートを広げてピクニックの様相をした見学者もいる。うろな駅の駅員、大辻成夢と、行谷エレナである。彼らの仕事仲間の30歳主任・芹沢洋忠がダイエットの為にと参加するので、その監視、および見学にと来ていた。
「エレナさん…芹沢さん、浮いてません?」
「大丈夫よ、多分。それにほら、子供たちにも声かけられてるじゃない」
「あー、あれ、この前天狗に言われて駅に宝探しに来た小学生だ。
ダイサク君とシンヤ君だったかな。芹沢さんのこと、覚えててくれたんだ」
「いい子達ね~。大辻君も参加すればよかったのに」
「僕は太ってませんからねー」
「油断は禁物、よ?まぁ、楽しくなりそうだし眺めてましょう」
○ ○ ○
見学者たちが思い思いの言葉を交わすうちに、参加者のチーム分けが終わる。
梅原は婦警姿の為に強制的に『ケイサツ』チーム、平太郎は唐草風呂敷を背負って『ドロボウ』チームである。
『ケイサツ』チーム
・商店街のアイドル・梅原司
・田中先生を慕う18歳、玩具屋店主・高原直澄
・先輩に振り回される文芸部員、うろな高校1年、綾瀬浩二
・野生の動きは修行の成果、うろな高校1年、日出まつり
・小さい体に目一杯の行動力、うろな高校1年、四季恋歌
・彼女が噂の陰陽師、うろな中学2年、芦屋梨桜
・うろな北小のガキ大将、うろな北小6年、金井大作
・メガネの似合うお供キャラ、うろな北小6年、相田慎也
・ピアノが得意、でも運動だってお手の物、うろな北小3年、藤崎咲夢
・プラチナブロンドの強気ハーフ娘、うろな南小3年、日生芹香
・不思議オーラの赤いペンダント、うろな南小1年、降矢くるみ
・不思議オーラの青いペンダント、うろな南小1年、降矢みるく
『ドロボウ』チーム
・天狗の仮面は正義の印、天狗仮面(平太郎)
・うろな高校の冷静教師、田中倫子
・コスプレ好きの人妻教師、小林果穂
・二次元命のうろな駅員、芹沢洋忠
・うろな高校の嘘八百、うろな高校2年、文芸部長、高城
・封印されし異界の力(自称)、うろな高校2年、文芸部員、香月
・頭上のハムスターがしゃべる!動く!うろな高校2年、向日葵ひなた&ハム太
・巻き込まれやれやれ系高校生、うろな高校1年、上条達也
・不幸と仲良し、陰陽師に狙われる妖狐少年、うろな中学2年、稲荷山考人
・うろな南小のムードメーカー、うろな南小6年、真島祐希
・ちょっと大人びたツッコミ役、うろな南小6年、皆上竜希
・うろな町には来たばかり、うろな北小3年、山辺鈴音
『ケイサツ』チームに小林先生お手製の警備帽が配られ、それぞれの名前が書かれている名札を付ける。チームに分かれて作戦タイムをとった後、それぞれのチームで気合の掛け声があがる。テント席からも声援が飛び、開始前から大会は盛り上がりを見せていた。
平太郎が宣言する。
「30秒後にゲーム開始とする!制限時間は20分!
ゲーム終了時にはホイッスルが鳴るのでそれが合図だ。
それでは、うろなケイドロ大会を開始する!」
平太郎の合図と共に、『ドロボウ』チームが散らばる。
うろな中央公園に、参加者達の声が響き渡る。
実際のゲームをご覧になる際には、文章内の参加者一覧を別窓で開いておくと分かりやすいかも知れません。
ワタクシ三衣も、手元のメモを見ながらでないとなかなか書けません…




