15.責任
執務室を出ると、私はすぐにミシェルの下へ向かった。
「頼む、ミシェル。私を追い出さないで欲しいと君から会長に言ってくれ……!」
「バカじゃないの!? どうしてあんたを助けなくちゃいけないのよ!」
「私は君の夫だ。愛する男だろう!」
「そんなことよく言えたわね。何も出来ないくせに。……いえ、夜のアレだけは無駄にお上手ね」
蔑んだ目で見られて、頬が熱くなる。その場に立ち尽くす私を無視して、ミシェルは両手で自分の頭を抱えた。
「あー、私のバカバカ! どうして、こんな男を拾っちゃったのかしら」
「……そんな言い方をしなくても」
「あんた、自分のことを夫って言い張ってるけど、私の相手をする以外で何かしたの? 仕事はお父様たちにフォローされてばかりで、エルマの子育ても私と乳母に任せっきりだったじゃない。盛ることしか能のない犬よ」
「い、犬……」
「エルマだって、もうどうでもいいわ。あんな性格の悪い子供なんていらないもの」
ミシェルはそう言い切って、新しいワインボトルを開けた。
私に優しくしてくれた妻はもういない。私は項垂れながら、彼女の部屋を後にした。
エルマとは話す気になれなかった。どうせ私ばかりを責める気に決まっている。
私はただ、父の苦労を娘にも理解して欲しかっただけだ。だから愚痴を零した。だというのに、どうして他人に言い触らしたのか。
私に同情する者を探していた。いや、違う。恐らくは、リディアが気に食わなかっただけだ。
私の娘は、優秀な女性をひがむ面倒な一面があった。誰に似たのだろうか。
コリューダ公爵邸へ向かう馬車に押し込められる。
会長や重役も同乗していたが、誰も言葉を発しようとしない。
重苦しい雰囲気の中、私は膝の上に置いた拳を震わせていた。
謝罪を終えれば、私はルシマール家から追い出される。
謝罪をしようがしまいが、それは決定事項だ。
……だったら、謝る意味などないだろう。
十年暮らしていた家から追放される時点で、十分に罰を受けたようなものだ。
なのに、リディアに頭まで下げろと?
冗談じゃない。
公爵邸に到着して応接室に通されると、私はトイレに行くと断って廊下に出た。
さて、窓から庭園に出て……
「……お父様?」




