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愛は全てを解決しない  作者: 火野村志紀
15/17

15.責任

 執務室を出ると、私はすぐにミシェルの下へ向かった。


「頼む、ミシェル。私を追い出さないで欲しいと君から会長に言ってくれ……!」

「バカじゃないの!? どうしてあんたを助けなくちゃいけないのよ!」

「私は君の夫だ。愛する男だろう!」

「そんなことよく言えたわね。何も出来ないくせに。……いえ、夜のアレだけは無駄にお上手ね」


 蔑んだ目で見られて、頬が熱くなる。その場に立ち尽くす私を無視して、ミシェルは両手で自分の頭を抱えた。


「あー、私のバカバカ! どうして、こんな男を拾っちゃったのかしら」

「……そんな言い方をしなくても」

「あんた、自分のことを夫って言い張ってるけど、私の相手をする以外で何かしたの? 仕事はお父様たちにフォローされてばかりで、エルマの子育ても私と乳母に任せっきりだったじゃない。盛ることしか能のない犬よ」

「い、犬……」

「エルマだって、もうどうでもいいわ。あんな性格の悪い子供なんていらないもの」


 ミシェルはそう言い切って、新しいワインボトルを開けた。

 私に優しくしてくれた妻はもういない。私は項垂れながら、彼女の部屋を後にした。


 エルマとは話す気になれなかった。どうせ私ばかりを責める気に決まっている。

 私はただ、父の苦労を娘にも理解して欲しかっただけだ。だから愚痴を零した。だというのに、どうして他人に言い触らしたのか。

 私に同情する者を探していた。いや、違う。恐らくは、リディアが気に食わなかっただけだ。

 私の娘は、優秀な女性をひがむ面倒な一面があった。誰に似たのだろうか。



 コリューダ公爵邸へ向かう馬車に押し込められる。

 会長や重役も同乗していたが、誰も言葉を発しようとしない。

 重苦しい雰囲気の中、私は膝の上に置いた拳を震わせていた。


 謝罪を終えれば、私はルシマール家から追い出される。

 謝罪をしようがしまいが、それは決定事項だ。

 ……だったら、謝る意味などないだろう。


 十年暮らしていた家から追放される時点で、十分に罰を受けたようなものだ。

 なのに、リディアに頭まで下げろと?

 冗談じゃない。


 公爵邸に到着して応接室に通されると、私はトイレに行くと断って廊下に出た。

 さて、窓から庭園に出て……





「……お父様?」

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