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はらはらと桜が散る。
モノクローム。
灰色の桜。
はらはらと、止まらない。
下から見上げる桜。
私は桜の下に横たわる。
モノクローム。
花びらが散っていく。
桜の花びらが私の顔に降り注ぐ。
生暖かい。
モノクロームの桜。
「…ちゃん。のんちゃん。」
頬にサラリとした感触。
あぁ。佐藤くんの手だ。
大きくて優しい。
真っ白な天井。
周りを見なくても予想がつく。
ダークブラウンの家具。
名前が思い出せない観葉植物。
私は白いソファの上に寝ていた。
佐藤くんの家だ。
もう一回眠ってしまおうかしら?
気まずい…。
「のんちゃん。気が付いた?」
佐藤くんはソファの横に座ってこっちをうかがっている。
いつもの優しい笑顔。
でも、今日は違って見える。
佐藤くんの顔を見てしまうと堪らなくて…。
「…佐藤くん。」
上半身を起こして、佐藤くんの首に抱きつく。
「…ごめんなさい。私…。」
涙が頬を滑り落ちた。
後から後から、涙が止まらない。
ふわりと佐藤くんの匂いが懐かしい。
たった数日会わなかっただけなのに。
会わないと決めていた時は、平気だと思っていたのに。
「のんちゃんは何も悪くないよ。ちゃんと話さなかった俺が全部悪い。」
そう言って、佐藤くんは私の背中をずっと撫でてくれた。
涙は止まらなかった。
私はいつも自分だけがつらいと思っていた。
佐藤くんの優しさもその裏の寂しさも、何も気付かずに。
佐藤くんは許してくれるだろうか?
私がした事を。
これからも傍にいてほしいという事を。
3人で過ごす未来を。




