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第二百一話 メタリックゲコドンソード討伐作戦Ⅳ

○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その13○


「現状況に対する解析結果が出ました。

 メタリックゲコドンソード消滅時の映像を検証したところ喉元から剥がれ落ちた逆さ鱗が霧散せず海の中へ。

 この鱗に関してエキサイトエッグはメタリックゲコドンソードの遺伝子を受け継ぐ鍵であると予想、致死に匹敵するダメージを与えはしましたがあの伝説級が今尚未討伐状態である可能性は98.2%と回答しています。

 また魔素の薄いダンジョン外、あの状態から怪物が活動を再開するタイミングとしてはあまりにも早過ぎるとの見解も示しております」


 ちぃぃぃ、伝説級ともなれば回復力も我々の想像の遥か上・・・

 一方この武蔵にはもう戦う力は残っていない。

 銀二の奴も当てにならないこの状況では・・・


「今泉班に連絡、魔法士部隊を搭乗させ直ちにクレイジーバットを海上に展開させるんだ」


 最早望み薄だが今動かせる戦力で対応を試みるしかない。

 それなりの復活を遂げていたならうちの魔法士部隊で何とかなるとも思えんがな。


 一方海底では剣化した触手が幾度となく振り下ろされていた。


 ガキンッ!


 流石は伝説級の鱗だな。


 ガキンガキンガキンッ!


 滅多切りにしても傷一つ付けられんとは。

 あっ、五右衛門さんなら、つっても炎を纏うあんな斬撃水中じゃ使えないか。

 う~ん、どうすっかなぁ。


 ヒュン


 って何だ?


 飛来した一枚の鱗が光の粒子となり巨大鱗に吸収されてゆくと・・・


 キランッ!


 次の瞬間にはスラ太郎の触手が海中を漂っていた。


「なっ、大丈夫か!?スラ坊」


「はい、このくらいへっちゃらです」


 大鱗を見ればその前にはまるで遠隔操作されているかのように1本の剣が構えを取っていた。


 ヒュンヒュヒュンヒュン・・・


 次々に飛来する数多の鱗。

 1本、また1本と遠隔剣は数を増し骨格まで形成され始めた。


 う~む、この状況、非常にマズいのでは?


 そして案の定その刃がスラマーメイド号に襲い掛かって来た。


「なっ、やっぱりか、一先ず逃げるぞ」


 ブォォォォ―――ン


 一目散に逃げ出すスラマーメイド号を7本の遠隔剣が追尾。

 メタリックゲコドンソード本体もその後を追いゆっくりと浮上を開始。


「隊長、何かが海中から浮上してきますっ!」


「よし、クレイジーバット、迎撃準備っ!」


 きっと海上まで逃げ延びればDDSFの部隊が何とかしてくれる。

 間に合えぇぇぇぇぇ!


 バシャ―――――ン


 海上に辿り着くスラムーン号。

 だが次の瞬間・・・


 グサグサグサグサグサグサグサッ!


『なぁ~~~~っとぉこれはどういう状況だぁ!!!

 究極融合合体、スラマーメイド号が串刺しになっているぅ』


 もみじ葉のように突き刺さった7本の刃。


 なっ、あれはおやっさんの・・・


 ジャキィィィィンッ!


 無惨に切り刻まれるスラマーメイド号。


「「「「「うわぁぁぁぁっ!!!!!」」」」」


 その衝撃で小さな潜水艇は吹き飛んでゆく。


 いっつつぅぅぅ、なっ・・・


 回復するリトルマーメイドのメインモニター。


 ななっ・・・


 それは無情にも核を砕かれ静かに霧散してゆくブリリアントアクアマリンスライムを映し出していた。


「スラ坊ぉぉぉ!!!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その14○


「ねぇ賢斗ぉ、だいじょぶぅ~?」


「ショックなのはわかるけど今は堪えて賢斗君、ってやっぱりダメか。

 皆、撤退するわよ、あんな怪物私達ではどうにもならないもの」


 くそぉぉぉぉ、俺の判断が遅れちまったばっかりに・・・


(マスタぁ、元気出してください)


 うん、わかってる。

 でももうスラ坊は・・・ってあれ?


 そして悪夢は再び訪れる。


 バシャ―――――ン


 メタリックゲコドンソードの本体がついに浮上。

 その姿は疎らな鱗と剥き出しの骨格、半身海に浸かった怪物の身体は徐々に筋肉まで再生され始めていた。


 ブォォォォ――――ン


『放てぇ!』


 ドカドカドカドカァァァ!


 そこへクレイジーバットの魔法士部隊が集中砲火を浴びせる。

 だが動きこそ鈍っているもののその防御力は健在、物量で押す魔法攻撃はほぼノーダメージに終わってしまう。


『まるで勝利を確信した我々をあざ笑うかのように、今ここ相模湾は大変な事態となっています。

 現在DDSFのクレイジーバットが応戦していますが明らかにその攻撃は有効打となっていません。

 そして先程超火力を放った究極融合合体スラマーメイド号は撃沈されギガントドーナツ付近まで吹き飛ばされた小さな潜水艇に動く気配は全くありません。

 いったいこれからどうなってしまうのでしょう』


(お~い、スラ坊ぉ、スラ太郎さんや~い)


 やっぱさっきのは空耳だったのか?

 いや、まだ確かにスラ坊が近くに居るような感覚が・・・

 はっ、今の状況ってまさかっ!

 もしリトルマーメイドとの融合状態が辛うじて維持されているのだとしたら・・・


 キコキコキコキコォォォ!!!


 突如鬼気迫る形相で動力ペダルを漕ぎ出す少年。

 すると完全に枯渇していたリトルマーメイドの動力ゲージが・・・ピコン

 しかし僅かに上がったゲージはまたすぐ消滅、それでも少年はその不毛な行為を止めようとはしなかった。

 そしてその姿を見ていた少女等も・・・


 コクリ、コクリ、コクリ、コクリ


 キコキコキコキコォォォ!!!


「帰ってこぉ~い、スラ太郎ぉ~!」


「さあ戻ってきなさい、スラ太郎。

 大人しく円の膝の上でナデナデされるのです」


「勇者さまの相棒といえば私の相棒も同然、張り切って参ります」


「水臭いわよ賢斗君、でもホントにこんなのでスラ君が復活するのかしら」


 とはいえ彼女達の身体はとても正直・・・


「賢斗ぉ、もう足がパンパンだよぉ、はぁはぁ、パタリ」


「だらしないですよ桜、私はまだ全然平気です、パタリ」


「勇者さまの為ならば茜は死んでもこのペダルを・・・パタリ」


「ウォーターヒール、はい、これでまた皆元気になったぁ。

 あっ、賢斗君の場合は疲れ知らずだから必要ないわよね?」


 あっ、うん、ほら、皆も待ってるぞ、スラ坊。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その15○


 変幻自在の動きを見せる遠隔剣をアクロバチックに躱す黒蝙蝠だったがその善戦も遂に・・・


『あ~~~っとクレイジーバットが海上に不時着しているぅ』


 くっ、もはやこれまでか。


 ピコピコ、ドリューン、ピコピコ、ドリューン・・・


「賢斗ぉ、ゲージが全然貯まってかないよぉ」


 この船の動力が何かに吸収されているうちはまだアイツとこの船が繋がっている証拠。

 どんだけ必要か知らんけど好きなだけ持って行け、スラ坊。


 キコキコキコキコォォォ!!!


 しかしクレイジーバットを撃破すると遠隔剣の標的は無情にも海上で沈黙するリトルマーメイドに、6本の遠隔剣が周囲を取り囲んでゆく。


 くっ、今攻撃されたら・・・


 転移が頭を過る少年。


 坊主、何故転移で逃げないっ!


 だがその瞬間相棒との繋がりが切れてしまうのではないかという不安が躊躇いを生む。


『ああっとこれはナイスキャッチ、絶体絶命だぁっ!』


 ガシィィィィンッ!!


『おおっ、あれはっ!』


「これぞ交剣知愛の極地。

 愛する者を守る時、拙者の剣は冴え渡る」


 グリュリュリュリュゥゥ~~~ン


「チッ、この技は見せたくなかったんだがな」


 ボカボカボカァ~~~ン


「でも使わなければ死んでましたよ、主に多田君が」


 ピカッ、ゴロゴロゴロゴロォォォ


 その男はそう簡単にはやらせませんよ。


 ガン、ガガァァァ~~ン


「ちょっと澪姉ぇ、こっちもボロボロだってのに無茶し過ぎじゃない?」


「ぼやかないぼやかない、あの子達には借りがあるでしょ」


『なっ、なんとぉ、六人の探索者達がナイスキャッチの大ピンチを救っているぅ!』


『きっと最後の望みを彼等に託しているんでしょう。

 この状況を打破するには先程の超火力を今もう一度、そんな風に考えてしまうのは至極当然ですから』


『しかしあれだけの大技、そう何度も放つことなどできないと赤羽さんも先程。

 しかもあれはあの巨大スライムあっての大技、この状況ではもう・・・』


『そうですね、でもそんなことを分かりきった上でも何故だか期待してしまいませんか。

 誰もが悲観するこの絶望的な状況、覆すにはもう彼しか居ないと』


 いや、そんな奇跡は万に一つも起きやしない。

 そもそもあの超火力は武蔵によるものだ。


 続く遠隔剣の猛攻を凌ぐ六人の探索者達。

 だが遂に第7の大剣が、そのひと振りの剣圧は彼等をいとも容易く吹き飛ばす。


『ああっと、やはりあの大剣の破壊力は桁違い。

 そしてもう後がありません、第7の破壊剣が真っ直ぐリトルマーメイドに向かっていったぁ!』


「なっ、中山殿も早く行ってくださいっ!

 あんなのの相手ができるのは中山殿だけです」


「まあ落ち着け梅。

 周りにこれだけ盛り上げられてアイツが黙ってるわけねぇだろ。

 この最終幕、今更俺が出て行っても折角の舞台に水を差すだけだぜ」


 さあこれからはお前の時代だ、魅せてくれ賢坊。


 重厚な破壊力がリトルマーメイドに振り下ろされる。


 ガッキィィィィィ――――――ン


 凄まじい衝撃波と共に海面には強烈な波紋が広がってゆく。


『なっ、なんとぉっ!

 オーラを纏った多田賢斗がリトルマーメイドの上で大剣を受け止めているぅ!』


 ゾワッ、フフッ、そう来なくては、ミスター多田。


 7本の遠隔剣はゆっくりと本体の下へ戻り出す。


 チラッ・・・チラッ・・・

 少年は波間に浮かぶ探索者達を一瞥二瞥。

 一方遠隔剣が戻り翼、尻尾剣を得た巨躯はゆっくり空中へ浮かび始めた。


「チッ、お前、ちっとやり過ぎだぞ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その16○


『ツーツー、多田少年、聞こえるか?

 残念だがもうアレに対抗する手段は残されていない。

 そして討伐作戦は既に終了し現在は防衛作戦に移行中、君達も速やかにその場を離れてくれ』


「ってことは隊長さん。

 別に俺がアレを倒しちゃっても問題ないっすよね」


『ん、そんなことができるわけ・・・』


「ここまでされて黙ってるとか流石にちょっと無理なんで」


『なっ、待つんだ多田少年!ガチャ』


 バチャバチャバチャバチャ・・・


 その怒りに呼応するように辺りの海面が波立つ。


 いい加減腹も膨れただろ。


 無数の青い光が海から浮かび上がり次第に小さな潜水艇に集い始める。


 戻って来い、スラ坊。


 溢れんばかりの光に包まれてゆくリトルマーメイド。


 これ以上待たせると流石の賢斗さんも泣いちまうぞ。


 ピキッ!


 ウルン、このお寝坊さんめ。


 ピキピキッ!


 ってちょっと待て、このままだと俺の体まで・・・


 ピキピキピキピキィィィィ・・・


 おいスラ坊ぉ、何のつもりだっ?!


 ピッキィィィ―――ン


 青い光が収まったそこには翼の生えた巨大アクアマリン。

 その中心にはまるで核を成すかのように鎮座するリトルマーメイド。

 また片隅には鬼の形相で逃げ惑う海パン少年が時を切り取ったように埋め込まれていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その17○


『きたぁ~~~~っ!

 人々の期待を背に究極融合合体スラマーメイド号ここにふっかぁーつっ!

 しかしその姿は以前とは似て非なるもの。

 果たして先程の超火力を今一度、メタリックゲコドンソードに叩き込むことができるのかぁ』


 ほほう、これはいったい・・・

 まるで完全にスラ坊と一体化したようなこの感覚・・・

 胸の中で皆が必至にペダルを漕いでいるのがわかる。


 魂ドッキングですよマスタァ。


 おい、かなり凄そうな技を3分クッキングみたいに言うな。


 えっ、凄そう?エヘヘ、僕もまだよく・・・


『なぁぁぁっと、そこへメタリックゲコドンソード急速接近。

 無慈悲な尻尾剣が襲い掛かったぁ!』


 ガチィィィーン

 電撃が走ると横なぎの大剣は空を切った。


「おい、ありゃ多田の奴が前に見せた・・・」


「ええ、確か鬼出電入とかいう技だったはずです」


『とてもスライムとは思えない動き。

 いったい何が起こったというのかぁ』


 いや説明はいらない。

 互いに足りない部分を補いながらも重なる部分は相乗効果を生み出すか。


『そしてスラマーメイド号ここでなんとぉ!』


 パリィ――――――――ン


『メタモルフォーゼだぁ!!!』


 ボィィィ―――ン


「なっ、あれは正しく賢子殿ぉ」


 巨大宝石が砕け散ると妖精が天高く羽ばたいてゆく。


 リトルマーメイドから送られてくる動力エネルギー。

 メタモルフォーゼによる魔力強化。

 そして・・・


 キィィィィィ―――――――ン、バサッ!


 一気に雲を突っ切ると太陽に向いその翼を広げた。


 ブォン、ブォォン・・・


 急激に輝きを増してゆく妖精。


 ブォォォォ――――ン


 これならイケる。


 そして再び光に包まれた妖精が空から舞い降りる。


「そろそろお前も眠っとけ。

 ハイパーブリリアント魔力砲ぉ!!!」


 ピカァァァァァァァァァァァァ―――――――――ッ!

次回、第二百二話 夏の終わり。

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激熱展開きちゃー
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