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第百二十八話 無欲の勝利

○コテージ 経過報告○


「賢斗は何処まで進んだのぉ~?」


 午後7時、日中の活動に区切りをつけた賢斗達はコテージで夕食タイム。


「ん、俺の方は13階層まで探索を進めたぞ。

 まっ、キーアイテムの反応は何処にも無かったけど。」


 賢斗は11階層をロケット噴射スタートを駆使して短時間クリア、その後の2時間半で12階層の探索を難なく終わらせ、その足を13階層スタート地点にまで伸ばしていた。


「そっかぁ~。」


「それで桜達の方はキーアイテムのある階層は見つかったのか?」


 午後一のミーティング後、女性陣三人には1階層から10階層までのキーアイテム探しを担当して貰っていた。


「ぜんぜ~ん。」


「はい、1階層から10階層まで桜が方角ステッキ10を使って調べましたが、偏った方角に倒れる事はありませんでした。」


 ちなみに昼のミーティングの時点では彼女達はまだ6階層から9階層へ行った事が無かったが、それは事前に賢斗が連れて行く事で対応されている。


「となるとキーアイテムの在処はもっと下の階層って事か。」


「でも賢斗君、15階層にはまた階層ボスが居るわよね。

 もしそこまでにキーアイテムの在処が判明しなかった場合は諦めちゃうの?」


「う~ん、その辺は15階層に着いてから考えます。

 現時点で答えを出すには色々材料が足りな過ぎますし。」


「まあそれもそうか。」


 つっても仮に15階層の階層ボスまで倒す必要が出て来るとなると、かなり面倒な事になりそうだな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○夜の魔物討伐○


 夕食後、少し休むとスキル共有のクールタイムも終わっている賢斗達は10階層の巨大ワーム討伐に向かった。


 ハイテンションタイムに成る事が出来れば雷鳴剣アタックが使え、かおるの弓の精度も格段に冴え渡る。

 その戦闘で彼女は一人で4体の巨大ワームを殲滅するという大活躍をやってのけた。


 一方残る三人と一匹は賢斗の雷鳴剣アタックを主体に共同で2体を撃破。

 賢斗の一撃から小太郎のオーラパンチ、円のヒップバズーカと続いた攻撃を耐え忍んだ巨大ワームだったが、雷鳴剣アタックに近しい威力を発揮した桜のマキシマムの前にその姿を霧散させる他無かった。


「賢斗さん、獲得した魔石もこれで合計7個になりました。

 全部レベル25の魔石ですし、私達の順位も少しは期待出来るのではないですか?」


「ハハ、どうかなぁ。」


 確かに1階層の狼に比べれば5倍以上の価値はあるけど、如何せん7個という数は少ない気もするし。


「ではもっとここの魔物を沢山倒す事に致しましょう。」


 確かにこのポイントに関しちゃ他の探索者との勝ち合わせは無いし、魔物の数も多いけど・・・


「円、悪いけどそれは無理よ。

 この戦闘で買った魔鉄矢は全部ダメになっちゃったし、次のハイテンションタイムはここの討伐をお休みするつもりだもの。」


「かおるちゃんは私と鍛冶スキルを取るんだもんねぇ~。」


 あっ、そっか。

 先程の先輩の大活躍にはこんな裏事情があったんだっけ。


 ある程度割り切っているマジコン順位ではあるが、ハイテンションタイムだけの討伐活動でも順調なら下の中くらいの順位は確保できるだろうと賢斗は考えていた。

 しかし倒せば倒す程赤字まっしぐらな状況はかおるにとっては死活問題。

 一方第一優先と決めたドリリンガーの入手計画の方もその雲行きはかなり怪しかったり。


 いや~なぁ~んか本戦の蓋が開いた途端、色んな問題が浮き彫りになってる感じだなぁ。

 時間も限られちまってるし、早いとこ下層探索を終わらせないと色々手遅れになりそうだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○武器メンテ○


 と下層探索を急ぐと決めた賢斗だったが、彼は今コテージのリビングにて美少女二人の監視対象となっていた。


「賢斗はそこから動いちゃダメだからねぇ~。」


「いや俺は只さっきの戦闘でまた剣が消耗しちまったから、風呂に入ってしまった先輩をこうして待っているだけだぞ。」


 ほれほれ、お前にはこの草臥れた剣が目に入らないのか?


「うっそだぁ~。」


 ちっ、先生からですらまるで信用されていないとは。

 まっ、そうは言っても到来するチャンスを見逃す様なマネは出来ませんけど。


「覗きは重罪ですよ、賢斗さん。

 どうしても女性の裸が見たい時は私にこっそりお願いすべきです。」


 えっ、そうなの?お嬢様。

 って、そんな訳ねぇか。


 にしても先輩とチョロインズの風呂へ入る順番を変えただけなのに、見事にこいつ等に今気分ウトウトマッサージを施す不自然さを生み出している。

 お手軽対策な癖にこれ程絶大な効果を発揮するとは・・・


「あ~、さっぱりした。

 桜、円、お風呂良いわよ。

 賢斗君の監視は私が代わるから。」


 相変わらず忌々しいですなぁ、この人は。


「では桜、今日も一緒に入りましょうか。」


「ほ~い。」


 そして最早監視役が先輩に切り替わったこの状況を覆す事等到底不可能に決まっている。

 ・・・ここは大人しく本来の目的を遂行するとしよう。


「先輩、お疲れのところ申し訳ありませんが、剣のメンテをまたお願いしても良いですか?

 今回は普通バージョンで全然良いですから。」


「ああ、そういえばさっき雷鳴剣アタックを2回も使ってたもんねぇ。

 よしよし、そういう真面目なお願いなら遠慮なんかしなくて大丈夫。

 ちゃんとルンルンメンテをやったげるから安心しなさい。」


「いや、でも・・・」


「折角そこまで消耗した剣の経験を活かさないのは勿体ないでしょ?

 今朝だって少し寝たらちゃんと回復出来たし、それに円じゃないけど私だって皆の役に立てるのは寧ろ嬉しい事なんだから。」


 まっ、先輩がそう言ってくれるなら後は寝るだけだろうし。


「じゃ、済みませんけどお言葉に甘えて。」


 この時の賢斗の頭には邪な感情がまるで無かった。

 それが却って彼女にとっては不幸の始まりだったのかもしれない。


 リビングの床に剣を置きルンルンメンテ作業を始めたかおる。

 元気そうに見えた彼女だったが、次第に疲労の色が濃くなっていく。

 そして30分程経過し、その作業が終わりを迎えると彼女はまた前のめりに倒れ伏すのだった。


 っと、危ない危ない。


 賢斗は倒れ込むかおるの身体を抱き留めると膝枕で寝かせてやった。


 やっぱり疲れて眠っちゃったか。


 顔をタオルで拭いてやる賢斗。


 にしてもこうして無防備な寝顔を晒されると・・・ツンツン

 いやぁ~先輩にも可愛いさしか残りませんなぁ♪


 って、あれ?

 何だろう、この素晴らしい状況は・・・


 チョロインズの二人の何時もの入浴時間を考えればあと30分は出て来ない。

 今ここには水島の姿も無く眠った美少女と二人きりという奇跡のシチュエーションが爆誕していた。


 いやぁ~、これが無欲の勝利って奴かぁ。

 今なら桜と円ちゃんの入浴音拝聴計画をいとも容易く成功させる事が出来るだろう。

 しかし膝上の先輩の寝顔というのも非常に捨てがたいものがある。

 う~ん・・・はっ!待てよ。

 俺という奴は何と恐ろしい計画を思いついてしまったのだろう。


 題して、お休み中のところ恐縮ですが先輩ガバーッと来て下さい作戦。


 この作戦の前ではどれもこれもが霞んでしまうな。


 それでは張り切って行ってみましょ~♪

 あ~ら、よっとぉ~♪


ガバッ


 賢斗がかおるを抱え起こしおんぶしてやると、寝ている彼女はその見事な肢体を全て彼に預けていた。


 うほ~、そうです、これです、いとも簡単に作戦成功っ!

 アルプスさん達もお元気そうで何よりぃ~♪

 にしても先輩が寝てる今なら思う存分堪能出来ちゃいますなぁ、ユサユサ・・・あ~堪らん。


 そして驚く事に本作戦のこのおんぶには、寝てしまった先輩を部屋までお連れするという実に周到な大義名分まで付いていらっしゃるのだ。

 万が一水島さんに見られたとしても十分言い訳可能ですし、ふっ、改めて自分の才能が怖い怖い。


 ゆっくりとした足取りでかおるの部屋へ向かう賢斗、中に入り誰も居ない部屋のベットに彼女を寝かせてやるとそこには純真無垢なあどけない寝顔。


 ふっ、にしても寝てる先輩って最高だな。


「賢斗君のバカぁ・・・」


 ドキッ・・・なっ、何だ寝言か、一々人を驚かすんじゃないっつの。

 とはいえそろそろ潮時だな。

 名残惜しいがまた近いうちに。

 アディオス、西アルプス、東アルプス。


 賢斗はそろりそろりと部屋の出口へ向かう。


 さて、時間はまだ十分ある。

 次はあの二人の入浴音拝聴計画を遂行するとしますか。

 いや~、賢斗さん大忙しっ。


ピタッ


 ノブに手を掛け、ドアを半開きにしたところで彼の足が止まった。


 二度も俺の剣のメンテでこんなに消耗して下さった先輩。

 その彼女に対し只ベッドに運んでやっただけというのはあまりに忍びないのではなかろうか?


ガチャリ


 賢斗は再び部屋の中に入った。


 俺は自分が恐ろしい。

 この心のモヤモヤを一発で解消するこんな名案が閃いてしまうとは。


 題して、有難う先輩、これは感謝の印です作戦。


 実行内容は先輩に感謝の意味を込め最後に優しくおやすみのキスをしてやるというもの。

 この作戦の恐ろしいところは只先輩の寝込みに乗じて彼女の唇を奪ってしまうだけなのにその罪悪感を見事に打ち消してしまっている点である。


 皆さんもプレゼントを貰った小さな女の子がパパのほっぺにキスをする光景を何処かのドラマで一度くらいは見た事があるだろう。

 これが何を意味するのかと言えば、愛し合う恋人同士でなくともお礼と言う名目の前では異性にキスをしても許されるという事実。


 う~ん、何と大胆かつナイスな解釈、目から鱗が落ちた気分だ。

 まっ、何にせよ、ぐっすり寝ている先輩に心の傷が出来てしまう心配も無かろう。

 では早速・・・


 賢斗の唇が少女の寝顔へゆっくりと近づいて行く。


 ムフッ、俺の感謝の気持ちを是非お受け取り下さぁ~い。

 あともうチョイ・・・いやぁ~、何か緊張しますなぁ~。


 いざっ、せっぷ・・・


ガチャリ


 あとほんの数cm、賢斗の身体は凍りついた。


「あら、多田さんここに居たんですか。」


「ブフォッ、あっ、はっ、はい。

 ぶっ、武器のメンテをお願いしたらまた先輩が消耗してしまったもんで、今ベットに寝かせてやったところでごじゃります?」


 ・・・あ~ビックリした。


「うふふっ、そうでしたか。

 リビングに剣が置きっぱなしだったものですから丁度今多田さんを探していたんですよ。」


 おおっ、今の言い訳が通用したのか。

 まあ実際ベットに寝かしつける体勢だったと言えばそう見えなくも無かったからな。

 それに加えて久しぶりの平安式カミカミによりひと笑い取れた事も一役買ってくれている様だ、うんうん。


「はい、大事な武器なんですからあんな所に置きっぱなしメッですよ。」


 水島はそう言って賢斗に剣を手渡す。


 にしてもホント最近の水島さんは心臓に悪いな。


「ああ、はい、有難う御座います。」


 とはいえこうなってしまってはもう作戦遂行どころの話ではない。

 ここは気持ちを切り替えて新生たまに雷を呼べちゃったりする剣の解析をしてみるとするか。


 つってもこちらもこちらでそう気軽に臨んで良いというモノでも無い。

 雷鳴剣アタックで消耗したこいつをルンルンメンテしてやったのはこれで二回目・・・まだその可能性は十分残されていますよぉ。


 という事で・・・コホン


 改めまして今度こそっ、やって来い来い、雷鳴け~んっ!


~~~~~~~~~~~~~~

『結構雷を呼べちゃったりする剣』

説明 :天候にかかわらず結構雷を呼ぶ事が出来る。雷属性(中)。雷耐性(大)。帯電持続(小)。電撃吸収(小)。ATK+18。

状態 :320/320

価値 :★★★★★

用途 :武器

~~~~~~~~~~~~~~


 ちっ、やっぱそう簡単に伝説の剣になる訳無いよなぁ。

 ってあれ・・・剣名は相変わらずアレだが特殊効果が2つも増えてる。


 う~ん、何かホントに雷鳴剣っぽくなって来てる気がする。

 次回、第百二十九話 真夜中の活動報告。


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― 新着の感想 ―
[一言] >う~ん、これは少しばかり、雷鳴剣への道が見えてきた気がする。 いや、このまま行けば完成形にしたところで多分『いつでも雷を呼べちゃったりするし他にも特殊効果いっぱいついてるマジすごい剣』が出…
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