最終話☆【前編(下)】あれから……夢のような曖昧な記憶の中……☆パラレルワールド。
柚葉パパが男性に声を掛ける……。
「す、すみません。ありがとうございます」
「いや……こちらこそすみません。泣かせてしまうとは……」
すると……
「……おゥ……?」
柚葉が涙に埋もれながら喋り出したが、今まで会話をしていなかった為かうまく言葉にできない……
「……コ……ゥ!……」
「ん?もしかしておれのことを知ってたりするのかな?……でも、そんな訳ないか。あはは……」
突然、男性の肩を両手で掴み告げる柚葉パパの問い掛けは必至さそのものだった。
「君は!確かコウくんだよね!?」
「え?……は、はい。そうですが……」
「良かった。少しだけでもいい!私達に君と話す時間を下さい!」
「僕と?……あ、はい。僕で良ければ……」
照れながら不思議そうに了承をしたコウ。
「しおんはきっと……君を待っていました!」
「え?僕を?ですか?……」
「二人で話していて下さい。私は少し離れたところで見守っています」
「また泣かせてしまうような……僕で大丈夫でしょうか?それでもいいなら……」
柚葉は涙が止まらないがずっとコウを見つめている……コウはその視線に戸惑い告げる。
「……うーん。そんなにも見つめられると、流石に照れくさいんだよ。あ。でもそっか。君は言葉が話せないの?」
「……ぅんなこと……あぃ……そんな……こと、なぃ……」
「うん。話せそうだね。ならゆっくりでいいからお話をしよう」
「ぅ、ん!……」
「そうだなぁ。何を話そうかなぁ……」
コウはその子のことを何も知らないようだ……そのことに柚葉はまた涙が溢れた。
「君は……とても悲しそうだ。でも、なぜだろう……嬉しそうにも見える……」
そう言ってコウが柚葉の瞳を覗き込んだ瞬間にしおんはコウに倒れ込むように抱き付いて泣きじゃくった……柚葉の頬の熱い体温をコウは服の上からでも感じた。
「お、おっと!大丈夫?……あらら。うんうん……かわいいね。大丈夫だよ……だいじょ〜ぶ!……」
コウは柚葉の背中をゆっくりとポンポンと軽く叩きながら、柚葉を宥めようとしていた。遠くから見守る柚葉パパは抑えきれない涙を眼鏡を外し拭いた。慣れないこの状況に少し困り顔のコウが微笑みながら、
「そうだな〜……君が泣き止むまでこうしていてあげるから。あとでちゃんとお話しをしてな」
「ぅん……がん……ばる……」
「ふふっ、いい子だ。百点百点」
……発言する言葉選びにちゃんとコウを感じる……
世界は違ったとしても……
『……コウは……コウだ!!……』
柚葉はそう思った。
ようやく柚葉の気持ちが落ち着いてきた頃……柚葉パパがコウを呼び出した。
「しおんは少しここで待っててな。すぐに戻ってくるから」
「ぅん……」
少し離れ柚葉が見えるところで柚葉パパとコウが二人で話しをし始めた。
「コウくん!今日はありがとうございます」
「いえいえ。そんな、僕は何も……」
「いや、実は……しおんは何年もの間ずっと、最近まで昏睡状態だったんです。ここまでの回復をお医者さんは奇跡と、そう言っていました。コウくんは高校三年生くらいかな?」
「こ、昏睡状態……僕は、よく見た目よりも歳は上に見られるのですが……よくわかりましたね。正に高三です……」
「しおんも同じ高校三年生なんです。見た目は中学生位に見えると思いますが、ずっと眠っていたのが理由だと思います……しおんが目を覚ましてからはしおんはずっと話せませんでした。今日コウくんに会ってから、私はずっと聞けなかったしおんの声を、久し振りに聞けました……それが何より本当に嬉しかったんです。他の詳しいことは……私からではなく、できれば本人から聞いて欲しいのですが……お願いです!ここでまたしおんと会ってくれませんでしょうか?……」
「……僕は構いませんが……でも、なんで僕なのでしょうか?……」
「それも本人から聞いて下さい。おそらくしおんに想う何かがあるようです。良かった!……ではよろしくお願いします!!」
「……はい。わかりました」
そう言ってコウと柚葉パパは柚葉のところへ戻り、また会う約束をして別れた。
それからは駆け足をするように柚葉は急速に回復し、直ぐに会話ができるようになり、前向きな気持ちがもたらす効果か、全身の回復のペースも早くなり、順調に自分のことは自分でできるようになり二ヶ月後には退院できるようになった。
コウが「でも、何でおれなんだ」と聞いたときに柚葉は……「そんなの決まってるわ。わたしが想い描いていた人だったからよ」とだけ柚葉は答えた。
コウは納得はしていなかったが、悪い気はしていないようだった。




