二十三☆【前編(下)】突然パパから告げられた真実……山奥の古城……。
いつにない想いの連鎖……。
「しおんの馬鹿ぁ!嫌って言ってるのに!……でもしおんはきっと悪くないぃ……」
「あー。なゆり……壊れちゃったか。ふふ。子供みたいね」
柚葉に抱き付きながら泣き喚くなゆりを純粋にかわいいと感じた柚葉がなゆりの頭を撫でる。
「なんでしおんは普通で居られるの?」
「違うよなゆり……普通でいるしかできないんだよ……」
「そんなの!そんなの辛すぎるじゃない……」
「でも……きっとしょうがないんだよ。むしろママとパパには感謝しなきゃと思ってる……わたしに友達との友情や、恋を見せてくれた。今となれば素敵過ぎて……帰るにはちょっと眩し過ぎるけどね……」
「帰らないでぇ!しおんぅ……」
「フフッ。ありがとね。なゆりの駄々っ子〜」
「だってやだもんぅ……」
「わたしの代わりに泣いてくれて。ありがと……」
「いつ?いつまで?……どうしてよぅ?……」
「三月一日って言ったでしょ?どうしてか……ちょっとその質問は酷だよ……」
「ごめーんぅ……んわーん!……」
柚葉がなゆりの頭を優しく撫で続け、遠くを見つめている……。
「わたし……ね。なゆりが大好きだった。って、変な意味じゃないわよ。みんなといる時間が大好きで、心地よくて、楽しくて、ずっと続けばいいと想うくらいに大切で……」
感情の高まりからか、行き場のない想いを解放するように次第に柚葉の声が強く大きくなってゆく……
「わくわくして……ドキドキする時もあって、こんなにも愛おしくて!コウのことが好きで!でもなゆりのことは裏切りたくなくて!!……」
「うん……」
「こんなにもこんなにも想ってもわたしはここには居れなくて!でもそれは……ママとパパが頑張ってくれたことで……わたしはもうここには……居れなくて……」
柚葉の解放されていく感情……腹の底から込めた感情が今度は声量ではなく、切実さを秘めた声色や深みに変わる……大きな声ではないが、心からの切なさを吐き出した声……それはただただ悲し過ぎて、なゆりの涙が止まった。
「しおん……」
なゆりが柚葉を強く抱き締める……。震える唇。不安定な声色で柚葉が本音を吐露する……
「わたし……ホントにみんなと一緒に居たかった。一緒に居れなくて……ごめん……」
「ううん。しおんが悪いんじゃないよ……」
柚葉は感情の高まりからか、悲しみや虚しさを止めていた関が崩壊し、涙に埋もれる。
それに釣られてなゆりもまた悲しみと涙に埋もれるしかなかった……それから二人は泣き疲れるまで泣き続けていた……。
泣いて泣いて……泣き止んだ後で……。
「あの……なゆり。コウのことなんだけど……」
「うん……」
「きっとなゆりのことだから、わたしに悪いからとかで遠慮してコウと自然消滅とか、全く進展なしとかはやめなさいよね!」
「う、うん……そんなのわかんないよ……あれ?……しおんもしかして桐宮くんに何も言わないで行くつもり?」
「それは……」
「あああ!しおんこそ自然消滅じゃん!きっとそれじゃ駄目だよ!」
「だって!もうどうしたって一緒には居れないのよ!そんなの辛すぎるし、話しても答えなんかないじゃない!」
「それでも!今まで一緒にいた桐宮くんに何も言わないで向こうの世界に行ったらその方がきっとしおん後悔すると思う!」
「わたし今あいつに会ってこのことを話したら……きっとダメだもん」
「駄目って何?」
「ほら。抱きしめたりなんかしたりしちゃう……かも?……だし……」
「それは駄目……かな……」
「ほら。ダメでしょ?結局そうなのよ。コウには黙ってなさい!」
「うぅ……それじゃぁ……」
「いいの。きっと会ってそのことを話したとしても、もう会えないのよ。そんなの辛くなるだけじゃない……好きだから会えないってのもあるのよ。きっと……」
「しおん……」
それから柚葉が今日はもう遅いから……やらなきゃいけないことが他にもあるのといって別れた……
柚葉はコウのことばかりが頭から離れなかった……
満月の明かりが眩しいくらいに柚葉の背中と淋しさを照らしていた……。




