二十三☆【前編(中)】突然パパから告げられた真実……山奥の古城……。
真実との対話の末に……。
柚葉は階段を駆け下りパパを大声で呼んだ。
「パパ!色々考えたんだけど……あの……わたしの為に……ありがと……」
無口な柚葉パパはリアクションが大きい方ではないが、明らかに柚葉の言葉に心を揺さぶられていた……。
「気にするな。当然のことをしただけだ」
親の器の大きさが柚葉の心を揺さぶり返す……パパの優しさに浸りながら続けた柚葉。
「うん……それと私は残された時間でやらなければならないことがあるの。わたしは誕生日の何時までこの世界に居れるのかわかる?」
柚葉パパは柚葉の前向きさに驚きを隠せずにいたが、柚葉の真剣さを応援したい想いが勝る。
「正直、正確にはわからないんだ。ただ、しおんが生まれた時間はしっかりと覚えている。三月一日の十七時五十分だ」
「ありがとう!なゆりと話してくるから心配しないで!」
「わかった。気をつけて行ってくるんだぞ!車で送るか?」
「大丈夫!一人で考えたいこともあるし、近くだから!」
そう言って家を出た柚葉を見送りながら柚葉パパが呟く……。
「……しおんは強いな。私も見習わなきゃな。かんな……しおんは立派に育ったようだよ……」
急いでどこかへ向かいながら柚葉がなゆりに電話をすると、直ぐになゆりが出た。
「あれ?しおん?どうしたの?」
「なゆりに伝えなきゃいけないことができたの!今どこにいるの?」
「今は部屋でゆっくりしてるけど……何かあったの?」
「……うん。ならまたあの公園に来れる?」
「行けるけど……もう夜だよ?」
「わたし……あと三日間しかなゆりに会えないの!だからとにかく来て!」
「えっ!何それ!そんなの嫌よ!」
「それはわたしもよ!何分で来れる?」
「うーん。今が十八時四十五分だから……十九時には着ける筈!」
「わかった!わたしも急ぐから!詳しい話はまた後でね!ちゃんと話すから!」
「うん……わかった……」
いつもの公園で……。
「いつもこの公園……だね」
「そうね。あの……わたしもさっき知ったんだけど……」
「うん……」
「なに?なんかなゆり変なんだけど……」
「だって……怖いんだもん」
「ん?どう言うことよ?」
「しおんがさっき言ってた理由がどんな理由であっても。しおんが直ぐに私に伝えにきてくれた……でも、きっとそんな大事なことだからこそ、どうしようもなさそうなことな気がして怖いんだもん……」
「……それは……そうね……」
いつも通り公園のブランコで話す二人、なゆりは下を向いてばかりいた……。
「……あのね、わたし。この世界には居ないんだって……」
「……」
「それでね。まだ、あと三日間は居られるからなるべく早く伝えなきゃと思ったの」
「……うん……」
まだ下を向いたまま柚葉を見ようとしないなゆり。
「なゆり。ごめん……あと、コウのことなんだけど……」
「嫌よ……」
「やっと話してくれた……」
「……」
「コウのことなんだけど……宜しくね。わたしもう ……居なくなっちゃうから……」
「そんなの嫌よ!……」
「わたし……パパから全部聞いたの。想定外過ぎでびっくりなんだけど……わたし、小二の時に大きな病気をしてて、昏睡状態になってたみたいなの。それは何となくパパから聞いていたんだけど、それを治すためにママが色々と頑張ってくれたらしいの。でも結局ダメだったみたい……それで最後の手段としてママが行ったのが、魔術での並行世界への転移だった……それも完全な転移ではなくて、せめてわたしの十八の誕生日まで……と、ママがわたしの為に作ってくれた時間だったの。それでわたしはこの世界に来た……だからわたしの誕生日の三月一日にはわたしはもう居なくなってしまうらしいの。きっと泰斗みたいにみんなから忘れられて……」
「そんなわけない!……絶対に絶対に!私は忘れないもん!!……」
既になゆりは声を殺し、耐えに耐えていた涙も耐えきれなくなり……尽きてしまう程に流しながら柚葉の言葉を聞いていた。簡単に理解するには複雑すぎる非現実的な事象を、一つ一つ噛み砕こうとしていたが、どうしようもないであろう現実が悔しくて悔しくて仕方がなかった。
その悔しさが熱に変わり液体に変わり雫となり、悲しみを叫んでいた……。




