二十二☆【後編(上)】犬なの?クマなの?……忘れないよ……。
コウの思い当たること……。
「皆にはまだちゃんと話せていなかったんだけど。わたし魔術で未来を見てしまったことがあるの。それはこの家のある一室にある本を使うんだけど……そうね。分かり易く説明すると……魔術の本があるの。その本はママの物で、泰斗と一緒に小学生の頃に興味本位で目を通したの。そして試したくなってしまった……その中にあった未来を覗く魔術でその効果を試そうとしたの。魔術は恐ろしい位に確かな効果をわたしに与えたわ。そしてそんな魔術に触れたママのことを調べたくなったの。ママはわたしが小学二年生の時に居なくなった。神隠しに合ったように急に居なくなってしまったの。だからわたしママの真相を調べたいの……」
コウがその時の状況を整理しようと柚葉に確認を始める。
「柚葉。お前のお父さんはママがいなくなった時のこと、なんて言ってたんだ?」
「うーん。お父さん基本無口だから」
「なら逆に、何も言ってなかったくらいってことか?」
「言われてみればそうね。わたしが覚えていないだけかもだけど……」
コウの中で一つ心理的な部分で思い当たることがあった。
「柚葉。お前の父さんと話したい」
「なんでよ!普通に嫌よ!」
「いや、変な意味でもふざけてる訳でもなく、真面目に考えてみてほしいんだが。お前の父さんはどちらかと言えば嘘を付けないタイプだったりしないか?何も柚葉に話さなかったのは、何か柚葉に伝えられないことを話すきっかけにならないように、閉ざすことを選んだんではないのかとおれは仮定したんだが……」
「あぁ……そうね。パパは冗談とか言う人ではなくて不器用な位に馬鹿正直な人よ」
「パパは今日の夜は戻って来るのか?」
「うん。いつも通りなら後二時間位で戻るはずよ」
「邦正、柊、楓はまだ時間大丈夫か?」
「勿論おれは大丈夫」
「楓も〜」
「私も連絡すれば大丈夫だと思う」
「無駄な時間になってしまうかもだけど。付き合ってほしい。他にあてもないだろ?それまではラモルと遊んでようぜ」
「それならオーケーよ。わかったわ」
そして数時間後……。
「パパおかえりなさい。今日は友達が来てるの」
コウが柚葉の父に会釈をすると皆もコウに合わせて会釈をした。
「お邪魔しています。しおんさんと同じ高校に通う桐宮です。今日はしおんさんのお母さんのことで少しだけ話をしたくお待ちしていました。夜分に申し訳ありません」
「これはこれはご丁寧に。急にどうしましたか?」
柚葉の父は急なこの状況に動揺を隠し切れずにいるようだ。本心を見抜こうとする鋭い眼差しをコウ達へ向けていた。
「単刀直入にお伺いします。今、しおんさんは失踪したお母さんの真意を突き止めようと、必至に手掛かりを探そうとしています。何か思い当たることがあれば些細なことでも構わないので教えて下さい!お願いします!」
コウは精一杯の気持ちを伝えようと深く頭を下げた。その状態のままコウは柚葉の父の反応を待った。
「……」
柚葉の父の反応は何かを迷っている為か無言のまま何か考え事をしているようだった。
その反応を見てコウは確信した。柚葉の父は沈黙の中で見定めようとしている。嘘の付けない柚葉の父のこの選択は、嘘を言うことにならないように沈黙を選び、柚葉に伝えていなかったことを伝えるべきタイミングが今なのかを図っているのだ……と。
コウは敢えて頭を下げたまま柚葉の父の声を待ち続けていた……。
柚葉の父はその沈黙が苦しかったのかソファーに向かい歩き始め腰を掛けた。そして柚葉のバッグに掛けられているラモルに視線を止め驚いた。
「そのぬいぐるみは……そうか……」
その声を確認しコウは顔を上げ柚葉の父の心の声を聞こうと柚葉の父の所作に意識を集中させていた。柚葉の父の表情がじわじわと明らさまに柔らかくなっていく。体の緊張を解いたのか眉毛はハの字になり、懐かしい思い出に触れているような表情をコウは見逃さなかった。コウが核心に触れ始める。
「僕の思い違いだったら謝ります。今、脳裏に描いていることは当時のしおんさんにはまだ幼く、何らかの理由で伝えることができなかったことではないでしょうか?もしかすると僕たちは安易に触れてはいけない部分に触れようとしているのかも知れません。ただ、いかなる答えであっても今のしおんさんには僕たちが居ます!しおんさんはもう一人ではありません!どんな真意であろうともしおんさんを支えて行けるように僕たちも力を尽くします!ですが今、僕が確信をしたのは、決して悪意からの沈黙ではなく、もっともっと『優しさで包んだ理由』から沈黙を選択されているのではないですか?教えて下さい!お願いします!!」
強い思いがコウの声量に表れる。より深々と頭を下げたコウ。
「私からもお願い致します!しおん……本当のことを知りたがってるんです!」
コウに続いてなゆりもコウの隣で頭を下げた。




