七☆【前編】ある日の放課後……新しい世界?……薄いピンク……。
ある日の放課後……。
全ての授業が終わり、コウが急いで教室を出る支度をしていると、泰斗が来た。
「慌ただしいな……なんかお前最近変わらないか?」
泰斗は流石に鋭い。何なんだ……ただ、まだスルーが得策だろう。
「そうか?ちょっと今日は急ぎの用事があってな。悪い、泰斗またなー!」
勢いに任せてとにかく教室を出たコウ。泰斗はそんなコウを目で追いかけ冷静に観察しているようだ。
「コウが急ぎの用事ねえ……」
コス部の部室は廊下側の窓もカーテンで隠せるような視聴覚室を使っている。変な気を起こす奴らが覗くことを想定したのだろう。
皆もういるんかな……そんなことを思いながら向かうこの気持ちも新鮮なものだ。
コス部の部室の横に滑らす戸を開けると、思いの外、静けさに支配されている空間にハッとした……
「誰もいないとこんなに静かなんだな……」
物悲しい雰囲気に囚われるコウ。不意に今までを振り返り始めていた……。
ある朝、変わり映えの無い日常に抵抗を試みた……
普段歩くことのなかった道はコウに幾つかの期待をもたらした……
そして偶然に一人の女の子に出会った。その女の子は秘密を抱えていた……
その秘密を知ることになり秘密を共有することになった……
コウの代わり映えのない日常に新しい風が吹きぬけた……
そして生まれた信頼関係からまた一人……また一人と輪が広がりつつある……
信頼に束ねられたそれからの時間は今までとは一変し充実した日々に変わっていた……
五感全てがより敏感に反応するような……風景の色彩が二十四色、三十六色、百二十色……と、より細かい色使いで彩られ見惚れてしまうような感覚だ。
それが何なのか……どこへ向かうのか……何を連れて来るのか……結局はまた期待をしている……
熱意とも言える期待がまた信用を運んで来る……そしてまた信用が信頼に変わる……
そうして点と点から始まった出会いは線になり……三人、四人と面になり……手を取り合い円になる……
その新しい世界を動かし始めた歯車のような繋がりの円……電気が体を流れるように再度ハッとするコウ……。
「新しい世界?……っはは。まさかなぁ……」
少し前までは縋るように平行世界を探していたコウ。
そう言えばここ最近はそれに縋っていただろうか?いや、断言できる。縋ってはいなかったと……。
「ってことはここは……平行世界なのか?……」
願っていた平行世界への喜びの反面……虚しさと悔しさと哀しみに似た名残り惜しさが込み上げてくる……。
「おれは今のこの世界がきっと好きだ……ここがパラレルワールドだとしたならば、ここから出たくない。そうか……そうだったのか……」
また見えたことがある。
今のこの世界を好きだと言える日常を過ごせていれば、パラレルワールドを願ったりはしない筈だということ。
自分や柊や楓に苦悩が在ったように。
そうすると……柚葉にも苦悩が在るのだろうか……
一体どうなってんだこの世の中は……
柚葉や柊程の容姿端麗な女性にも苦悩が在るのならば、全ての人に苦悩が在ってもおかしくないのではないか……
柚葉にはそんな苦悩がなければ良いのに……と、願っていると何かにギュッと取り押さえられたコウ。
「こ〜に〜ゲ〜ッッツ!」
この子の元気に何度救われているのだろう。楓が背後からギュッとして来た。
「もう。楓はそうやって……」
と、言いながらも、楓が楽しそうで嬉しそうななゆり。
「そんなに好きならに〜ではなく恋人になっちゃえば良いんじゃない?」
またもや問題発言を簡単に言い放つ暴君。
「楓はまだそういうのわからんし〜。に〜はに〜でいんじゃね?」
「あっけらかんとそう言われると、それはそれでブロークンハートだぞ。楓」
「きゃはは。すまね〜すまね〜」
「仲良しはきっと良いことよ。本当の兄妹みたいだわ」
「はいはい、ちゃっちゃと着替えるわよ!あ!今日これえんじぇるにロッカー借りて置いてくるべきよね?」
「それ良いね!行くまでも恥ずかしくないし」
「あちしそしたら何着てえんじぇるまで行くんやろ〜。ま、何でもいっかぁ」
「ちょっと!あんた何普通に居るのよ。外で着替えが終わるのを待っててもらえないかしら?あ、あんた。覗いたらわかってるわよね?」
「へーいへい」
扉を開き廊下で待つコウ。この世界がどっちかは知らんが、この世界に居れているのがまだ続きそうで何よりだ。
今回は区切りが悪く前編が短めで後編に続きます!後編の方が長めになる予定です〜!




