パラレル閑話☆【後編(下)】とある冬の日……。
十二月には……。
「ふふっ。桐宮くん達楽しそう〜私もトナカイ着たくなってきちゃった!」
「待ちなさいなゆり!冷静になるのよ!ダメよ!選んだ私が悲しくなるじゃない!」
「うん。でも、短いんだよなぁ……」
「なゆりはかわいいからそれでいいの!」
「うぅぅ……」
サンタコスの丈の短さを訴えようとしてみたものの、何を言ってもダメなことを察したなゆりが言葉を失っていると、話したいだけの絡みたがりのコウが泰斗を弄り始める。
「おい!視聴者のポイントアップを狙ったサンタ泰斗!正直に言ってくれ!……トナカイ選ばなくて失敗したって思ってるの、一から十のうちどのくらい?」
「思っとらんし!狙っとらん!」
「本当か〜?むっつり泰斗め……トナカイ!これが数の暴力ってヤツだな」
「トナ暴だね」
「きゃは!むっつりトナ暴〜!」
「ちょ!まて!楓!適当に言葉をくっつけたらダメだからね!オレ達がむっつりみたいになってない?」
「きゃはは!まちがえちった〜!」
「ほら〜。新しい言葉が生まれ過ぎてると、皆が感想欄の気になることって項目にクレーム書いちゃうかもだぞ〜!」
「きゃはは。に〜意味わからんし〜!」
「うん。そうだよね……こっちの話です」
柚葉が衣装を入れてある段ボール箱から何かを持って来た。
「マスターと純恋のもあるわよ〜」
「おお!わしのもか。わるいのぅ」
「あら、ありがとう〜!」
柚葉がサンタ帽をマスターと美羽ママに渡すと、二人も楽しそうに身に付けてくれた。その二人が少し離れたところからコウ達のことを話し始める。
「この子らといると本当に不思議じゃのぅ」
「何がですか?」
「若かった頃を色々と思い出す……忘れてはいけないものを忘れていたことを気付かされる……」
「それ、凄くわかります……」
「無我夢中に全力で好きなことへ向かう姿や眼差し……日々の素晴らしさを充分に感じれずに、思い悩んでしまう弱さも……若さが故、不器用なところがあり、その不器用さが故、持つことのできる強い意志もある……歳を重ねるといつからか薄れてゆく強さや望みや自尊心……いつからか諦めに近い消極的な思考や、否定的になってしまう頭の固さも……。そんなものをこの子らは禊いでくれる……心を覆う汚れのようなしがらみさえ洗い流してくれる……それはきっと若さだけの影響力ではない。日々を楽しもうと過ごすことの大切さをこの子らは気付かさてくれる……わしもまだまだ頑張らなきゃのぅ」
「ふふ。そうですね……私は初めての恋を思い出します。今まで思い出せなかった深い部分を……忘れていた一つ次の記憶のページを捲ってくれる……甘酸っぱさを思い出させてくれる……あの頃の自分を見ているようで……少し羨ましいです」
「そうじゃのぅ。あいつがいた頃を思い出す……」
マスターが遠い目をしながら微笑むと、美羽ママもコウ達を見守るように見ていた……。
こうしてクリスマス感を楽しみながら、食事をし、プレゼント交換をして、カードゲームを終えたコウ達。
「そろそろいい時間じゃのぅ」
「ううぅ……確かに。時間進むの早くない?お開きにするか?」
「え〜もうちょっと遊びたい〜」
楓のその言葉にコウが応える。
「わかる〜。じゃあメンズが送ってくぞ〜!」
「でも……寒いし、悪いからいいよ……」
「寒いのとか全然平気だし。もうちょいこの余韻に浸りながら帰りたいじゃん?だから柊は気にしないでいいんだって」
「う、うん。ありがと」
「いぇーい!に〜!ソリで行く??」
「そんなもんありません!雪、全然積もってないからね」
「え〜!」
「ソリがあった方が絶対に進み辛くて、帰るのに時間かかるやつだぞ!」
「うぅぅ……に〜がそこまで言うなら歩くか……」
「おう!そうと決まればちゃっちゃと皆で片付けるぞ〜!」
「ママ!私も見送りに行ってもいいかな?」
「杏はもう遅いんだからダメよ」
「え〜」
「ちぃちゃんのお家ここだもんね。もう遅いからしょうがないよ」
「うーぅ……わかった……」
「いい子いい子」
なゆりがちぃの頭を撫でる。テーブルの上の料理や飲み物を片付け、トナカイ達がトナカイを脱ぐのを最後まで嫌がり、マスターと美羽ママとちぃに見送られ、まちを歩くコウ達。
「さむっ!やっぱ十二月はさみ〜な〜……」
「ね〜。おれにはちょっと寒いくらいだけど。あー。食ったね〜」
「だな〜。ケーキも美味かったし〜」
「ありがとう。ドリアもチキンもぜーんぶ美味しかったよ!」
「そうね。ドリア以外は美味しかったわ!」
「……柚葉め!……」
「ほんとお前ら仲良いな」
「そうか?柚葉なんかいっつもこんなだぞ?」
「俺にはわかるんだよ」
「何を?」
「いや、なんでもない……」
嫉妬心からか泰斗が言葉を呑んだ。
十二月の夜はやはり寒く、着込んでいても生地を通り抜け冷気が入り込んでくる。北風の肌寒さを吹き飛ばそうとコウが楓に絡み始める。
「楓〜!走るか〜?」
「おー!でも……に〜遅いじゃん!」
「ふはははは!とうとう本気にさせてしまったようだな……あっれ〜!楓!みて!何あれ?」
「ん?どこ?ん?……」
進行方向の後ろ側に楓の意識を逸らし、コウは無言でダッシュし始めていた。
「うわっ!また出たっ!に〜ずるい!待て〜!」
「ふはははは!あの信号まで競争な!」
それを見たなゆりと柚葉が笑いながら話している。
「よく楓も毎回引っかかるわよね〜」
「でも楽しそう〜私も走ろうかな?」
「珍しいわねなゆり!わたし達も行くわよ!よーい!……スタート!」
「あ!待って!」
「ちょっと!待ってみんな!おれ無理だって!お腹痛くなる!痩せちゃうって!」
「はは。じゃあ置いて行くからな〜!」
「待って泰斗!夜道一人は怖いって〜!あ〜もう!」
自分以外が走り出したので、しょうがなく走り始める邦正に皆で笑っていると、吐く息が白く浮かんで消えた。
十二月になるといつも考えてしまう……
今年の初めに想い描いた新年の抱負はどのくらいやり遂げたのだろうか……
『今年もより笑顔が増えますように……』
そんな曖昧な抱負でも……きっと今回は言い切れる……
来年は少しハードルが高そうだな……。
「あ。邦正とポイント競ってたの忘れてた……」
第四章挿入詩 Christmas
Christmas 君の夢の中へ
住み続けられたら……聖なる夜
距離を越えてゆけ
想いを束ね君に贈ろう……輝く時間を
綺麗に飾った
光りで繋いだ
心を開いて……澄んだ空気に溶け
笑顔や高鳴り
涙の導き
真実安らぎ高揚を……君に




