二十一☆【前編】泰斗の覚悟……。
あれから三日目の校内……。
コウはずっと泰斗のことが気になっていた……
泰斗の貫こうとしている想いも感じた。人には安易に触れてはいけない部分もある。そんな部分を目の当たりにし躊躇っていた。覚悟を決め踏み込むべきだと答えを出してはいたが、踏み込むことを躊躇っていた。泰斗の只ならぬ覚悟も感じた……。
泰斗が柚葉を眠りから覚まそうとリーシャに会いに行く前にコウが策を練っていた際、コウは泰斗に発信機を付けていた。邦正にその軌跡を追ってもらい根城のおおよその位置は確認できた。だが、その軌跡はある日から全く反応が無くなっていた。発信機を壊されたかのように……発信機が存在すらしなかったかのように……反応が無くなったのは泰斗と最後に別れた次の日の夜からだ。
今日は泰斗と最後に別れてから土日の休日を挟み三日目の月曜日、泰斗は学校には来ていない。昼休みになり屋上で邦正と共に過ごすコウ。
「んくうぅぅぅー。やっぱりこの時期は屋上さみー。ホットの飲み物必須だな」
「ね。あったかいうちに飲むのか指先をあっためてから飲むか迷うよね」
「あ。それ分かる」
「なあ。泰斗は今日なんで休みなんだ?何か聞いてるか?」
そう問い掛けると予想もしなかった答えがコウを震撼させることになる。
「何?泰斗って?」
「……ん?おい……」
コウは予想外の答えに頭で状況を整理しようと必至に邦正の言葉の意味を想像する。悪い冗談を邦正が投げ掛けているようにしか思えなく、ずっと気にかけていた泰斗に関わることな分、苛立ちの言葉を投げる。
「おまえ、高校でずっとクラスが一緒だった泰斗だろ?ふざけるのもいい加減に……」
コウが話しをしている途中で邦正は呆れ顔で、
「こう、また厨二病ごっこ?急な振り過ぎてのれなかったよ。もうおれら高三だよ?」
「ばか。お前……振りでは……な、い……」
寒気に襲われ背筋がゾッとなり指先の感覚が変になる。多少しびれを感じ小刻みに震える体をそのままにして現状を整理しようとしている……一体何が起きている……そうだ!他のクラスメイトに聞こう。
「邦正わるい!調べなきゃならないことを思い出した!」
そう言って駆け足で去るコウ。呆れ顔の邦正もため息をひとつつき、残った缶ジュースを飲み干し、ゆっくりと屋上を後にした。
コウが階段を駆け下りると同じクラスの女子二人に偶然にも遭遇した。また同じような答えが来ることを想像し、恐る恐るコウが問い掛ける。
「お、おい。突然で悪いが同じクラスの泰斗を探してるんだが見なかったか?」
「え?何?たいとって?物?ねえ。あのは分かる?」
「いや、私も聞いたことないけど。桐宮くんどうしたの?」
「木之下泰斗だよ。同じクラスメイトなんだからわかるだろ?」
「え?そんな人うちのクラスに居たっけ?」
「わたしも知らないわ」
「ごめん。桐宮くん。わたし達今少し急いでて。またね!」
茫然と立ち尽くすコウ……一体、どうなっている……おれはまた別の世界にでも来てしまったのか?……だとしたらいつからだ?それとも泰斗が別の世界から来ていたのか?……まさか!
駆け足で階段を下り、下駄箱の中の靴を出し履き替えようとしたその時。
「あんたそんなに急いでどうかしたの?」
柚葉の声だった。制服姿の柚葉がそこには立っていた。柚葉は今日から学園生活に戻りいつも通りに授業を受け、昼休みに職員室に呼ばれていたらしい。その帰りにばったりと会った二人。
「泰斗が危ないんだ。助けに行く!」
「泰斗に何かあったの?」
「ああ……ん!?」
コウは違和感に気付きとっさに柚葉の肩を揺すり急かしながら尋ねる。
「おい!柚葉は泰斗を知ってるのか?」
「ちょっ、いたいわよ!」
「あ、悪い……」
反射的に肩をおさえながら柚葉が鋭い眼差しでコウを睨んだ。
「頭でも強く打った?泰斗は私の幼馴染みよ。知ってるに決まってるじゃない」
「一体、どうなってるんだ……」
コウは下駄箱に被さるように寄り掛かり、一旦冷静さを取り戻そうとする。邦正のことやクラスメイトの反応を柚葉に伝えると、柚葉がおもむろに喋り出した。
「泰斗を捜すって言ったってどこに行くつもりだったのよ?」
「あてはないんだが……」
「見当なしに捜すのも良くないわ。わたし……気になってたんだけど三日前から青白いオーラみたいにわたしの体の周りを包んでいるものが見えるの」
「なんだそれ?」
「きっとわたしにしか見えていないと思うんだけど……どう?わたしの周りに何か見える?」
「いや。何も」
「やっぱり……こんなのが見えていたら皆驚く筈だもの」
「どうして柚葉にだけ見えるんだ?」
「それはわたしにもわからないわ」
柚葉がコウを、正確にはコウの周囲を舐め回すように見ている。その視線に気づくコウ。
「どうかしたか?」
柚葉は少し躊躇し、そして告げる……。
「実はコウ。そのオーラ。あなたの周りにもあるの」




