二十☆【後編(中)】ねむりひめ……。
その頃病室では……。
柚葉の見舞いに来ている一同、柚葉をコウとなゆりと楓と邦正で囲い話している。
「どうやら泰斗曰くそういうことのようだ。柚葉聞いてるか?……眠ってると静かでかわいいんだけどな……」
「だめっ!に〜は私のじゃんっ!」
「嫉妬はやっ!おう。楓、大丈夫だ。うん。だいじょ〜ぶ!」
楓の肩をポンポンと叩きながら全く説得力の無い大丈夫を楓に送るコウ。やはり楓はぷんぷんしたままだ。なゆりが妙にコウと距離を取り離れて座っていることに気付き、密かに観察を続ける邦正。
「大丈夫。柚葉はもう少しで目を覚ます。魔術が原因なら話は早い。そのうちちゃんと柚葉は必ず起きる」
「うん……」
コウの励ましになゆりが重い口調で頷いた。
「ったく。なんで柚葉ばっかり魔術を受けちまうのかな」
「だよね。おれだったら一ヶ月位は寝てても持ちそうだけど」
「だなぁ。起きたら体のライン全てがシャープになってそうだな」
「にー酷い。きゃはは」
急に思い出したのかコウがまじモードを切り替え邦正を呼ぶ。
「あ!邦正!ちょっと付き合ってくれ!」
「いいけど?急にどうしたの?どこ行くの?」
「待ってても始まらなそうだからな。ちょい調べもの。楓!柊と柚葉をみててな。何かあったら報告頼む!」
「わかったー!」
約二時間が経過し、なゆりはタブレットに向かい文章を入力している。楓はしおんを穴が空きそうな程に直視し続けていてる。
「ねぇ、なゆね〜。しおんに落書きしていいかな?」
「え?私に聞かないで……」
「でもに〜はきっと喜ぶよ?」
「桐宮くんならそうかもだけど」
「だよね。ひゃっひゃっひゃ、あ。これ水性ペンだからおもろくないね」
「あはは……」
なゆりが困り顔で苦笑し、楓が油性ペンを探し始めたその時。
「う、うーん……」
「っ!楓見て!しおんが!」
「おおおー!めっざめろ〜!しおんっ!」
柚葉のまぶたや眉間の筋肉が引きつるように動く。その後に長い眠りから目覚めようと瞼を開こうとするが眩しさで何も見えないようだ。
「んんっ……眩しい……真っ暗で何も見えない。う〜ん……なんか背中いたーい。あれ?どうしたの?なゆりと楓?ここは?……病院?……」
長い眠りから目覚めた柚葉。辺りを見渡し状況を整理しているようだ。
「しおん!そうよ!ここは病院。楠祭終わってしおん急に倒れたの。背中痛いのは多分しおんずっと寝てたからだよ。心配したんだからね。もう……でも良かった」
なゆりは不安から解放された安堵からか目を潤ませている。心配していた気持ちからか、しおんの手を強く握りながら話しているなゆり。
「ちょっ、なんであんたはまた泣いてるのよ。もう。ホントにあんたは……」
そう言いながら少しだけ嬉しそうな柚葉。なゆりの髪を触り宥めようとするがなゆりの感情がより強まり涙が止まらなくなる。
「だって四日も起きなかったんだよ!心配するに決まってるじゃん!」
「四日って……あー。どうりで。なんか頭も重いし、お腹も減ったし」
「まだ無理しちゃ駄目よ!ほら、横になって安静にして。休んでた方がいいよ」
「う、うん。わかったわよ」
「私、桐宮くんに伝えてくる!楓!しおんのことお願いね!」
「お〜!しおんはまかせろ〜!」
ほっとして嬉しそうに携帯の使えるエリアまで急ぐなゆり。その頃邦正とコウはネットで魔術について調べようとしていた。
「泰斗と使い魔が仲間だった……泰斗は記憶を喪失している時期がある……記憶の無い時期に泰斗と使い魔が仲間だった……いや、それか使い魔の方が一枚上手で道化を演じ、記憶のない泰斗に偽りの情報を植え付けている……?そもそも泰斗の記憶を消し操っている……?魔術で記憶を消す方法……いや、魔術ではない何かで記憶を消す方法……」
危険に置かれている泰斗のことが頭から離れないが魔術を調べる程に魔術の気味の悪い部分に触れることになる。
「ったく……何なんだよ魔術って訳わからんし……って、ぬおぉぉっ!何だよ急な着信ってびびるよね。お!邦正!柊からだ!」
そんな神経が研ぎ澄まされ敏感になっているところで驚きながら着信に気付いたコウ。
「お!ってことは!」
以後はアイコンタクトで会話する邦正とコウ。
「もしもし?桐宮くん!しおんが起きたの!」
「っしゃぁ!やっと起きたか!あ、具合はどうだ?記憶は?」
「うん!大丈夫そう。記憶が消えてたりもしないみたい!」
コウの邦正に向ける目力がパない。電話で話しながらのコウのアイコンタクトは会話を聞きながらな分必要以上に見開いていて、喜びも後押ししていてアピールっぷりが本当に酷い。
「こう。開き過ぎててウケる」
「おい邦正!って、そうか。泰斗はもうそっちにいるのか?」
「いや、まだ来てないわ」
「そうか。泰斗は携帯を無くしたのか今は持ってないからな……おれらも直ぐそっちに行く!」
「うん。わかった!」
なゆりは不安を少しづつ解消してきているようで明るい声をしていた。電話を終え急ぎ足でしおんの部屋に着いたなゆり。
「ただいま!しおん!具合はどう?」
「大丈夫よ。皆のおかげかな?わたし……寝ている間に夢を見てた……」
「ん?夢?どんな夢?」
「笑わないでね。わたしの小さな頃の夢。わたしはいつもぬいぐるみを肌身離さずに過ごしていたの。幼いわたしはそのぬいぐるみが大のお気に入りだった。眠る時もお出かけする時もいつも一緒だった。でもそのぬいぐるみはある日起きた時に無くなっていたの……その日からママが帰ってこなくなった。わたしはずっと何度も何度も探したわ。それでも見つからなかった……」
「それは悲しい夢だわ……」
柚葉は真剣な面持ちでその夢を思い返していた……。
「……おん〜……しおん〜……しおんってば〜!」
「あ。楓ごめん。どうしたの?」
「さっきペンでしおんに落書きをしようとしたけど水性ペンだったからやめて油性ペンを探してたから、ただ呼んだだけ。だってしおんずっと暗い顔をしてるから〜」
楓なりに励まそうとしているようだ。
「あはは。油性ペンってなかなかないもんね。って見つからなくて良かったわ!わたしはちょっと休めば大丈夫よ」
病室のドアをノックする音が聞こえた。「どうぞ〜」と楓が答えるとドアが開き泰斗が入ってきた。幼馴染みの泰斗を見た柚葉は少し明るさを取り戻した表情で、
「どうしたの?わたしがいないと寂しくてしょうがなかった?」
泰斗は冗談混じりに答える。
「はは。そうだな。それが四日目にやっと起きた奴が言う言葉か?しかも今回俺はかなりの活躍だったんだが?」
「あら〜珍しいこともあるものね〜」
「お前、信じてないだろ?」
「ふふ。冗談よ。ありがと」
「お、おう……まぁ、幼馴染だから当然だろ……」




