二十☆【後編(上)】ねむりひめ……。
むりですぅぅぅ……。
「ん?リーシャどうした?そんな大声で。びっくりするだろ?」
「い、いえ、お気になさらないで続けて下さい。私の……そうですわね。趣味みたいなものです」
「そうか。まあいい」
リーシャは胸を撫で下ろし呼吸を整える。いつもこんなだとリーシャは日々休めた気がしないだろう。もう期待しかないリーシャが泰斗の答えを待っている。
「うーん。恋愛……じゃなくて……」
「おいぃぃぃー!!」
リーシャはつこっみ担当ではなかったはずだがかなりの勢いで突っ込んだ。なぜかはぁはぁと肩で息をしているリーシャ。
「ん?どうしたリーシャ?大声で。何キロか走った後みたいな呼吸になってるぞ」
「それはそうですわ!はぁ。やっと手に入れられると思った矢先のことですもの。もう。焦らさないで下さい……」
「おう。そんなつもりは無かったんだがな」
再度リーシャは胸を撫で下ろし呼吸を整える。
「うーん。やっぱり……恋愛……」
「んぬおおっー!キターっ!!」
「……相談をしたいんだが。いいか?」
「へ?……」
リーシャは頭の中でワードを繋げるが、納得がいかないらしく泰斗の口から再度発せられる言葉を待った。
「恋愛相談をしたいんだが。いいか?」
氷のように動かなくなってしまうリーシャ。現実逃避を決め込もうとしている。
「気になる女がいるんだ。そいつは俺の気持ちにおそらく気付いていない。そいつはいつも俺の側にいてくれるんだ」
氷のように冷たく暗い声でリーシャが答える。床に倒れ込み世界の終わりを全身で表現するリーシャ。現実逃避からもうほぼ何も耳に入って来ていない程だ。
「そ、そうですか……」
「そいつは人間よりも小さな体で、いつもおどけて俺に安らぎを届けてくれる。不器用だが純粋に俺に仕えてくれるんだ」
「……ぇ、え?……」
聞き間違えていないかを頭の中で何度も何度もリピートするリーシャ。乙女の祈りを形にしたような可憐で消えてしまいそうな程に儚い眼差しで泰斗を見つめている。
「あの……えっと……うそ?……私、ですか?……」
「そうだ」
気絶寸前のリーシャが脱力し、床に座り込む。今度は現実を受け入れられずに放心状態になる。
「恋愛?……気になる女?……私??……」
「そうだ。可愛くて仕方ない」
「……んわあぁぁん!ルシーしゃまぁぁぁ〜!」
急に泣き出してしまうリーシャ。感情が爆発してしまったのか会話ができる状態ではない。
「ふふ。まるで子供だな……」
「……だってぇぇぇ!……だってえええ〜!!……」
「わかったから落ち着いてくれ」
数分後……。
「んっだって!いっつもルシーしゃまはわたしのことは眼中に無いみたいでしたから!」
「最初はな。次第に可愛く見えてきてたんだ」
「んわ〜ん。るしーしゃまのつんでれずるいですぅぅ。いっしょうづいていぎますぅぅぅ……」
「ふふ。わかったからとりあえず泣き止んでくれ」
「む、むぅ。むりですぅぅぅ……」
数十分後……。
「あ、あのう……」
「どうした?」
「私。これから一体何をしたらいいのでしょう……」
「いつも通りでいい」
「そう言われましても……私たち付き合っているわけですし……」
「ちょっと待て。付き合ったつもりは無い」
「ずーん……」
わかりやすくテンション激下がりなリーシャ。また瞳がぷるぷると波打っている。
「話は変わるが……俺の記憶が消えたのはあの女に関わっている気がするんだが……お前はどう考える?」
「えー!私の魔術がまた失敗をしたとルシー様は考えているのですか?」
「違う。お前のことは信用していると言っているだろう。お前の魔術のミスではない。俺があの女となんらかの接点や関係があった為に、あの女が眠ったことで影響を受けているのかも知れないという話だ」
腕を組み顎に人差し指を当て首を傾げながら頭をフル回転させているリーシャ。
「うーん。確かにリーシャはそこまでは考えておりませんでした……」
「実は……記憶をなくす前に感覚を共有する術をあの女に掛けていたんだ」
「えええっ!?」
「そこにリーシャが術を掛けたようだ。ただ俺には術に対しての耐性があった為か眠るまでではなかったようだ」
「なぜ!なぜそれを私に伝えておいてくれなかったのですか!あの女の魔術の解除は私にしかできない筈。一刻も早く術を解かないと……」
「感覚共有なんてお前が嫉妬することは目に見えているだろう?あの女を見張るには一番の方法だからな」
「それは確かにですが……」
「ただ、再度術を受ける際は正直体がこたえそうだ」
「あああぁ、申し訳ありませんっ!勿論です!もうしません!!」
「頼んだぞ」




