二十☆【中編(上)】ねむりひめ……。
次の日……。
リーシャが言っていた女を眠らせたと言う言葉が気になってはいたが、泰斗は記憶がなくなってしまったと伝えたことをリーシャが変に疑いを抱かぬよう、警戒をさせぬように、根城の位置を知るまでは本題には触れずにいた。
リーシャに感づかれてしまえば根城の在処もその他の手掛かりや情報も聞き出せなくなってしまうことを見据え、リーシャの信用を得るための時間を費やしたのだ。リーシャが誰を眠らせたのか確認する際も一芝居打った。
「女を眠らせたと言っていたが、間違えて別の女を眠らせたりはしていないだろうな?」
「この私があのにっくき女を間違うわけがありません!それにちゃんと先程ルシー様とあほあほな奴と一緒に女も病院にいたではないですか」
「お前を十分に信用している。だが、それが本当に得策だったと言い切れるのか?あの女が眠っていれば何もことを起こせないとも言えまい。協力者がいる可能性だってある」
「それは……ルシー様の仰る通りですぅ……」
「見張る必要はまだある。お前はここで待っていろ」
「またまたまたー!どうして直ぐにリーシャを置いていこうとするのですか?」
「大丈夫だ。ここぞという時にはお前も連れて行く」
「ぷー。そうやってルシー様は直ぐツンデレしてー。あんまり放置が長いとまたお迎えに行きますからねーっ!」
一方病院では……。
コウがノックをして病室に入ると心配そうになゆりがしおんの側で看病をしていた。
「おかえりなさい。桐宮くん暗い顔してるけど、どうかしたの?あれ?泰斗くんは?」
「色々あってな、泰斗で遊んでたつもりが……泰斗に遊ばれた。そして最後には一方的に去って行かれた……」
「きっと何か予定があったんだよ」
「だといいがな……柊のフォローはいつもシルクの優しさだな」
「そんなことないよ。こっちの方こそさっきはごめんなさい。取り乱しちゃって……」
「柊。疲れてるんじゃないか?ずっとまともに寝てないんだろ?」
「うん。しおんのことがずっと気になってて……」
「今日は楓と理事長がみてくれるらしいからゆっくり休まなきゃだな。そろそろここを出よう。途中まで一緒に帰らないか?」
「うん……」
名残惜しそうにしおんを見つめているなゆり。
「しおん。またね」
「こう見てると今にも起きそうなんだけどな」
「そうだね。三日も寝てるのが嘘みたい。しおん可愛い」
「そうだな。ツンモードになると怖いけどな」
「ふふっ」
なゆりの笑顔が戻り一安心するコウ。
病院を出ると細い坂道がある、その坂道はソメイヨシノが連なり毎年春になると桜の花びらが綺麗に舞い散り、道路には花びらの絨毯が敷かれる。その坂の途中にあるベンチに座る二人。十一月の肌寒い乾いた風が二人の距離を近づける。コウからなゆりに話し掛けた。
「もう少しだけ話さないか?」
「うん……」
「学園祭、楽しかったな」
「大成功だったって理事長とマスターが言ってた」
「だよな。もう理事長には温泉旅行で手を打とうと伝えてある。だって。おれ達かなり貢献してただろ?」
「うん。今までで一番の忙しさを体験したよ。でもその忙しさもみんなで一緒にやってたからか楽しかった……この話、しおんも一緒にしたかったな……」
「そうだな……」
なゆりが俯き鼻をすする音が聞こえてくる。なゆりの肩がその音とともに上下する。コウがそれに気付きなゆりを励まそうとする。
「柊。大丈夫だ。おれがなんとかする」
「うん……ひっ、くっ……」
顔を上げたなゆりの瞳から溢れてしまった涙が頬を伝い弧を描いた。大きな瞳は吸いこまれてしまう程に美しく輝き揺れている。コウは無意識に動き出していた。
今にも壊れてしまいそうななゆりの表情がコウのその衝動に繋がったのだろう。
コウの両腕の中でなゆりは驚きの表情に変わる……
何秒か経ち、なゆりが思い出したかのようにハッとする。そしてコウを両腕で突き放す。
「んっ、だめ!」
「……お、おう。そうだよな。悪い……」
そう言ってなゆりは走りながら坂道を下って行った。コウは追い掛けることはできずにその後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
一人になると急に静けさに包まれる。冬の到来を告げる木枯らしが乾いた木の葉を拭き落とす。吹き飛ばされた枯葉が風の道筋を追い掛けてゆく。淋しげに「今日は冷えるな……」と呟くコウに小さな人影が飛びついて来た。
「に〜!ぎゅ〜ぅ。ふ〜。寒いねっ!」
「おう……楓か。そんな格好で風邪引くぞ」
楓は短いスカートにセーターは着ていたがアウターはなしの薄着だった。
「多分大丈夫〜。走ればあったかくなるから走ってきた!きゃはは!」
「はは。楓はいっつも元気だな」
「に〜は帰るの?」
「柚葉のことで調べたいことがあってな。今日は帰らせてもらう」
「そっか。しおんまだ起きないもんね。こっちは任せて!んじゃっ!」
「おう!頼んだぞ!」
天真爛漫な楓に笑顔を取り戻したコウ。
「さてと。何から調べるかな。今回ばっかりは何もわからんな……」
今回は報告になります!
迷いに迷った末に二十☆から新章に突入させて頂きました。後付けですみません!
第四章 〜【冬コス】異世界からの訪問者編
軽いノリでは進めないながれに気づき、〜編のワードを変更しました!
プロット通りには進まないものですね。。。
物語には『マモノ』が住んでいるようです。w
ではでは、これからも宜しくです!!




