二十☆【前編(下)】ねむりひめ……。
トキメキがやばいぃぃ!……。
泰斗に追いつき、失意からか背中を丸め脱力をしながらぱたぱたと先導するリーシャ。静かに先導し続け不満げな表情で零す。
「度重なる失態をお許しください……面白さが皆無ですが……根城です」
「御苦労。面白さなど求めていない」
「そこはリーシャの趣味と申しますか……楽しみと申しますか……ぷう〜」
ふくれっ面のリーシャ。先程の根城のくだりのテンションの十分の一程度のリーシャが不満げに城に入り、やはりぶつぶつと不満を零している。寝室に入りベッドに横になるリーシャ。両手で頬杖をついて唇を尖らせている。
「ルシー様ったらこ〜んなに可愛いサキュバスのリーシャがこ〜なにもアピールしているのにな〜んにもしないなんて。まさかの草食系男子なんですか〜?魔界も少子化になってしまいますわ……」
泰斗も遅れて寝室に入りベッドに横になった。泰斗は柚葉のことで寝ずに手掛かりを探していたので睡魔に襲われる。そして多少まったりな時間が流れた。
三十分程過ぎた頃、リーシャは悪い顔をしながら口元はゆるく何かを企んでいる……ああぁ!リーシャいいことを思いついてしまいましたぁ!覚えてないということはさり気な〜くいつものことのようにルシー様に言ってみたら、ルシー様とあんなこともこんなこともさらっとできてしまうのでは……おおおっ!落ち着け!……今度こそ……待てリーシャっ!冷静になるんだリーシャ。今宵こそルシー様との一線を!一線を越えるのだぁ!!
またまたリーシャの視線は後ろめたさからかうまく見れずに逸れてしまっている。
「る、ルシー様。このまま寝てしまうのはあまりよろしくないかと。そろそろ寝る支度をしましょう。歯磨きはされますか?」
泰斗が眠そうに応える。
「んっ……そうだな」
歯磨きや着替え等、簡単に寝る支度を終えた泰斗。
「ルシー様。いつも通り歯を磨いた後はベッドに横になり照明を落としましょう」
「おう」
疑いもなく泰斗はベッドに横になった。
「ルシー様の腕まくらはいつも快適なんですよ」
「そうか?それは良かった」
心の声がだだ漏れになるリーシャ。おおおーっ!!今のは百点じゃないのか私っー!うひゃー!これは初の腕まくらなのか?ついに!ついにこの時が来てしまうのかぁ?!
仕草や表情に出過ぎている。緊張しているのか動きがカチコチになってきている。
「よし。寝るか」
「ハ、はい……」
呼吸を整えようと深呼吸をしようとしてしているリーシャ。だが瞳孔が開いているし、どもっている部分は声が上ずっている。んきゃー!トキメキがやばいぃ!トキメキがーぁ!キュン死ぬぅぅーぅ!!その想いも虚しく、リーシャに背中を向け横になる泰斗……まー!ま、ましゃか……ルシー様どんだけ純心なんですか!ああぁぁ。でも……それも悪くない……いや、むしろイイ!トキメキがやばいぃぃ!!
ほぼ全身で期待を表してしまっているリーシャ。泰斗は全くそれを見ていない。強い期待と極度の緊張からか疲労が積もってきているリーシャ。相変わらず呼吸が荒い。ベッドの上を這い泰斗に近づくリーシャが勝負に出る。
「ルシー様。ではいつものおやすみのキスを……」
そう言って目を閉じいつも以上に返事に耳を傾けその時を待つリーシャ。泰斗が返事をする。
「そうだな……」
期待と緊張に変な汗をダラダラかいているリーシャ。そうだなキターッ!!
一秒が一分程に長く感じる二十秒程を恋する乙女のように待ち続けたリーシャは、思いの外泰斗の行動が遅いことにやっと気がつく。目を閉じ耳を澄ましていたが何か動いた気配も感じない。うーん……ルシー様ったらまさか私を焦らしているのかしら……女の子の方から催促をするのなんて恥ずかしくてしょうがないんですからね。うーん……でも、待てない……もう本当に待てない……。
止むをえなくゆっくりと片目から開き様子を伺うリーシャ。
泰斗は背中を向けたまま微動だにしない。
リーシャはぱたぱたと空を飛び泰斗の顔色を覗き込んだ……
「っておいぃー!!!寝とるんかいぃー!!!」
そのリーシャの突っ込みを入れたタイミングで泰斗は寝言で再度「そうだな……」と零した。
恥ずかしさと怒りで一瞬邪気を纏い拳を握り締めプルプルしているリーシャだが、泰斗の寝顔を見ていたら心を落ち着かせたようで、表情が緩み、その寝顔の前にちょこんと猫のように丸くなり直ぐに就寝した。




