十八☆【後編(下)】泰斗の記憶……文化祭準備……。
揃えた武器……。
そんなこんなで部室に向かい、途中にある100円ショップに寄り、主に女子が目当ての物を選び終え、行き着いた校舎を見上げコウが零した言葉。
「これ。柚葉の力か?コス部のが一番目立ってるだろう?」
コス部ののぼりが他ののぼりと比べ華やかで一番上にバルーンまであり一際目立っていた。
「当然じゃない。わたしよ?」
校舎の入り口には楠高祭というもじがでかでかと書いてあり、紅白で飾られた左右の四角柱に支えられている。
他にも色々な店が出るようで正門から校舎を向かい見上げるとクラス名や部活名と店の名前がこれでもかと言うほどに主張している。コス部ののぼりは業者に発注をかけたのではないかと思う程に一際目を引く出来上がりになっていた。
「さぁ、ちゃっちゃと部室に向かい作業を始めるわよ」
「柚葉〜なんか自信ありそうだけだど、得策でもあるのか?」
「そうね。これだけ『武器』が揃ってるんだもの。使わない手はないでしょ?」
「武器?なんか頼もしいな」
「ふふっ」
柚葉が何か企んでいそうな笑みを浮かべた。そんなこんなで部室に着いた一同。
「さて、始めるわよ!」
「なにっ!なにをっ!」
柚葉の強引な運びにもれなく反応をするビビりなコウ。
「装飾に決まってるじゃない。ただの装飾じゃないけどね」
そう言って柚葉は筒状になっている紙を広げ始めた。
「これがここで……コレがここか……」
コウはその広げられていく用紙に釘付けになっていたが急に視界に入ってきた見覚えのある姿にテンションが上がる。
「なんだこれっ!って柊じゃん!」
「そうよ。これ以上お客を寄せられるポスターは無いでしょう?」
柚葉が広げ始めたのは等身大程のなゆりのケモ耳コス姿のポスターだ。少し大きめな文字でコス部とえんじぇるのことが書かれている。中には小さなサイズもあり、貼る場所を考慮し、サイズを考えているようだ。
「え?私なの?そんなぁ……」
困り顔になり照れているなゆり。逃げも隠れもできないのだが机の下に隠れようとしているようだ。
「何が楽しいってこのなゆりをいじって恥ずかしがるとこを見るのがたまらないわ」
「もう。しおんの意地悪……」
「ほんっとSだよな。柚葉」
「あら?そんなあなたには見せてあげないにしようかしら。他にも色々とあるのよね〜」
「なになに?何あるの?」
「そうね。なゆりのあんな写真やこんな写真よ」
「ちょっと!しおん!私がチェックしてないのは駄目って言ったのに……もう……」
「ううぅっ。見たすぎる……」
「これも売り上げのためよ」
恐るべし柚葉マーケティング。
「こーう!これみてみ?この柚葉ちゃんヤバくない?」
「ちょっとっ!見られるのは分かっていたことだけど、あなた達二人のその感じはなんかやだわ!」
邦正の今日一番の振りにコウが本気で釣られる。
「ぬおぉっ!いい!柚葉がデレてるやつじゃん!撮影者これどう撮ったんだよ!おれ、これ持って帰っていい?」
「ダメよ!!なゆりのとかみんなのを校舎や部室前に貼るのよ。下手なキャッチフレーズで宣伝するポスターより、素材を活かしたのよ。これ以上のアイキャッチ効果は無いはずだし他には真似できないはずだわ」
「確かに。これ、普通に持って帰る奴いそう」
「そんなにわかファン行為はわたしが許さないわ。そこはオタにホームページ上で注意書きを入れてもらおうかしら。『宣伝の為のポスターはお願いだから剥がさないでね♡なゆり』とか書いてもらえばファンはきっと剥がせなくなるわ」
「あいあいさぁーっ!!」
「……なんか妙に従順ね」
「な。オタで普通に反応してるし。多分最近のこのメンツでの自分の役割みたいなのが見えて来たのかもな」
多くの荷物を車に積み終えやっと到着したマスターから連絡が来たので、その積荷を降ろしに向かうメンズ。楓が一緒に行きたいと言ったが、ポスター貼りやらなきゃダメよと柚葉が阻止をした。
荷物を降ろし、ポスター貼りを終えた後に足りないものがないか明日を想定し、コスを合わせたりコーヒーを淹れたりリハーサルのようなことをしていた。マスターは満足そうに頷いていた。
毎度のことだがなゆりが中々衣装を着れずにいた。衣装に袖を通した後もなゆりはカーテンや机の陰にさり気なく隠れようとしているようだった。そんななゆりの引っ込み思案なところは逆に魅力的だった。
楓はまた着替え中にほぼ裸で走り回っていたらしい。ちぃも新たな衣装で相変わらずお人形さんのように可愛いく、ブレずにミッシェルを離さない。そんな相変わらずな皆にコウは嬉しさを感じていた。
心なしか泰斗がいるのも次第に自然になってきた。四人で話している時程、あの頃のようで懐かしい。
美羽ママがホットケーキを焼いてくれたのをみんなで味見をしたり……
その後も明日の本番が待ち遠しいからか、前夜祭のようなこの時間を遅くまで皆で過ごした。
楽しい時間は走り去り……
帰り道で期待と微かな緊張を抱えた私達の願いは……
藍色の夜空に浮かび上がり、輝く星や月に向かってその手をすっと伸ばしていた……。




