十七☆【後編(上)】白でも黒でもない色……たーっまやー!……。
コウ……。
それからしばらくが経ったが、コウは未だに沈黙を続けていた……
合宿を終え約一ヶ月が経った頃……邦正が一度コウの家へ行ったが話を出来る状態ではなく「悪い……帰ってくれ」とコウに追い返された。
楓自信が現状を辛抱出来ずに、どうにかしていつものコウを取り戻したく、邦正と手を組みコウの家に行き、コウに「楓を一人にしたらダメじゃん!!」と言い泣きじゃくった。
そのただならぬ叫びは以前の楓とのやり取りを思い出させた。
そののち「すまない……おれが悪かった。大事なものを次々に、また一つ失うところだった……」と、やっと我に帰るコウ。その夜にコウがグループSNSで皆に文章を送った。
その言葉は「すまない。皆に会いたいんだ」だった。その後になゆりが「待っていたわ」と送り、柚葉は「もう。遅いじゃない!」と返した。邦正は簡単に「おかえり〜」で、それから楓が「に〜!明日花火だし〜!」とのことで、いつも通りあーだのこーだのしょうもない会話を終え、久し振りに皆で集まることになった。
「楓ー!今度はあっち行こうぜ!」
「お〜!まて!こ〜に〜!」
「これ。毎度の恒例になってるわね」
「ふふっ。そうだね。でも楽しそうだがらいいんじゃないかな?」
コウと楓がはしゃぐのを見た柚葉がふと零し、なゆりがそれに応えた。呆れ顔の柚葉と後ろに手を回し片腕を掴み歩くなゆり。まだ今日は静かだが邦正も一緒だ。
「楓ー!浴衣着てそんなに走ったら足痛くなるわよー!」
「もう足の指に貼ってあるから大丈夫〜!」
「ふっ……さすがね」
「ふふふっ」
楓だけではなくなゆりと柚葉も浴衣姿で、コウと邦正は甚平姿で出店がある花火大会の会場へ向かう。
会場に着くと直ぐに予想通りに二人は我慢出来ずに走り出した。
金魚すくい、ヨーヨー釣り、射的、かたぬき、お好み焼き、焼きそば、りんご飴、綿菓子、おめん……他にも色々な屋台があり、会場近くの個人商店は入り口付近で本日のみの特設ブースを作り売り子をしている。
串焼き、お酒やジュースやお茶、炒め物、焼き物が比較的に安い値段で売り出されていて、そんなところもこの花火大会を充分に盛り上げている。
子供達ははしゃぎ回り、発電機の騒がしい音と、わいわいがやがやと騒々しいくらいだが、これくらいでないとこのイベント感は満喫できないだろう。
約一時間前の皆と待ち合わせた時のこと……。
待ち合わせ場所で皆と顔を合わた直後にコウが皆へ「すまない……」と謝ると、先ずは邦正が「まぁ、いいってことよ」と、即答しその場を和ませた。その後に柚葉が「ほら、出店は始まってるんだから、早く行かないと会場混んでたら花火始まる前には着けないわよ!」と言いい、一同は取り敢えずは会場を目指し向かう。
その道のりでなゆりと柚葉とコウが並び、その少し前方で楓と邦正があほあほトークをし始めたところでコウは二人に申し訳なさそうに語り始めた。
「悪い。色々考えたんだ。でもまだ駄目なんだ。ただ今までのように皆と居たいんだ……おれはどうすればいい?」
その言葉になゆりは表情を強張らせる。柚葉は視線を逸らす。なゆりはこの場をどうにかしたく柚葉に目配せをしたが、柚葉は無言で聞き手モードだった。
「きっとこう言うのは急ぐことないよ。突然だったし。混乱しちゃうよね……」
なゆりがコウにはにかみながら告げる。その後に長く続いてしまいそうな沈黙を無理やりにでも解こうとする柚葉。
「……なーんか訳わっからないわよねー。でも私たちはあんたが家に籠ってる間に急接近よ!ね〜なっゆり〜」
「うん。そうなんだけど、桐宮くんにそれじゃ伝わらないよ……」
「いいのよ。このままじゃペース狂いっぱなしじゃない。あんたはあんたのままでいいのよ。さっさと回復して見せなさいよね!」
「ちょっとそれは強引なんじゃ……」
「これくらいの方がいいのよ!なゆりはいつもお人好し過ぎなのよ」
「でも。こうなっちゃうんだもん……」
「それは分かってるわよ」
なゆりと柚葉がなんか可愛らしく口論をしている。
「ぷっ。あははっ……うける。二人共ありがとな」
二人の仲の良さわ相変わらずなやり取りを聞き、安堵からか緊迫していた心の緊張が解けコウが噴き出した。コウが突然二人の首に手を絡め引き寄せながら告げた。その急な行動に戸惑う二人。
「っ……ちょ!やめてよ、もう……」
「桐宮くん?ちょっと、近いよ……」
コウがそのまま小声で二人に告げる。
「でも、おれちゃんと答えを出すから。もう少し時間が欲しい」
辺りを包む夕焼けが空や心までも焦がすように彩り……
低い太陽が繋がった三人の影を長く長く伸ばしていた……
いつまでもどこまでも続くようなそのシルエットと、懐かしい言葉のやり取りがこの場に漂っていた惑いを次第に解いてゆく……。
楓が楽しげな三人に気付き振り向く。
「ん?に〜!何やっとるん?……」
「大丈夫だ楓!大したことではないぞ〜。よし楓!競争しようぜ!」
多少膨れっ面な楓を見たコウが駆けっこをし始め誤魔化そうとしている。
「ううぅ。まぁよかろう。返り討ちにしてくれるわ〜!」
「今日こそ封印していたおれの本気を見せてしまうかもしれない時が来たかもしれないっ!」
「どっちやねんっ!」
「お。いつものこうらしくなってきたな」
多少コウと距離を取っていた邦正も会話に加わり始めた。
「先ずはあそこの電柱までな!あ!楓の浴衣。ピンクでかわいいな。めっちゃ似合ってるし」
そう言って立ち止まり楓を必要以上に見つめ続けるコウ。楓が「そうかなぁ」と照れながら下を向いたその時、
「チャーンスぅ!」
こすい手でまじダッシュを決めるコウ。
「あああ!待てー!きゃははっ」
それでもずっと部屋で籠っていたブランクが原因か、いや、いつものことで浴衣姿の楓にすら綺麗な追い込みをくらう。
コウのその時の言い訳は「そうか。まだ時は満ちていなかったか……」だった




