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ラブコメって!パラレルった?コスプレ部☆  作者: フォーシーズンス
 序章 〜【プロローグ】エピソードゼロ編〜
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 十五・五☆【前編(下)】エピソードゼロ……。

 黒髪の女の子の戸惑い……。


「お前が弾いていたのか?凄いな。なんだかよく分からないけど近くで聞いてみたいと思って走って来てしまった」

 女の子は低い声ではなく、そのままの綺麗な高い声で答える。

「うん……でも私……あまり……」

 窓に両手を添え下を向きながら答えた女の子。

「あまり何だ?日本語話せないのか?」

「ち、違うの!初めての人とは……あまり……う、上手く話せないの……」

 コウはこの時から言葉巧みに難を逃れるのが上手だったようだ。

「分かった!ならまた明日この時間でここに来るから!その時はもう初めてではないよな?」

「う、うん……それはそうなんだけど。で、でも……上手く話せるかな……」

「そんなのやってみないと分からないだろ。じゃまたな!」

「あ、待って!」


 コウは忙しく走り去っていった。呼び止めようとした女の子はその軽快に走り去って行く後ろ姿を見えなくなるまでただ眺めているだけだった。


 次の日は生憎の雨になり、女の子はそれでもいつも通りピアノを弾いていた。

 週に一度ピアノのレッスンに通っている女の子はピアノが日課になっている。ピアノばかりを弾いてきたからか、同年代の子とは話が合わないことの方が多く、話す時は少しだけ楽しげに見えるように振る舞ったり無理をして話しをしていた。

 話す時よりもピアノを弾いている時の方が格段素直になれた。指先に意識を集め、メインのメロディーを弾く指には柔らかく体重を乗せるようにし、一段と意識を集中させピアノで歌うように……時には囁くように弾いていた。あの子……来れるかな。どんな子なんだろう……友達になれるかな……今日のピアノはいつもよりもお喋りだった。


「今日はとても楽しそうね。何かいいことでもあったの?」

 ママにそんなふうに言われた。

「え?そんなことないわ」


 照れを隠すように先ずはそう答え、自分の心に尋ねるように考える……私は今、楽しいのかしら……でも期待はしているのかな……何に?友達が出来ることに?それとも……。

 その後にはっとして演奏を止めてしまった。駄目よ……こんなことを考えてたらまた話せなくなってしまうといけないわ……。

 そう思い部屋の時計を見るとちょうど昨日会った頃の午後の五時過ぎになっていた。あの子……来てるかな……女の子は窓を開け外を見てみる。すると青い傘が門の陰からはみ出しているのが見えた。誰かいる……。


 女の子は玄関に向かい傘をさし門まで行くと、昨日の男の子が門に寄り掛かり座っていた。昨日うるさかった番犬は今日は雨のせいかお休みらしい。コウも女の子に気づいた。


「もし今日もあまり喋れなかったら嫌だなぁーって思って考えてたらずっとピアノを聴いちゃってたんだ。上手く言えないけど、ピアノを聴いてたら少しだけおまえを知ることが出来た気がしたんだ。どう?今日は喋れそうか?でもさ……さっき思ったんだけど、おれは無理して喋らなくても良いと思うぞ」


 女の子は不思議そうに答える。


「え?ど、どうして?……」

「さっきの音である程度は分かったんだ。昨日よりもピアノが歌ってるみたいだった。優しく真面目な音。おれはあの音好きだ!それと普通は勿論話して仲良くなることの方が多いんだろうけど……無理するのはあまり良くないと思うんだ。話せなそうだったらおれが勝手に話してるよ。返事は頷くだけでいい。それなら簡単だろ?」

「うん……」

「なら問題無しだ!おれは桐宮 虹[キリミヤ コウ]よろしくな」

「うん……私……柊……な……」


 気を遣っているのか早めに答えるコウ。表札の柊の苗字の他に『な』がつく名前は『なゆり』だけだった。


「大丈夫だ!知ってる!さっき表札の名前を見たからな。柊はいつもピアノを弾いてるのか?凄いな……おれもピアノ弾けるようになるかなぁ……」

「きっと練習すれば弾ける……と思う」

「練習か。うちはピアノは無いからな。柊のピアノ。また聴かせてくれよな!柊は外で遊ぶことはあまりしたくないのか?嫌だったら無理には誘わないけど、外には外の楽しいことがあるんだ」

「嫌ではないわ……」

「よし!今度晴れた時に柊が外に行きたくなったらそこらへんを冒険に行こう」

「う、うん」

「またな!あ。またこの時間に来ていいか?」

「うん」

「良かった。今日は楽しかった!じゃあな!」


 傘をさしながらなゆりは今日も男の子が去っていく後ろ姿を目で追っていた。私、上手く喋れてたかな。でもあの子なら喋れなくても大丈夫かも。友達に……なれたのかな……。

 男の子が帰った後に弾いていたピアノの音も、ママに「随分楽しそうね」と、茶化されたのを覚えている。そうだ。きっと私。楽しかったんだ……。

 

 日課にピアノ以外にも男の子が来ることが追加された。二人は次第に自然に話せるようになっていった。


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