十五☆【後編(上)】葬る思い……歴史に残る収穫……新しい日常……じゃおれ言っちゃうからね……。
一方リビングでは……。
「に〜なんかおもろいことある?」
「そうだな。うーん。明日な」
「え〜〜〜。ちょっとならいいじゃん!」
「わかったわかった。ちょっとだからな。なんか紙と書くもんあるか?」
「あ!さっきメモ帳みたいなやつ入口にあったから持ってくる!」
走って取りに行く楓。遊びたくてしょうがないらしい。
「持ってきたぁ〜!」
「楓どんだけ元気なんだよー」
「だってに〜とお泊り初めてだし〜。に〜と遊びに行くのも初めてだし〜。しょうがないんじゃね?」
「まぁそうだな。元気があれば何でもできるらしいからな」
おもむろにコウが用紙とペンを使い説明を始める。
「じゃこれが地面でー。この四角が荷物な。楓が白の荷物でー。おれがこうやって塗り潰した方の黒。これを順番こに一つずつ置いたり積んだりしていって、先に自分の色の荷物を四つ並べれば勝ち。荷物だから空中には置けません。斜めに四つ並べても勝ち。おけ?」
コウが紙に先ず一本の直線を横に引きこれが地面と言い、その線の上に長方形の荷物と言うものを描いた。丸罰ゲームの応用だ。
「やったことある?」
「無い!でも勝つ!」
「おれは荷物積みゲームの申し子と呼ばれた男だぞ。ふはははは!負けん!」
コウと楓が真剣勝負を始めた。
「あんたらほんと仲いいわね……」
柚葉が歯ブラシをくわえながらそのゲームをしている二人とゲーム内容を見ている。歯を磨き終わった邦正もリビングに戻って来た。
「お!それ懐かしいな。授業中によくやったよな」
「はは。だよな。柚葉はきっとおれらには勝てん」
「面白いじゃない。絶対勝ってみせるわ」
こうして真夜中の荷物積みゲーム大会が始まってしまっていた……。
「もう一回よ!」
「えー。もういいよ〜あ、わかった。邦正に勝ったらやってやる」
「話は聞いてたわよね……やるわよ!」
「こう!なんかいつもより怖いよ?なんで?」
「おれらに勝てなくてイライラしてるだけだろ?単なる八つ当たりだ」
「こう!余計なこと言うなよ!柚葉ちゃんから邪悪なオーラみたいので始めたよ!」
「柚葉!美容の為に寝るんじゃなかったのか?」
「このまま寝たら余計に美容に悪いわ!」
戦闘民族の血を請け負ったのではないかとも言える闘争本能を剥き出しの柚葉。コウはもうさっきのゲームから変わり、棒を消していく七五三ゲームや、数字当てゲームとどんどん品目を変え楓と遊んでいる。
「どうだ?紙とペンだけでも結構遊べるだろ?」
「だね。おもろい〜」
「今日は楓と一日中遊んだな」
「だね。やっとちゃんとお兄ちゃんっぽくなってきたね」
「楓のお兄ちゃんをやるのはなかなかのハードワークだな。おれもおもろいからいいんだけどね。よし!そろそろ明日に備えて寝るか?」
「ダメよ!私が寝させないわ」
柚葉が闘争本能剥き出しのままコウに突っかかる。
「あの……そう言う台詞はもっと色っぽく頼む」
「おれは今のでもお腹いっぱい!満腹っす!」
邦正が妄想を最大限に膨らませている。
「あんたは今日は寝させないわ」
「もうー。違うってぇ。それじゃぁおれ眠たくなっちゃうよー。じゃあおれが見本をみせてやる」
二オクターブくらい声を高くするコウ。
「『私が満足するまで、今夜は……ね・さ・せ・な〜いぞっ!』だろ」
「さっすがコウ!百点!!」
何故か絶賛の邦正。天然な楓はコウのそれを普通に真似っこしている。柚葉が憂いの表情で零した。
「や〜だ。あともう一回だけでいいから」
邦正とコウが目配せをしている。おそらく二人の想いは一つだ。
「柚葉。ごめん聞こえなかった。なんて言ったの?」
「だから……もう一回だけでいいから。おねがい」
またSっ気が疼いてしまったコウが柚葉をいじろうとする。
「あら?デレた??」
「デレてないわ!」
相変わらず突っ込みが早い柚葉。邦正とコウはもうえっちな風にしか聞こえていない。なので聞こえてはいたが、敢えてもう一度柚葉の口からそのおねだりの台詞を言わせたく聞こえないフリをしてしまうコウ。その後にコウが採点をし始めた。
「うーん。でもやっぱり百点だな」
「ん?なんか引っかかるんだけど」
「じゃあ邦正が得点を付ける係な。柚葉何点だった?」
「うーん。でもやっぱり百点でしょ?」
「だからでもって何よ!」
「うーん……何だろう?ツンデレキャラがたまに言うデレよりなワードはやっぱり二倍の威力があるってことだろ。柚葉!とにかく良かったぞ!もう一回してやる」
「くぅーーーっ!こうやっぱりおまえすげーよ!百点!!」
また絶賛の邦正。えっちな風にしか捉えてない二人にはえっちなことをもう一回してやると柚葉に言ったことになっている。邦正はそこに賛同しているだけだ。
「もう。どうせまたあんた達は変なことでも考えてるんでしょ。ではラストデュエルよ!」
「お!なんかやる気出てきた」
最後の戦いも終わり柚葉の反応は……。
「や〜だ!もう一回!」
「うーん。だから。もうちょいでいいから色っぽく言おうよ〜。ならおれが見本をみせてやる」
また二オクターブくらい声を高くしさっきよりも照れを無くし振り切って演じるコウ。
「『私、まだ満足できないの。今夜は……ね・さ・せ・な〜いぞっ!!』だろ?」
「くーーーぅ!こう!百点っ!」
またも絶賛の邦正。天然な楓はコウのそれを普通にまた真似っこしている。柚葉が憂いの表情で零す。
「コウともう一回したいの……」
「……お、おう……」
柚葉の表情と台詞があまりにクリティカル過ぎて答えに戸惑うコウ。台詞だけでなく憂いの表情があまりに可憐で儚げで……いつものように茶化す余裕も無く、普通にもう一戦が始まった。
「ん?」
コウが柚葉が始めた筆談に気づいた。『皆が二階に上がってから一時間後にまたココに来て』柚葉の表情からは冗談の欠片も感じなく、コウは柚葉と視線を合わせアイコンタクトで了承した。最後の一戦は全く集中できずに終え、柚葉の方も集中をできていないようで、結局はコウが勝つ。
荷物積みゲーム大会はやっとここで終了した。コウがここは仕切る。
「よーし。明日に備え寝よー!」
楓が眠そうに目を擦りながら告げる。
「いっぱい遊んだね〜目がしょぼしょぼしてきた」
それに笑顔で応えるコウ。
「楽しかったな。また明日遊ぶぞ」
おやすみの挨拶を終えた後に階段を上り、邦正は『で、誰のことが気になるんだよ』的な真夜中トークを期待しているようだったが、明日に備えて眠る方が再度水着や有意義な時間を過ごせる筈だと伝え、邦正を全力で睡眠へ向かわせる。
邦正が寝たことを確認し、コウは何かの間違いで寝てしまわないように布団の上で柔軟をしているフリをしながら安坐をかいていた。
コウは夜には強い方なので、睡魔よりも淡い期待が勝っていて目がぱっちりと冴えていた。
淡い期待からか時間の経過が遅く感じる……変な妄想を浮かべてしまうのは青少年の健全な本能だろう。勢いよく首を横に振り妄想をかき消した。
そんなこんなでやっと約束の時間になり、気付かれないように電気を付けずに階段を降り、さっきまで熱戦を繰り広げていたリビングへ向かうと、光が漏れないように隅の方でスマホのライトだけを点けて柚葉が一人で待っていた。




