十五☆【中編(上)】葬る思い……歴史に残る収穫……新しい日常……じゃおれ言っちゃうからね……。
変わらずに残す方法……。
ここは都会から離れているので空気も澄んでいるようだ。深呼吸をすると多少曇った心は晴れ、その僅かな清々しい気持ちをきっかけに、溜息交じりにコウが邦正に問い掛ける。
「どうしてこう上手くいかないのかな。仲良く楽しく過ごしたいのに度が過ぎて傷付けてしまう。おれそんなんばっかだろ?……あ、邦正。さっきはあれだ……ありがとな」
「おれも折角なら楽しく過ごしたかったから。気が付いたら自然にフォローしてただけだよ」
邦正もいつになく真面目に答えてくれた。そもそもコウがこのような相談を持ちかけることは今までには無く、邦正にとっては珍しいことだった。
「なぁ……この楽しい時間を変わらずに残す方法って無いんかな……」
いつに無くコウは気が滅入っているようだ。邦正が元気を出そうとしてくれているのか、戯けて応える。
「おれには分からないな。だっておれオタだよ。リア充デビューしたばかりだからね〜」
「っはは。なんかこう……青さと言うか、未熟さと言うのか。あ。それで青春って言うのか?もうわけ分からんっす」
そんなところにマスターが二人の様子を見に来た。
「よう。お前さんたち。青春じゃのう。近付いて、近付き過ぎて傷付けて離れ、また近付こうとする……その時にはまた同じ失敗をしないように近付けば良いんじゃよ。それしか人が人に近づくことは出来んからのう」
マスターの言葉を自分のフィルターに通し理解しようとするコウ。
「不思議と説得力があるな。なあ。マスターはそうやって奥さんと近くなって行ったのか?」
「そうじゃのう。おそらくお前さんの想像以上に失敗の連続じゃった……その度に嫌われそうになっていた気がする……ただ失わないように出来る限りの気持ちを伝えようと努力をした。あとは自分のことだけでは無く、相手のことを一番に考え、理解をしようとするようにした。自分が正しいと思っていることも他の人にはそうではない場合もあるからのう……」
「相手のことか。確かにな。自分を優先してしまっていたな。おれにできるかな……」
「本当に大切なモノじゃったら必ず出来るから大丈夫じゃ。案ずるな。覚えていてほしいのは、大事なのは失敗をしないようにするのではない。失敗をした後に投げ出さないように向かい合うことじゃ。それと欲の多い者程、大切なモノを見失う。そして失って気付くんじゃ。そうはならんようにしてほしい」
マスターはきっと正しいことを言っている。ただ、想像の範囲では足りなくて、まだなんとなくしか理解ができない部分もありそんな未熟さに嫌気がする。コウは早く本当の意味での大人に成りたいと、思っていた。
「そろそろわしは寝るつもりじゃが……お前さんたちはどうするんじゃ?」
「もう少し気持ちを整理出来るようにあがいてみる。それしか今は出来ないみたいだからな。この合宿に来れたのもマスターのお蔭なんだよな。ありがとなマスター。問題は起こさないから安心して休んでくれ」
「何を言うとる……えんじぇるの件でお前さん達には頭が上がらんからのう。では、あとは任せたぞ。宜しく頼む」
コウはマスターの言葉に頷き、別荘の入り口の手すりに寄り掛かりぶら下がり腕を組みぼーっと考えていた。邦正は同じ手すりに背中から寄り掛かり、空気を読んだのか今は敢えてコウに話しかけないようにしているようだ。
部屋の中では楓が椅子に座り暇を持て余し足をバタつかせている。なゆりはちぃと一緒に居るがなゆりが少し上の空で話を聞いている様子だ。柚葉は体育座りで膝を抱えながら、出窓から見える風景や星空を見ているのか見ていないのかの曖昧な表情をしていた。
それぞれが少し離れてしまった距離を悔やみ想いを巡らせていた……
十分前後が経過しコウが動きだす……。
「あーもう分からん!分からんけどこの時間も勿体ない気がする!もう皆に謝ることに決めた!」
「こうが決めたんならそうだね。よし!中に入ろう!」
入り口の扉を開けリビングに入りコウが大声で叫んだ。
「皆ごめん!皆と楽しく過ごしたかったのに調子に乗り過ぎてこんな空気にしてしまった……本当にごめん!リベンジさせて下さい!!」
「っふふ。リベンジって……」
柚葉が小さく吹き出し笑う。ホッとしながらコウが補足をする。
「ちょっとリベンジの使い方。違うかな?もう半分合宿が終わってしまった訳でしょ??……おれやだ!」
「楓もやだ〜!」
楓が加勢をしてくれた。片手を上げながら背伸びまでしている楓。
「私もやだ!」
まさかのなゆりの加勢。椅子から立ち上がり両手を付き思いを告げた。
「わたしもイヤよ」
柚葉も小声で賛同をしてくれた。
「ちぃも嫌だわ!」
同じく右手を上げながら賛同してくれたちぃ。残るは邦正なのでみんなの視線が邦正を貫き邦正が喋り出す。
「おれはさっきこうと一緒に話してたし……」
「あんったねー。ハッキリ言いなさいよ!」
ツン柚葉が邦正にダメ出すと、邦正が多少照れながら答える。
「あーもー!おれもやだー!!」
邦正も右手を上げ賛同をした。皆で互いの顔を見合わせ少しの間の後に皆で笑い合っていた……。
「っはは。何だこれ。じゃおれ言っちゃうからね。おまえら皆ー!大好きだー!!」
大きく深呼吸をし、コウが大声で叫んだ!それに同調する楓。
「おー!」
「お肉ー!」
「あんたまた体型に頼って」
「っふふ。でも、ちぃ笑っちゃいました」
楓が天に向かいガッツポーズをしている。なゆりもちぃを背後から抱き締めながら柚葉の方に視線を向け微笑んでいた。こんな時には邦正のボケが心地良い。邦正が両手を腰に添えドヤ顔っている。柚葉もいつも通りの感じだ。マスターはまだ気になっていたのか二階からその様子を密かに窺っていたが、微笑みを浮かべながら床に向かった。




