十三☆【後編】ぅ、何よこれ!!!……共有……。
夕食準備中……。
少し離れたテーブルでちぃがなゆりと仲良く玉ねぎを切っている。なゆりとちぃの肩を叩き呼ぶコウ。二人が同時に振り向いた。その二人の表情に驚くコウ。
「だあー!!って、あー。玉ねぎにやられたのね。びっくりするわ!あ。でもなんか二人共……いいぞ!」
「んん?……目痛い。桐宮くんどういう意味かな?」
「コウは変態さんですね」
涙を流しながら問うなゆり。ちぃも涙が拍車を掛けているのか容赦がない。
「いや、涙ってなんか、あまり見れないモノだろ?二人の素を見れたというか、より距離が近くなったように思えて嬉しかったんだ。他意は無い。ただ、玉ねぎからの涙なんだけどな……なんか皆で作るのって初めてだな!美味しく出来るといいな」
なゆりがちぃと仲良く答える。
「楽しみだわ。ねーちぃちゃん」
「ふふっ。そうね!」
邦正が回復してきたのか急に主張をしてきた。
「米は絶対めちゃめちゃ美味いけどね」
意地悪を言おうとしたコウだが、研ぐだけだからなぁと伝えるのも邦正が可哀想になるだけなので、無駄に持ち上げてみるコウ。
「よっ!米奉行!」
「ちょっと!こう。鍋奉行ならまだ聞いたことあるけど、取り敢えず持ち上げとこうみたいなことしてるでしょ?」
さすがに長い付き合いなので見抜かれた。
「お!いつになく邦正が冴えてるな。よし!柊!サラダ作りとカレー番とどっちがいい?」
「うーん……桐宮君はどっちがいい?」
こんな風に譲ろうとしてくれるのがとても心地よい。笑顔で答えるコウになゆりも笑顔で返す。
「ならおれサラダやる。さっきの楓の人参も活かしてあげたいし」
「分かったわ」
「なあ!柚葉!お願いが有るんだけどいいか?」
「何よ?気持ち悪い」
「ははっ。今回は大丈夫なはずだ!逆に結構いい提案だと思うぞ……」
ジェスチャーで柚葉に伝えるコウ。柚葉が気付いたようだ。
「何なの?……ああ。いいわよ。任せて!タイマーにしてわたしも枠に入るわ」
こんな時間が終わらないで欲しいと願っても……
無情にも時間は進んで行く。
そんな当然のことを知りながらも流れに逆らえずにただただ……
願ってしまう。
人の一生を百年として……
その百年の時間をもし、一週間に凝縮して過ごすことが可能だとしたら……
きっとその一日一日は怖くて怖くて仕方がないはずだ。
部屋の外では蝉の群れが羽根を擦り合わせ懸命に求愛をしている夏の夜。
そんなうるさい位の虫の音も……
今日だけは、頑張れ!負けるな!諦めるな!って、本気で応援してあげたくなった。
おれたちの一生は一週間ではない……
でもそれは確実に日に日に失われている。
昨日と左程変わらないように見える今日も少しづつ変わっている。
いずれ変わってしまうものならばせめて形に残しておきたくて……
二度と訪れることの無いこんな高校生活最後の夏の時間を、カメラで四角く切り取り共有をした。
星と月と太陽から産まれた子★
七★魔王との戦い
出発の時のこと、太陽の子は胸に手を当て心を絞り出すように告げました。
「わたしも行くわ!何が出来るわけでもないけど……待っているだけではイヤなの!一歩でも自分の足で進みたい!魔王の城は山奥にあるわ!わたしに案内させて!」
山へ向かい数時間程歩き、勾配の急な坂を越え、人が通ることがあるとは思えない胸まである草を掻き分け辿り着いた不気味に佇む古城の正門前。
「悪いがここで待っていてくれないか?正直、二人を守りながら戦い抜く自信はない」
月の子は二人を拒むような真剣な表情で言い放ちました。
「うん……気をつけてね」と、星の子。
「ああ」と、月の子。
「……」
言葉が見つからなかった太陽の子は、片方の手を口の辺りで握り、もう片方の手を背中に回しながら遅れて告げました。
「ちゃんと帰ってきなさいよね」
「当たり前だろ」と月の子。
門を開け、敷地内に足を踏み入れると、気味が悪い程の雑草の高さと、風が草木を揺らす音しかしない空間は、月の子の不安を充分に煽る……
月の子は人の身の丈よりも遥かに高く重い城の扉をゆっくりと開きました。
すると視界に広がったのは広い空間を埋め尽くす燃えるような赤に、金の刺繍と装飾がされている絨毯。石造りの黒色の壁。奥の左右にある大きな台座の上には邪悪な気味の悪い像が立ち構えていました。
その間の三段程高い位置に王の椅子と呼ぶに相応しい、神々しく豪華に飾られた王座に座り頬杖を突き月の子を睨む禍々しい存在があったのです。
息づかいさえ聞こえてきそうな程に静かで物悲しさが取り巻く空間……。
黒い炎のような姿で揺らめく魔王は何も問わず語らず王座から腰を上げました。
沈黙を最初に破ったのは月の子でした。
三歩程の助走の末、大きく振りかぶり掛け声と共に人の丈程ある槍を全力で投げた月の子。その後にレイピアを構え相手の動き方をみる。忍ばせている短刀を確認する。
魔王は近づいてくる槍を魔力の防壁で防ぎました。
一人で魔王に立ち向かう月の子、攻防を繰り返し幾度と追い込み、その都度に渾身の一撃を打ち込むが、空を切る……気の抜けない長い戦いが続きました……。
「おかしい……実体がないとでも言うのか?なに!この身のこなし方は……どこかで……」
集中力を思考へ向けたその時、魔力の塊が月の子の進行方向へ放たれていました。
「まずい!避けきれない!」
人の身の丈程の直径の魔力の球体に吹き飛ばされる月の子。そのまま城の外まで吹き飛ばされ、正門前の星の子と太陽の子がそれに気付き駆け寄ります。
かろうじて意識を持っている月の子に太陽の子は叫ぶように問い掛けました。
「ち、ちょっと、あなたしっかりしなさいよ!……あっ……」
魔力で焼けた月の子の衣服から覗く左手の肩の部分にはかなりの大きさの内出血が在りました。太陽の子は星の子へ言いました。
「無理矢理にでも、一旦、連れ戻すわよ。彼の左手は……今は使い物にならない筈だから、このまま戦わせる訳にはいかない。そっちを持って!」
「わかったわ!」
二人で担ぐように月の子を運び安全な場所へ移動しました。




