十三☆【前編(下)】ぅ、何よこれ!!!……共有……。
続……夕食準備前……。
「さあーて。では脱がすわよ」
「ちょっと!何でエプロンを付けるだけなのにそれまで脱がすのよ!きゃっ!止めてよ……もう……返して!しおんの馬鹿!」
「あら。そんなことを言ってはダメだわ……これを返して欲しいんでしょ?」
正に悪役が適役な柚葉。悪女としか思えない程のSっ気だが、悪意は無いようだ。
「もう……しおんの馬鹿……」
「あーもーめちゃめちゃ可愛いー!!ホントになゆりには負けるわ!だからちょっかい出しちゃうのよね。あーん♡ぎゅっとしたい!ごめんね。返してあーげるっ!」
今度は柚葉の興味がちぃへ向かう。
「今度はちぃの番ね。うーん。髪の毛編んでいい?その方がわたしの好みなの」
「可愛くしてくれるならいいわ」
「当たり前じゃない。わたしよ?」
わたしよだけなのに、妙に説得力のある言葉だ。柚葉が鼻歌をふんふん歌いながらちぃのセットをしているようだ。なゆりと楓の声でへ〜とか、そうやるんだ〜とか声がする。
約十分程で完成した声が聞こえてきた。
「よし!これでいいわ!鏡見てみて。どう?お姫様みたいでしょ?」
「わぁー凄いわ!私、こんな風な髪型にしてみたかったの!」
センスの塊を人の形にして、次第に心が宿り、やがてそれに生命が宿って誕生したような柚葉。
「しおん!楓もやってー」
楓がしおんにお願いをしに行ったようだ。
「そうね。楓はまた別のテーマの方が似合いそうね。ちょっとイメージを確認したいから鏡の方を見てもらいたいんだけど、いいかしら?そう。そうしててね」
二階でヘアメイクさんが喋っている?……そうとしか思えない口調だ。柚葉が鼻歌をふんふん歌いながら今度は楓のセットをしているようだ。なゆりとちぃの声でへ〜とか、そうやるんだ〜とか声がする。
そんなこんなで約三十分後に四人とも二階から下りてきた。
また恥ずかしそうにしているなゆり。普段は髪を纏めることはしていなかったが、今回はシンプルにポニーテールだ。薄いピンクのシュシュがとても似合っている。服は三人とも露出度の高めなキャミソールを着せられていて、その上にエプロンを着けている。エプロンの下に何も着ていないように見えるのは柚葉の狙いに違いない。
ちぃは冠を被るように編んだ髪を頭に巻いていて、どこかの王女様みたいだ。エプロンはその分、着させられている感があるが、ミスマッチ感がこれはこれでいい。楓もいつものツインテではなく編み込んだ髪を片方だけに垂らしていて、楓のキャラにしっかり合っている。いつもの楓を知っている人にはとても新鮮に映るだろう。柚葉もさり気ないが、片側だけ三つ編みでアクセントを付けている。柚葉のキャラでのエプロンはギャップがあり、普段より優しそうに見え正しくギャップ王の魅力だ。
とにかく女性陣はハイレベルだ。コウがこの場は指揮を執る。
「皆、用意は完璧のようだな。では始めよう!柊は料理が得意だったよな。皆のフォローも頼む!マスターは運転をしてくれていたのもあるし、ゆっくりしてていい」
「分かったわ」
「それではお言葉に甘えるとするかのう」
「皆、怪我だけはするなよ!」
「先ずは材料切るぞ〜楓やってみるか?」
「あちし包丁使ったこと無いからな〜。出来るか??」
「ゆっくりでいいからやってみるといい。ダメだったら手伝ってやる。自分が切ったり下ごしらえをしたものが美味しくなると結構嬉しいもんだぞ」
「うん。に〜が手伝ってくれるならやってみるか」
「よし!楓はいい子だ。柊!じゃあ玉ねぎをお願いしていいか?こっちはじゃがいもと人参をやる」
「分かったわ」
コウの指揮に異論なく頷くなゆり。
「あ、邦正を忘れてた。おい!元イケメンー!!いい加減こっちに来て米でも研いでくれ〜」
「なんだよ。その呼び名。まぁ米を研ぐのは超一流だけどね」
邦正は時間が心を癒してくれたのか、体育座りが流石に寂しくなったが戻るに戻れなく、呼ばれるのを待っていたのか、しっかり手伝ってくれそうだ。柚葉が何をしてるかが気になったので柚葉に視線を向けた。少し離れた所で暇そうに座っていたので、何もせずに居るよりは楽しくなるようにコウが誘う。
「おい柚葉!楓とこれを裸にして欲しいんだか、そういうの得意だろ?こっちに来いよ」
ちょっかいの出し方はコウは超一流だ。柚葉が半笑いで向かって来た。
「わたしが裸にするのは楓?それとも……なゆりの方がいい?」
「そうだな……全員裸にエプロンってのはどうだ?お前も好きだろ?それには先陣を切って柚葉からなるべきだとは思うんだが?」
柚葉が食いついてきた。
「そうやってうまいこと言って誘い出すのはホント上手いわね。わたしの裸にエプロンを見てあんたは普通でいられるの?」
「いやいやいや。多分やばいだろ。だから基本見ないようにする。そして稀に横目でチラッとみる。ふははっ!どうだ。キモいだろ」
柚葉の心をくすぐる答えだったのか、柚葉が弾んだ声で答える。
「そうね。そうしたらわたしは敢えてあなたの視界に入るように動くわ!しかもわたしがやったら皆も道連れよ。ってことはどこを見ても裸にエプロンよ。ハーレムね!」
柚葉はなんてことを口にしているんだろう。動揺からか玉ねぎを床に落とすなゆり。二つ、三つと次々に落としている。強気な柚葉を誘導しようとするコウ。
「そんな強気なことを言っても実際は無理だろ?柚葉が恥ずかしがり屋なこと、おれ知ってるんだからな〜」
強がりな柚葉は簡単にコウの誘いに乗ってしまう……
「何よそれ!ならやって見せるわ!わたしが裸にエプロンをしたらあなたは何をしてくれるのかしら?」
「そうだな。これから柚葉様と呼び神のように崇めよう」
このままの流れではやばいと思いなゆりが止めに入る。
「ちょっとしおん!女の子が男の子の前で裸になっては駄目よ!桐宮君もしおんにそうやって言ったら駄目なこと分かってしてて……そんな二人は知らないんだからね!」
いつになくなゆりが怒ってしまった。ちぃがおろおろしている。なんか申し訳なく思うコウ。
「悪い柊。おれが調子に乗ってしまっていた。柚葉もごめんな」
「随分となゆりには弱いのね。なゆり!裸にエプロンなんて冗談よ。冗談」
多少空気が悪くなったが、そこは邦正をいじり好転させようとするコウ。
「邦正ー!米を研ぐの全然進んでないけど大丈夫か?裸にエプロンの刺激が強過ぎたんだろ?」
「ば、ばか!そんなわけないだろがっ!」
どもったところと、大した返しができていないのが図星っぽい。
「まぁまだ大丈夫だ。楓?それは人参だよな?どこまでやるつもりだ?」
「だって。に〜が止めてくれなかったし〜」
人参が可哀想なくらいにほそーくなっている。流しにはうすーく美味しそうな人参スライスが出来上がっていた。
「確かにその通りだ。楓は何も間違っていない。これはサラダに入れよう。今度の人参は表面のぼこぼこがなくなったら次の列に行き、それを一周で完了だ。おけ?」
「分かったであります!」
「お!なんか昔の兵隊さんみたいだな。そのキャラで下ごしらえは行こう」
「行くであります!」
柚葉がふてくされてそうなので、また柚葉を取り込もうとするコウ。
「おーい柚葉!柚葉って料理出来るの?」
また多少イラッとしながら答える柚葉。
「わたしよ!できるに決まってるじゃない!でもやったことは無いわ!」
「とにかく凄い自信だな。よしココにじゃがいもがある。皮むき器でやっつけてくれ!出来るか?ちなみに楓は出来ている」
「ならわたしにできない理由がないじゃない!」
「振っといてなんだか、仲良くやってなー。ちょっと他を見てきていいか?頼んだぞ!」
もう、おちゃらけのノリな楓が敬礼の姿で答える。
「分かったでありますがゆえ……」
めっちゃ笑いながら言い放ちきった感の顔の楓。
「……って、終わりかっ!あ。意味を分からずに使ってるのね。楓おまえ、あっははっ。面白過ぎだろ」
「ひゃはは〜」




