十二☆【後編】そんなに見ないで……。
続……攻防戦……。
「えええー!かのん、私達最後の手段みたいだわ!行かなきゃ!」
ちぃがなゆりを急かす。でもまだ恥ずかしいのか上着を脱げないなゆり。そんなところがなゆりらしい。取っておきのように見えた水鉄砲を手に取り、一つはちぃに渡し、もう一つはなゆりが装備した。結局なゆりは上着を来たまま海へ入り応戦に向かった。ちかくで見れば見る程コウは酷いことになっている……ちっちゃな声で「いてっ!」と、ちょくちょく聞こえてくる。なゆりがいつになく大きな声を上げる。
「もうやめてあげてー!!」
そう言い放った直後に拡散型の連射機能付きの水鉄砲が火を。いや、水を吹く。なゆりの後に続くちぃ。
「長期戦なら負けない!」
水を背負いながら撃ち続けているちぃのは、給水がほぼ不要な背中にリュックサック程の大きさのタンクを背負うタイプ。給水をしている楓を目掛けて撃ち続ける!
「きゃー!ペッ!しょっぱい……やめれ〜!!に〜助けて〜!」
楓に助けを求められると弱いコウ。とっさにコウの体は動いていた。
「楓!おれが盾になる!早く給水を終えるんだ!早くぅうぅ!ぬぅぁあぁっ!目がぁあぁっ!」
結果、柚葉と邦正とちぃの攻撃を受けることになるコウ。なゆりが本気になっている。
「ちぃちゃん駄目!一旦撃つのを止めて!」
なゆりをリスペクトしているちぃはなゆりの言うことは絶対に従うようだ。
「分かったわ。かのん」
このタイミングで柚葉も邦正も給水が必要になり、やっと水難から逃れられたコウ。皆を指揮し結束を高めようとする。
「待て!一旦冷静になってよく考えてみろ皆!銃を二つ持っている奴がいる!卑怯者に正義の制裁をぉぉっ!」
目的が一つになった邦正以外が邦正を目掛けて総攻撃を仕掛けた。
「おい!こう!うぁぁっ!痒い!いてっ!痒いっ!!脂肪燃えちゃうよー!」
皆で笑いながら邦正を撃ち続けている。
「邦正!そろそろでぶネタも言い飽きただろ?これを機会に元イケメンの本領発揮といこう!」
その発言に皆が驚き質問が行き交う。
「え!あんたイケメンだったの?」
「えー!に〜どんなだったの〜?」
「元イケメンは自分のベストショットの写真を必ずスマホに残しておくものだ!後で強引に見せてもらった方が面白いぞ!」
「こう!ばらすなよ!好きになっちゃったらどうするんだよ」
心なしか数名の狙撃が激しさを増す。
「面白いことを言うじゃない。それって振りよね?」
「いたぃ!痒っ!いたっ!やめて!やめてー!!」
「柚葉はちゃんと分かってるなぁ。訳すと水をもっと俺にくれって言っている」
「おい!溺れる!こうーーー!!!」
なゆりだけは邦正への狙撃をせず銃を構えていなかったので、さっきの礼を言いになゆりに近寄る。そして違和感に気付いたコウがなゆりに問う。
「柊さっきはありがとな!あら?柊スタイルいいんだから上脱げば?暑くないのか?」
「ち、ちょっと!そんなに簡単に言われると困るわ。何度も脱ごうとしたのに駄目だったんだから……」
なゆりは本当にピュアな感じが徹底されている。いや、徹底ではなく本質的な部分なのだろう。
これが演技だったら人間不振になるレベルだ。こんな恥じらいをずっと忘れないでね〜と、願うコウ。だがSっ気全開モードになり、コウがなゆりへ攻め立てる。
「あ。柊あれだぞ……シャツ濡れてるから透けて見えてるぞ。随分と大胆なビキニを選んだな。とても似合ってる」
「きゃぁー!見ないで!」
面積の狭いビキニだからか、胸の下の膨らみが見え、形のいい膨らみが水面に触れる度にプルっと揺れる。 胸元を懸命に隠すなゆり。
「上手く言えないがとてもいいぞ」
「もう……見ないで」
「柚葉に勧められたのか?」
「やだ……もう!……」
何を言っても嫌がられるコウ……。
「楓ー。なんて言えばいいのか教えてくれ」
「何も言わない方が、いんじゃね?」
「やっぱりそうか。でもな。困ったことにあの感じの柊を……攻めたいっ!」
「少年かっ!」
とっさに楓。そうだ。きっと少年レベルの行為だ。
「だってだってぇー!あんなに恥ずかしそうにもじもじしてるんだぞ!あ。楓の突っ込みなんか懐かしい気がする。別に少年でもいいし〜」
襲撃戦を終息し、波打ち際でのあはは、あははははと、笑い合い追いかけっこをするカップルの真似や、何もせずに浮かぶ死んだ人の真似や、砂浜の砂を集めて山にして棒を立て、倒さないように砂を多くとるゲームや、ビーチボールを使った古今東西ゲームなどなど、一通りの海遊びを充分に終え、一旦マスターの所に集まる一行。コウがマスターに問い掛ける。
「マスター!何やってんの?」
マスターはビーチパラソルを立て、サマーベッドに横になり小説を読んでいた。 皆でマスターを囲むようにパラソルの陰に入ろうとしている。
「お前さん達の遊んでるのを見て昔を懐かしんでおったところじゃ。今は読書じゃがのう。どうじゃ?遊び疲れたか?」
「そんなところだ。ずっと走り回ってたからな」
楓がテンションが高いままで後に続く。
「まだまだに〜に負けずに遊べるが、ほかの遊びをしたくなった〜!」
「楽しそうでこっちが元気が出るわい。ではまた部屋へ戻るとするかのう」
帰りは何もかもを持たされるコウ。楓となゆりに助けを求め手伝ってもらい、なゆりは胸元を上手に隠しながら荷物運びを手伝っている。遊び疲れているのもありやっとの思いで運び終えたコウ。今度は柚葉がなゆりを弄り始めた。
「なゆり。せっかく自分で選んだのに披露しなかったら意味無いじゃない」
真相が発覚。自分で選んでいたらしい……コウもさっきよりは大人な思考を今は取り戻せているので、そこに触れずに口を閉ざしている。
「駄目だったんだもん仕方ないじゃない……言わないでよ!もう……しおんのいじわる……」
ほっぺたを膨らませながらコウに聞こえないように小声で柚葉に伝えたなゆり。照れからかレスラーが両手を組むように手を取り合い、なゆりが柚葉を優しく押している。少しづつを後ずさりをしながら柚葉。
「分かったわよ。なゆりの照れてるの見たくて。ごめん!ごめんって!」
タイミング良く楓が話し掛けてきた。
「に〜おもろかったね〜海また来たい!」
「そうだな。既に三日分くらい遊んだな。また皆で来よう!」
積荷を終え、車に乗り込んだ一行。邦正が思い出したように告げる。
「こうがまた変なこと言うからおれが餌食になったんだぞ!」
「それは真意が見えてないぞ邦正!そのきっかけで合宿に参加している邦正のこんなにもおいしい立ち位置を確保することができたんだ。それがなかったらお茶の間に映らないお笑い芸人よりも意味の無い存在で終わるところだった。我ながらナイスプロデュースだと思っていたところだ」
「ん?ってことは……この合宿でのおれはあんなお茶の間の映り方ってことだよね?雛壇の後ろ芸人みたいな位置だよね?」
「嫌なら己のユーモアを高めろ!」
コウが思い出し邦正へキラーパスを上げる。
「そう言えば柚葉!邦正の奇跡的な画像見せてもらわなくていいのか?」
「余り興味は無いんだけど。暇潰しに見せてもらおうかしら」
「こう?なに?この見せない方が良さそうな雰囲気は?」
いつになく空気を読めてしまっている邦正。そこに上手くコウがフォローを入れる。
「そんなことはないぞ。いつも空気の読めない邦正だ。今思っていることが見当違いの可能性の方が高い筈だ、試しに披露してみるといい」
説得力があったのか納得の邦正。
「なる程。あの時はおれモテモテだったからね」
何故か自分でハードルを上げに入った。そんなこんなで別荘へ到着し、邦正イケメンエディションは部屋での披露となった。




