九☆【前編(下)】柊との経験値……取材……瞳に映る愛情を……。
コス部部室内?……。
引き戸が倒れた騒々しさの後に、沈黙が支配をする部室内?……
裸の楓が柚葉の胸に頬擦りをしていて柚葉もブラを楓にめくられていたようでぱんつ一枚の状態。なゆりは丁度制服のスカートを脱ぎ終わって下着姿で楓の悪戯を見ていたところだった。
「……桐宮くん?大丈夫??」
「お!に〜!とうとう欲望に負けたか〜」
なゆりだけは心配してくれていたが、顔を引きつらせている暴君の殺気に気付いたコウ。さり気なく「あっれー?」と呟きながら引き戸をチェックし始めた。
コウの額から冷や汗が尋常じゃなく流れている。
「あはははは。面白いじゃない!おれは見ようとしてなかったのに引き戸が……みたいな感じの演出よねぇ。あんたって人は!!」
「待て!柚葉!話せばわかる!話せばー!!ぎゃぁぁぁあああ!!」
顔がパンパンに膨れてしまったコウ。柚葉のスナップの効いた往復びんたは殺傷能力さえありそうだ。えんじぇるに向かうコス集団と制服一名。
「もうだめだよ。覗いたら……」
「違う!おれはそんな気は無かったんだ。柊だけは信じてくれ!……柚葉の分からず屋!」
「犯人はみんなそう言うのよ」
「に〜!でも面白かったからいんじゃな〜い?」
「そうだな。体を張ったボケは今までしてなかったしな。ははっ」
えんじぇるが見えてきた。今日は店の前に大きな車が止まっていて雑誌の取材の件を思い出したコウ。
「あ。今日取材の日じゃん……おれ顔ぱんぱんじゃない?」
「そ、そんなことないわ!いつになく存在感のある顔立ちよ!まさに司令塔だわ」
「そうやって上手いこと言ってさ……柚葉は口まで達者なんだな」
いじけるコウ。まぁメインは女の子なので問題なしなんだけどね……。
「あ、邦正ママこんにちは。急な対応ありがとうございます!」
「コウくんの頼みなら断れないからね。あら?コウくん顔腫れてない?さてはえっちなことでもして女の子にはたかれたんでしょう?」
「ううう。否定できないっす……」
「まぁ。若いわねぇ。楽しそうで何よりだわ。あと、前の仕事を終えた取材班がコスプレ喫茶を撮りたがってね。使われるかわからないけど、今日はカメラを回すわよ」
「マジっすか!トントン拍子だな。でも使いたくなっちゃうと思いますよ……うちの子達パないんで」
「初めまして!私、桐宮くんの友人の柊です」
「邦正ママ、邦正と似過ぎね!」
「ち〜っす!楓だよ〜」
「まぁ。ホント!皆とても可愛いわ」
「そうなんです。うちの部、奇跡的に揃ってるんです」
「ホントね!プロの血が疼くわ」
そんなこんなで取材が始まり、カメラを回すこと二時間。無事に取材を終え、店にお客がいなくなりまったりとした休憩中のえんじぇる店内……。
「ふぁー……つがれだぁあ」
「ちょっと!あんた何かやってたかしら?」
「柚葉のバカ。皆がちゃんと可愛いく映るように、皆が緊張しないように適度な笑いを生み、この場を和ませていたのはさて誰でしょう?」
「確実にわたしだわ」
「やばい……疲労からツンを跳ね返す気力が無くツンに蝕まれてゆく……」
「柊。今日のおれ頑張ってたと思ってくれるならその分だけ肩トントンして〜。でなきゃツンに蝕まれてしまう」
「お疲れ様。桐宮くんありがとね。私、緊張しーなのに今日は大丈夫だった。多分桐宮くんが戯けてくれたからかな?」
「おう。それなら良かった……」
コウにトントンに向かうなゆりに楓がヤキモチを焼き駆け付けて来た。
「どりゃ〜!に〜は楓がやったげるの〜。なゆね〜でもまだに〜との経験値が足りないかも〜」
「楓ー。独り占めは良くないぞー。特にこのタイミングでのにーの独り占めはいけない筈だ。あああ……もう……しゃべれない……」
尻窄みに声量が下がり、段々とゆっくりとぎりぎりの意識の中で話すコウ。おかしい……この疲れは何なんだ?疲れなのか?少しづつ、意識が遠退いて行く……。
「ならなゆりはわたしをお願い。昨日からほぼ徹夜だったのよ」
「あ、うん!イベントメニュー作成や撮影やしおんはいっぱい頑張ってくれてるもんね」
目を閉じえんじぇるの中の音を聞いていた……
楓が楽しそうに肩を叩いてくれている。なゆりも柚葉も楽しそうにしているから何よりだ。
「今日はおつかれさん!これはご褒美じゃ」
マスターがお手製のチーズケーキを持って来た。みんなの歓声が聞こえる……
こんな空間が永遠に続けばいい……
そう想いながら今日の大仕事をやり切った達成感に浸っていた……。




