表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/365

そして少女は決心する

 最初から実は、嫌いじゃないという印象だった。別にイケメンだからではなく、何となく良い人だなって。言葉にならない安心感と、少しの寂しさを感じて、仲良くしようと思ったのがファーストコンタクトだ。


 最初に意識したのは髪を褒められたことだ。別に私は不良じゃない。確かに成績はそんなに良くないが、問題を起こしたわけではない。ただ、赤色の髪が好きなのだ。茶色寄りの明るい髪色が好きで、でも家族含めて誰からもいいように思われてこなかった。


「鮮やかな色だから、地毛かと思った」

 なんて言ってくれる人、誰も居なかったんだ。それくらい似合ってるって、暗に言われてる気になったんだ。


 そこからだ。気づいたら私は彼に影響されていった。ジャズを聴いて、電子ピアノの購入を検討し、何ならバイトも始めようかなと思ったくらいだ。好きな人の好きなものが嫌いだなんて、捻くれてるにもほどがあるでしょ?


 でも彼には、大きな謎がいくつもあった。何でバイトばかりして何の部活にも入っていないのだろう。何でジャズストリートでしか演奏しないのだろう。何で…乃愛(のあ)ちゃんとあんなに仲良しなんだろう。


 もっと知りたいと思った。新倉(にいくら)友一について、もっと深い所まで理解したいと思った。どんな人生を歩んできたんだろう。兄弟とか親御さんはどんな人なのだろう。初恋とか、したことあるのかな?


「で?僕を呼び出してどうしたの?」


 雨の日の放課後、遠坂(えんさか)君を呼び出した。雨の日は野球部の始動が遅れるから、隙間時間に話をするのに最適だ。


「ちょっと話があってね」

「だからってこんな、人っ気のない場所に呼び出すなんて…」

「ただの空き教室の前でしょ?まあ人は通らないけど」


 遠坂は何かを勘違いしているかのように髪の毛をセットし始めた。希望は早めに潰さなければならないと、私は釘を刺した。


「遠坂はさ、乃愛のこと好きだよね」


 髪の毛を弄る手が止まった。図星のようだ。見る見るうちに赤くなる耳を見ながら、私は心の中でガッツポーズしていた。


「す……まあ、下世話な表現をしたらそうかもな」

「下世話も何もないじゃん。好きなんだったら」

「と、というかいきなり呼び出して何を言いだしてるんだい?ぼ、僕は君の話を聞きに…」

「私はね、新倉君のことが好きなんだ」


 流石の遠坂もここでは空気を読んだらしく、すっと押し黙った。その様子を見た私は少しだけ彼に歩み寄って、小さな小さな、絶対に遠坂君以外には聴かれてはならないように呟いた。


「遠坂君、協力するからさ、協力してくれない?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ