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JCカフェ前、15時30分

 相も変わらずむかつく野郎だ。私はそう、心の中で憤慨した。


 何あの自分に酔ってますよみたいなかんじ?ほんと嫌い。大体ここでしか演奏しませんってその魂胆が嫌なのよ。何自分欲とかないですから〜みたいなツラ下げて演奏してんの?バカじゃないの?お高くとまってんじゃないわよ。どうせあんたなんて、プロになって活躍するような、そんな選ばれた人間じゃないんだから。逃げて逃げて小さな小さなお山の大将やってるだけなんて、ほんと、嫌い。


 ここで訂正を入れておくが、別に私は新倉(にいくら)友一という男自体を全否定したいのではない。同じバイト先では頼れる先輩だと思っているし、それなりに尊敬はしているし、その境遇に少しくらい同情の念はある。でもこの日の、この時間の、この場所でピアノを弾いている彼が大嫌いだ。さっさと終わってくれよ、ほんとに。


 何が時間延長だよ!こっちは今日の詳細を伝えようと思って、しっかり1時間開けてここに来たというのに、何でまだ演奏してんだよ!後ろのバンドが来なかったとか知らねーから、さっさと終わってくれよ。ただでさえ聴きたくないもの、これから聴かなきゃいけねえのにさ。あーあ、こんなんならこの祭り参加しなきゃよかった。


 私はスマホを開いて、裏垢を選択して、とりあえず愚痴を書き込んだ。どうせこの、熱狂した観客を前にして、私の言葉に耳を貸してくれる人なんていない。ならば頼るのは私の言葉でしか情報を得ていない赤の他人だ。そうすれば、ほら擁護の意見ばっか。冷静に考えておかしいのよ、あいつ。


 ピアノを弾きたいのなら、弾けばいい。


 やりたいことがあるのなら、それをすればいい。


 大事にしたい人がいるのなら、大事にしたいと言えばいい。


 離れたくないというのなら、離れないように振る舞えばいい。


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 とここまで来て私は、自分にブーメランが返って来ていることに気づいた。そして気持ち悪くなって演奏している側から背を向けた。曲名は、the girl next doorだったかな?どうせ悦に入ってるんだろうなと舌打ちしつつ、私はその演奏が終わるのを待っていたのだった。


「私も子供だな」


 なんでて呟いたら、隣のおっさんに気持ち悪い顔で見られた。そりゃそうだろって顔に書いてあって、妙にムカついたのをまた新倉のせいにしていた。

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