表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/365

4月5日その②

「にしても俺、今回めっちゃ当たりのクラス引いたわマジで」


 前で話していた水泳部3人の話を聞いていたら、偶然こんな話題が出てきた。


「あれ?傑今回何組?」

「8組」

「えー!8組ってさ、(のどか)ちゃんとか松戸(しょうど)とか居るとこじゃん。それに……」

「そう、生徒会長!」


 嘘だろ〜!!!とか、羨ましい〜!!と言った声が辺りにこだましていた。少し煩雑さを感じつつも、俺は黙って続きを聞いていた。


乃愛(のあ)ちゃんかあ。いいなあ、いいなあ」

「あの人いるだけで幸せになれるわ。水泳部のエースにして成績優秀容姿端麗スタイル抜群」

「おまけに性格も良いときた」

「何飲み食いしたらあーなるんだろうなあ。見習いたいけど見習えないよ!」


 神社の湧き水を飲んで具材のないカレーを食べてたらなれるんじゃないかな?俺は心の中でそう毒づいた。確かに彼女の外側を見ているとそういう感想になるのも致し方ないが、1番近くで見ている自分からしたらそう特別に思えなかった。


「そういやさ、俺聞いたことないんだけど……あの人ってどこ住み?」


 少しだけドキッとした。


「槻山でしょ」


 傑と呼ばれていたクラスメイトは即答していた。


「いやそれはわかってるって。問題は槻山のどこかよ」

「槻山広いもんねー北は県境南は大河」

「出身中は条南って言ってたわ。どの辺?」

「わかんねえ俺吹越だし」

「私も起置川だし、傑は?」

「豊倉」


 誰1人としている槻山出身の人間はいなかった。俺はほっと胸をなでおろした。この学校は茨田市にあるのだが、茨田市の東に接しているのが槻山市、西に接しているのが吹越市、南に接しているのが起置川市、そして北に接しているのが豊倉市。簡単に言うとこんな感じだ。だから全員槻山とは接していないので、彼女の矛盾に気づくことはないだろう。まあ最も、それに気づいたからと言って、彼女の今の居住地、つまり2人のアパート部屋のことだが、そこにたどり着くには尾行するほかあるまい。


「ちなみに2人は何クラス?」

「2人とも7組」

「不本意だけどね」


 女子側がふうとため息をついていた。それに少し男側が悲しそうな顔をしていた。


「それじゃ、暇なら遊びに行こっかな」

「いいね、隣だし!」

「おう、どんどんこいよ」


 そうやって笑っているうちに、教科書を買う列ははけていった。相変わらず人気なんだな、乃愛(のあ)。別にそれを誇らしいとも邪魔くさいとも思わないが、同居人が褒められていて嬉しく思わないほど人でなしじゃない。


 ふと、ブーっと音が鳴り響いた。安っぽいバイブ音とともに、ワイマックの格安スマホを取り出す。ぎこちない操作をしつつ、入ったメッセージを目で追った。差出人は乃愛からだった。


『SOS!SOS!自転車壊れてもうた!!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ