朝の部その③
ポンポンと肩を叩かれるまで、何度も何度もリピートし続けていた。まるで時間跳躍者のように、2時間半のダイブを決め込んでいた。
「そろそろ行こっか?」
優しい声でAさんは笑いかけた。イヤホン越しに聞こえるということは中々に大声だという証左である。自分に負けず劣らずの地味顔であるAさんだが、最近はあご髭を蓄え始めて少しだけダンディーな印象を獲得していた。このバンドの発起人であり、担当楽器はサックスだ。
俺はイヤホンを外しつつ立ち上がった。
「お手間を取らせて申し訳ございません」
時刻は午後1時を少し回っていた。下の階からは俺らの1つ前のバンドがアルトサックスで流行りのj-popを演奏していた。ユニオン何たらのしゅがーなんたら、正式名称は覚えていない。
「Bさんはどこですか?」
「あいつは演奏聴いてる。好きなバンドなんだとさ」
「そうなんですか?」
「アニソンなら目がないからな、あいつ」
Bさんは金髪ツンツンの髪型と細長い顎が特徴のバンドメンバーだ。担当はドラム、打楽器系ならカウベルでもシェケレでも何でもござれな凄い人だ。今は外でよくわかんないオタ芸やってるけど。
外に出ると焼き鳥や燻製のいい匂いが立ち込めていた。そういや俺、昼飯まだ食べてなかったな…
「何が欲しい?昼ご飯、奢るぞ」
突如としてAさんがそう提案してくれた。
「いいんですか?」
「飯ぐらい食べてから挑まないとエネルギー切れるからな」
「申し訳ないです」
「そんな、一回り以上下の奴に奢ってそんな恐縮にされたら溜まったもんじゃねえっての」
そう言われ、俺は三度ぺこりと頭を下げつつ、1番近くの店で売られていた焼きそばを注文した。
「それだけで大丈夫か?」
「充分です」
「んじゃそれ買ったらもう一回戻るか?それとも、友達に会いに行くか?」
そう言われてJCカフェの奥の方を見たものの、暗くてよく見えなかった。音楽はまた変わって、俺でもわかるくらいの流行りのアニソンが流れ始めた。けもの……いや、名前は思い出せなかったが、聴いたことは確実にあった。
乃愛が呼んでくれた各々は盛り上がれているのだろうか。特に音楽系部活に所属していない人達は、時間を無駄にしたと思っていないだろうか。
「大丈夫です。彼らには演奏直前に会いに行きます」
「そうか、わかった。しかしマスター、喜んでたぞ。まさかnorが友達を連れて来るなんて、ってな」
一瞬ピクッとなったが、すぐにこちら側の思い違いと気づいた。そうだ、この日、俺はノアなのだ。早く慣れないとな。今日だけなんだし。
因みに前のバンドが演奏していた2曲はこの動画を参考にしました!是非ともお聴きになりながらもう一度お読み下さい!
hmrp『【アルトサックス】シュガーソングとビターステップ【Jazz Ver】』
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm26737003
hmrs『【アルトサックス】ようこそジャパリパークへ【Jazz Ver】』
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm30898385
また今後も、作品を読みながら聴いて欲しい曲や作中で扱った曲などをここに書いていくと思います!
ぜひ聴いてみてください(*´ω`*)




