5月1日その①
今年は29日が土曜日だったから、ゴールデンウィークの日数が短く感じられた。いや勿論仕方のないことなのだが、当然不満を持つ生徒は多い。個人的には休日は給料のベースが上がるから働きたいし、もっと休みが欲しかった。通常の用途で使われていないことは個人的に重々承知だ。
「えー、今日は安藤先生、急な用事の為休みですので、副担任の…」
と言い始めた朝礼で、みんなの不満が爆発した。
「絶対ズル休みだ!!」
「なに先生だけ9連休作ってんだよ!!」
「こっちだって今日休みたかったわ!!親父は家にいんのになんで俺だけ学校きてんだよ!!」
「はいはいはい静かに!!」
副担任の奄美は手をパンパンと叩きつつ、20代女性とは思えない低い声でみんなを制した。
「あまちゃーん!」
「奄美先生と呼びなさい沢木君。なんですか?」
「明日も奄美ちゃんっすか?」
「だから…」
「安藤先生、明日も休みなんすか??どうなんすか??」
奄美先生は少し間をおいて答えた。
「それは、明日のお楽しみよ」
こういう茶目っ気があるから、奄美先生は案外人気だったりする。そういや今年から生徒会担当だったな、奄美先生。また乃愛からどんな人か聞くことになるだろう。
朝礼は席替えの連絡をして終わった。終礼にて新しい席になるらしい。ふーん、という感じだ。
「新倉君?元気ー?」
そして昼ごはん、何の躊躇いもなく乃愛は話しかけてきた。なるほど、前のBBQで同じ班になったから仲良くなっててもおかしくないでしょという設定なのか。彼女らしからぬ、理に適ったアプローチである。
「今日も遠坂君と食べてるんだ!仲良いね」
「…中身のない会話だな」
意識せずに対応すると、あ、これ家でやってるやつだと察してしまった。
「せ、席替えだね!ワクワクするね!ここ座っていい?」
しかし意に介さなかった乃愛。流石に今回は自分が悪いので、ちょっと申し訳なく思いつつ、
「やあ、1番前から解放されるから楽しみだなあ」
と特に興味の無い席替えの話に食いつくことにした。
「また1番前だったりして」
「それはそれで嫌だなあ」
「僕は別に良いけどね、1番前」
「なんで?」
乃愛が首をかしげる。
「だって、黒板が見やすいじゃないか。それに話も聞き取りやすい。よく当てられるから理解度をチェックできる」
「そんな人間おまえだけだよ遠坂」
「そうなのか?みんなそうだと思っていた」
「お前…席替え初めてか?」
乃愛が吹き出して笑ってしまっていた。席替え初めてがつぼったらしい。どこにツボがあったのかわからないが。
「そうか、覚えておく」
少ししゅんとなった遠坂。未だ腹を抱える乃愛。なんだこいつらと思いつつ、俺は乃愛お手製の弁当に入った冷凍ハンバーグを食していた。
「そういや」
急に遠坂が話題を転換させた。
「今週、槻山でジャズストリートってやるのか?」




