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4月25日その③

遠坂(えんさか)くん?ちょっといい?」


「ど、どうした?会長」


「ちょっと話したいことがあってさ」


「え?」


「向こうの原っぱ行かない?」


「いやでも僕は風を感じないと…」


「いいから!!いいから!!」


「手、手を引っ張らないで!!」


「みんなの前では…言いにくいことなんだ」


「!!!!!」


「っよし、これくらい離れたらいいかな」


「………」


「あのね、遠坂くん」


「………」


「私…」


「ちょっ、ちょっと待ってくれ!!心の準備が…」



 カチッ!無常にも着火マンにより、我が班のコンロは着火された。それを少し遠くで見届けた遠坂に、乃愛は少し低い声でこう言った。


「そろそろお腹減ったんだ」

「NO!!!!!!」


 走ってコンロへ向かってきた遠坂を、俺はがっちり捕まえた。羽交い締めにして、近づかせないようにした。


「よし今よ!ちかちゃん!のどかちゃん!やってしまいなさい!!」


 そう黄門様のように呼ばれた2人は、無論遠坂なんて懲らしめたりしない。折角ついた火を絶やさぬように必死に団扇で扇ぎ始めた。


「ああっっ、なんてことを!!なんてことを!!もう少しで風が北東からきて、最高の状態に」

「うるせえええ!あんたがそうやって拘ったせいで私らまだ一口も飯にありつけてねえんだぞ!?!?沢木んとことかもう炭なくなってるってのに…」


 近藤(ちかふじ)はそう言いつつ全力で扇いでいた。


「遠坂くん、騙してごめん。でもね、流石にね、空腹には耐えられなかったんだ」


 ウゴウゴと抵抗されながらも、俺は必死に遠坂を押さえつけていた。


「な、なあ?新倉(にいくら)にはわかるだろ?このベストなタイミングで火をつけるこの男のこだわり!」

「すまんな遠坂。俺の血液型はどうやらO型らしくてな」


 そしてもう、完全に炭まで火が灯った段階で、遂に抵抗をやめて崩れ落ちた。顔を覆い、まるで何かに絶望したような格好だった。


「なあ、のどかちゃん。なんでこうなるまで置いてたんだ?」

「や、だって…止められるわけないよ!!炭を積み上げるところまでは完璧だったんだもん」


 近藤(ちかふじ)の疑問にそう答える竹川(ちくかわ)。しかしそう答えたくなるのもよくわかるほど、火はしっかりと燃え広がっていった。それはもう、扇ぐ必要も無いくらいだった。


「よっしゃあ!!お肉入れるぞー!」

「待ってちかちゃん!まずはウィンナーだよ!焼き上がり時間かかるから」

「乃愛ちゃん…まずは脂ひかないと」

「かぼちゃを所望する」


 こうしてようやく、我々のBBQ が始まったのであった。


「えー?まだ食べてないんすかー?こっちはもう終わりかけっすよー!」


 という沢木の煽りが飛んだのも致し方ないというやつだった。

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