4月25日その②
BBQが始まってすぐだった。かぼちゃを食べやすい大きさに薄切りしていた俺を見て、隣でピーマンを切っていた近藤が声を掛けてきた。
「お、新倉君手際いい」
「そうか?」
トントントン、小気味好くカットしていく。少しかぼちゃの量多かったかなと思ったが、まあ多ければ持ってきたジップロックで持って帰るだけだと割り切った。
「いやいや他の班見てみな!大体の男たちは野菜切る方じゃなくて火をつける側に回ってるから」
因みにこの班の火つけ係は竹川と遠坂だ。遠坂が効率的な炭の置き方について研究しつつ、竹川はドン引きしながらそれに付き合っているようだった。どうでも良いが野菜を切り終わる前には火をつけてほしいものだ。
「ほらあそことか…野球部3人組で火をつけてる」
「いやあれ火強過ぎだろ」
「ふぎゃーふぎゃーやり過ぎたっすー!!!」
張本人にして野球部グループの一角、沢木が騒ぎ出すほどの火力だった。
「お前らそれなんだよwwキャンプファイアーか??」
「マイムマイム踊ろうぜ!マイムマイム!」
「懐かしいー!新入生歓迎会でやったよねそれ!」
これには他の班もその班のコンロ、いやキャンプファイアーセットを見るしかなかった。
「ね、ねえ遠坂くん?私らもああならない…よね?」
「大丈夫だ。僕の予測は完璧だ。後は火が広がるにちょうど良い北東からの風を待つだけ…」
「え?風?えー……」
「もう少し待とう」ペロっ
「なんで指舐めてその指かざしてるの?」
「こうすれば風向きがわかるだろう?」
「あーっそっかあ……す、すごいねー」
ズテーン!!!
「わー家田が!!家田が石に蹴つまずいて炭ぶちまけた!!」
「家田さん……大丈ぶ…わっ」
「今度は家田に躓いて渡辺がトングを落とした!」
「今ちゃん実況する暇あったら手伝え!!つうかなんでこんな重たいもの持たせてんだよ!!お前の担当だろ!?!?」
「え?もう火付いてるの?」
「さっきしゅんペーがつけてたよぅ」
「いや衛藤君なんで!?!?まだ女子組は下拵えしてんのに」
「いや、待つのめいどいだから」
「ふざけんな!!そして井納君も土橋君も止めてよ!」
「止めんのめんどい」
「右に同じくぅ」
各所各所で色んな問題が頻発しているみたいだった。賑やかしいクラスだな。まあ薄々勘付いていたものの、明るいと言うより喧しいの方が似合うクラスメンバーだった。まあ、押し付けてこないのならそれでも問題ない。
「ねえねえ新倉くん!どうよこれ?」
声を掛けてきたのは近藤ではなく、淡々と魚を処理していた乃愛だった。見せつけてきたのは少し太めにスライスされたイカの切り身。お前これで、前食べたくら寿司のイカみたいとか言うんじゃねえだろうな?
「前食べた寿司……」
「あーすっごい綺麗!!めちゃくちゃうまいじゃん!!古村さんこんなこともできるんだあ!!」
目一杯の大声でそれを打ち消した。これはまた、帰った後説教タイムを始めねばならんな。この女賢いんだから、そう言う迂闊な発言には気をつけてほしいものだ。ただでさえ隣に近藤がいるんだし。
「うわほんとだ!!」
「古村さん料理もできるの?」
「すっげ!!マジで完璧生徒会長だ!!」
そしてクラス中の注目を彼女に集めつつ、俺は野菜の下拵えを終えたのだった。




