4月25日その①
緑地公園という場所がある。その名前からして木が生い茂った公園をイメージするだろうが、まあ実質そんなところだ。特になにわ市にある鶴前緑地公園は、BBQの鉄板らしい。そう言ったレジャーに縁遠い自分からしたら実感もクソもないのだが。
「にしても場所だけ知らされて、そこに現地集合って、去年そこまで自由だったっけ?ゆ…新倉君」
茨田駅のホームで、乃愛はそう愚痴っていた。あれからというもの、乃愛には『外にいる時俺のこと新倉君と呼ぶこと』という条例を課すことになった。自分達しかいないと思っても、どこで聞かれているかわからない。そう言ったら流石に乃愛もすぐに首を縦に振った。この前のこと、少し反省している様子だった。
「もう2年生だからってことだろ。というか変な神戸弁も辞めるのな」
「へ、変なって言うな!!まあ?あれはそもそも家用だし?ここ家じゃないし」
「……やっぱ2人きりの時は神戸弁にしない?」
「なんで!?」
「なんとなく、違和感」
まるで古村さんと話しているようだから、と言うのが正答なのだが、口に出すと乃愛の唇がとんがるのでやめておいた。
「にしても…遅くね?ほかのや…」
そう言おうとした瞬間に3人の男女が降りてきた。しかしながらその服装は一様ではなかった。遠坂はよく着ている青色のシャツのチノパンだった。竹川はGジャンにクリーム色のロングスカートというこれまた絶妙な着合わせをしていた。そして近藤はというと…紫色と黒のジャージを着ていた。うん、野球部用の服だ。
「おはよー」
「おっはよー」
「おはよう」
「あれ?ちかちゃん着替えなかったの?」
3人に挨拶した後、乃愛は真っ先に近藤に尋ねていた。
「いやあ朝練が伸びちゃってさ。着替える時間なくて…というか電車間に合うか微妙だったから結構走っちゃった…多分今日、奈緒ちゃんもジャージだよ」
そう言いつつ胸元を広く開けパタパタと手持ちのバインダーで風を送っていた。スコアを書く用のものだろうが、それを手に持ってるところが急いでいた証拠であった。
「野球部マネ大変だなあ」
遠坂がしみじみ言うと、電車がホームに入ってきた。ここからなにわ市に行って、地下鉄に乗り換えて、鶴前駅で降りて、予約しているBBQの施設へ向かう。午前10時半が集合時間だった。
「みんな、食材持ってきたね!」
近藤がそう呼びかけた。
「やさーい」
「肉」
「お魚さん」
「おにぎり!」
俺→遠坂→竹川→乃愛の順でそれを返した。
「よし、行こっか」
そして5人とも、電車に乗り込んだ。俺のカバンには大量の野菜が詰め込まれていたのだった。




