4月22日その③
「BBQで欲しいものある?肉と玉ねぎ以外で」
近藤はそう言いつつカゴを手に取った。それをカートに置いて、カートを押し始める。
「別にいいがなんで玉ねぎは固定なんだ?」
「好きでしょ?みんな」
首を傾げつつも俺は予備でもう一つカゴを持って来ておいた。
「わ、私買い物とかあんまりしないから、値段とかよくわからないな…」
竹川はおどおどしつつ、果物に目がいっているようだった。それはBBQ関係ないだろう…美味しいだろうけど。
「BBQって外でやる焼肉という認識でいいんだよな?」
遠坂は…いや確かに尋ねられるとよくわからんぞ。とりあえず適当に同意しておいた。
「私!お肉欲しい!」
「乃愛!それは買うから!」
「あとソーセージ!シャウエッセン!」
「わかる!ソーセージ美味しいよね〜太くて大きくてジューシーなのが好き♪大好き♪」
女子3人がソーセージトークをしていたが、ジューシーさなど一つもいらない俺からしたら全く理解できない会話だった。
「男2人もお肉好きでしょ?」
近藤がこちらを向く。5人は自然と肉売り場に来ていた。脂の多い安肉が目に入り、クラクラしそうだ。
恥ずかしながら俺はあまりお肉が好きではない。ハンバーグや冷凍のパサパサな唐揚げはいいが、焼いた肉はジューシー過ぎてあまり好まない。よってこのBBQも、なるべく肉は乃愛にあげようと画策していたほどだった。
それを察してかわからないが、乃愛は気を使ってこう言った。
「んじゃ、私とのどかちゃんでお肉選ぶから!他の3人は野菜とか選んで来て」
お、ここに来て偶々持っていたカゴの出番である。
「僕もお肉見る。この2人が買い過ぎないよう」
「それは必要そうね」
遠坂は近藤の許可をもらい、竹川と乃愛に同行することにした。まあ彼女ら2人ならどれだけのものを買うかわからないと判断されてもおかしくないのだろう。2人としては少し不満げな顔をしていたが。
乃愛は学校で一般家庭以上の暮らしをしていると認識されている。実際は半額の惣菜品を適正価格と言い放つようなコストカットの鬼なのだが、そんな姿は微塵も見せていなかった。ん?竹川?彼女はダイエットのため水泳部に入部した逸話があるくらいだ。推して量るべし、というやつだろう。
まあそういう訳で、俺は乃愛にカゴを渡した。ここで3人のうち乃愛を選択したのは、別に理由があった訳ではない。
「んじゃこれに好きなもの入れなよ。俺と近藤で他のもん見てるからさ」
「わかった!」
ニカッと笑って、ぱっとカゴを手に取っていた。視線はすぐにお肉の方へと向いていた。




