8月24日その④
電話をかけているのだが出てくれない。平日だからやっているはずだろう。何で出てくれないのだろう。スマホを耳に押し当てても一向に反応してくれない。このまま施設に押し入って事情を聞こうと思ったのだが、バイトがあるからその時間はなかった。
正直言って頭が整理できていなかった。戸籍がないと聞かされていた。絶対にその説明を受けてきた。嘘をついていたのだろうか。でもその嘘をつく意味はなんだ?何かを隠したかったのか?
新倉という名前なのに、本籍は古村家となっていた。まずそこからよくわからない。古村家の養子だったのだとしたら、いやそれでも古村って名前になっているのでは?そもそも未成年後見人ってなんだ?保護者や親族ではないのか…
次に自分が取った行動は未成年後見人について調べることだった。両親がいなくなった時にその親権を行う者…成る程、いてもおかしくはない。孤児なのだからそういう存在は必要である。理解できた。
未成年者の身上監護(子どものしつけ、教育など)と、財産管理(子どもの財産管理や契約など)を未成年が成年になるまで行う、となるが…いや本当にそんなことしているのだろうか。財産の管理?している記憶はない。家庭裁判所に提出しなければならないとか書いてあるけど本当だろうか。そもそもこれどこに問い合わせたらいいのか……
本人に聞くのが1番早いのだが、本人に聞いたところで絶対に答えてくれないだろう。そもそもどうやって会うのか。古村家との接点はない。
……もしかして、乃愛は知っていたのか?
いやそんなことは余計だ。考えないでおこう。それよりも、何故それを伝えなかったのか、そこに疑念を集中させたほうがいい。
家へと歩く道のりは暑かった。行きしなよりもよっぽど暑かった。汗がつーっと背筋を流れて、尾骶骨をずっと冷やした。こんなにも残暑が厳しいというのに鳥肌が止まらなかった。どうすればいい?どうすればいい?
家に着いた。服を着替えた。何も考えたくなくなった。多分今日のバイトは、死ぬほどミスをするだろう。そんなことはどうでもいい。心配事をなくしに行ったのに、心配事が増えてしまった。
家を出ようとした瞬間に、乃愛がドアを開けた。帰ってきてからも居なかったのだが、どこかに出かけていたのだろうか。わからないが、少なくともパジャマではない服装をしていた。
「あっ、バイトいってらっしゃい」
軽く声をかけられた。聞きたいことはいろいろあったから、ほんの少し足を止めてしまった。もちろん彼女は訝しがる。
「ん?どうした?」
「いや、何も…」
「今日は学校行ってたんだ。生徒会でやることあって」
聞きたい話はそこじゃないが、それでもグッと飲み込んだ。いいや、まだ気持ちが落ち着かない。思考を整理してから、改めて話をしようと思った。
投稿がなかなかできておらず申し訳ございません。
昨年からやっていた子育てもひと段落し、今日からようやく少しずつ執筆の時間を増やしていきたく思っています。
後もう少しの物語ですがのんびりお待ちください。




