2日目昼の部その②
「で、何で電話かけてきたんだ?」
「待たせといてそれなの?」
塚原は何故か少しぷーたれている様子だった。
「旅行楽しんでるかなあって」
「そろそろ終わりかけだぞ?」
「え?もう帰るんだ」
「1泊2日だからな。明日にはバイト出るぞ」
さっさと終わらせたいと思っていたのに、いざ電話に出たら少し頼りたくなった。だめだだめだ。そんな心の弱いことでは……。
「ねえ、あんた」
しかし塚原は、これでも昔からの付き合いだ。俺のおかしな点に気づいたようで、電話越しに聞いてきた。
「告白されたりしてない?」
何故こうもピンポイントな指摘をしてくるのだろう。俺は思わず吹き出してしまった。もはや凄すぎて笑顔が溢れてしまった。
「ちょっと!!私は冗談で言ったのよ!!」
否定すると嘘になってしまう。でもここで相談してしまうのは心が弱い気がする。というか……いや、やめておこう。俺には相談なんていらない。自分のことは、自分が1番よく分かっているのだから。
「まあ、帰ってきて、ちょっとしたら話すよ」
「ふざけんな、今から話せ」
「お土産は何がいい?」
「お土産で釣れると思うな!!!良いから何があったのか答えろ!!はっ、もしかして……」
ここで俺は唾を飲み込んだ。今度は何を言い出すのだろうと身構えてしまったのだ。
「もしかして……」
塚原は満を侍して聞いてきた。
「一線……超えた?」
「超えてねえよ」
即座に否定してしまった。まさかそんなことを聞いてくるとは思わなかった。一気に顔が火照ってしまった。
「こ、超えてないんだあ……そっかあ……」
「全く。そういう下ネタ、塚原も言うんだな」
「え????は????そ、そんなことないもん!!!」
照れた彼女の顔が浮かんだ。そして先輩と後輩のロールプレイだったはずなのに、そんな雰囲気全くなかった。
「とりあえず、誰からっては聞かないでおく」
「うん」
塚原はすうううっと息を吸った。
「でもこれだけは教えて欲しい」
「うん」
「付き合うの?付き合わないの?どっち……」
「あっ、新倉くーん」
何とタイミングの悪いことか、ここで近藤が近づいてきた。俺はさっと電話を切った。後でラインで返信をしておこう。そう思った。
「ん?誰かと電話してたの?」
「あーバイト先の後輩から、お土産を迫られてた」
うん、嘘はついていないな。俺はそう自己完結した。近藤は少しだけ訝し気な目をしていたが、すぐに切り替えた。
「お土産ならちょうどよかった!!なんか黒服さん達が良いお土産屋さん連れてってくれるんだって!!だから……」
ぴと。ほんの少し指が触れた。その熱が伝わってきた。そしてすぐに離れた。近藤は少しもじもじしつつ、みんなのいる場所を指さした。
「一緒に、いこ?」
爽やかな笑顔が、俺の眼前に飛び込んできたのだった。




